★ゼニゴケ ゼニゴケ科ゼニゴケ属。大変よく似た種類も多いのでゼニゴケ科の全体の総称としても使われています。分布は北海道、本州、四国、九州。人家付近に多く発生しています。特に北側の日陰の湿った環境では多く発生しています。湿気のある地表なら建物の陰、庭、公園、道端などどこにでも生えてきます。湿った石垣、土手などでも見ることができます。ほぼ1年中見ることができる種類で探す手間がない位に普通に繁殖しています。形は茎と葉の区別がない平べったい構造をした葉状で長さは3〜10センチ。色は濃緑色〜淡緑色になります。裏面からは仮根を出してしっかりと張り付いています。雌雄異株。生殖方法は有性生殖と無性生殖の両方を行います。やや湿った場所が好きで群生していることが多いです。葉状体の表面には点々が見えます。これは気室孔と呼ばれ呼吸などの際のガス交換をする器官になります。雄株からは皿形(円盤形)の柄を出します。これは雄器床と呼ばれます。雌株からは切れ込みの深い傘のような形の雌器床が作られます。別名ヤブレガサとも呼ばれている柄を出します。ヤブレガサの方が名前が通っていますね。生殖方法は環境条件が良い場合には有性生殖、環境が悪い場合では無性生殖が行われます。無性生殖では円型の杯状体(無性芽器)を葉の表面に作り、この器官で無性芽という自分と同じ個体のクローンを作り放出して増えていきます。有性生殖の場合の生殖方には雨水が利用されます。当然受精するために雨の日に受精行動は行われます。雄の株からできる精子には2本の鞭毛があり、これを使って水中を泳いで水没している雌のヤブレガサにある造卵器に到達することで受精が行われます。精子の移動距離は数センチ(10センチ以下)で寿命は6時間ほどのようです。受精は1つの卵に1つの精子が受精します。受精の確立は低いようです。雌のヤブレガサ(柄)は伸び上がっている長いものを目にしますが、受精が行われるときには地面に近い所にあります。低い位置で受精は行われているのです。決して精子が柄をよじ登っていくようなことはありません。受精時には雄の器官も雌の器官も地面近くにあって、雨水によりどちらも水没している条件で行われます。雌のヤブレガサの柄は2〜3センチほどあり受精するしないに関係なく伸び上がっていきます。それで雄株の皿形(円盤型)の柄が無いように見えるのです。これは受精後に黄色い色の胞子嚢をヤブレガサに作りますが、今度は胞子を飛ばすために高い位置を確保するための仕組みです。黄色い色の胞子嚢がついていないものがあれば、受精できなかったヤブレガサということができます。ゼニゴケは初夏と初冬の年2回胞子を飛ばします。雌株のヤブレガサの柄は伸び上がってくるので群生しているゼニゴケの1面にギッシリと発生している所を見ることができます。ヤブレガサは雄株にできるものを雄器床、雌株にできるものを雌器床と呼んでいます。同じゼニゴケでも、伸び上がった雄器床や雌器床を作る株と、無性生殖を行っている扁平なままの株のゼニゴケでは、この特徴を知らない場合だと、本当に同じコケなのかな?と疑ってしまうかも知れませんね。



1枚目、ゼニゴケの体と杯状体。コンクリート製の塀の隙間に発生していました。環境が悪いので無性生殖が行われています。2枚目、伸び上がったヤブレガサ(雌株の器官)です。雄の器官は雄器床と呼ばれます。雄器床ができているのでこの株は雄株になります。こうしてみると可愛い形をしています。建物の前の日陰にあるコンクリートブロックの間から発生していました。3枚目、雌器床です。広がった傘の形をしています。雌器床ができているので、この株が雌株だと分かります。


ゼニゴケの杯状体。上、杯状体の中には無性器で作られた無性芽が中に入っています。小さくても自分と同じ体のクローンです。杯状体の色が違っているもので面白いです。下の写真ですと中に入っている無性芽が飛び出てきている様子が見てとれます。また緑の葉の上に見える白いツブツブが気室孔になります。この孔は開きっぱなしの構造になっています。よく見ると杯状体はサボテンの花のようにも見えますね。無性生殖は環境の悪い場所で行われます。ゆえにゼニゴケの有性生殖は雨を利用して水を介して行われるので、日当たりの良い乾燥しやすい場所に生えているゼニゴケに多くみられるといえるでしょう。観察してみると嫌われ者のゼニゴケも面白いです。