ウスバカゲロウとコウスバカゲロウの幼虫の餌はダンゴムシ、ワラジムシ、アリ、クモ等の小型の昆虫です。イモムシやケムシも餌にするようです。ダンゴムシの大きさになると巣穴の中心にダンゴムシの姿が見えています。このサイズから地中に引きずりこむことが困難になるようです。
今回見つけたアリジゴクはコウスバカゲロウの幼虫でした。アリジゴクとして成虫よりも幼虫の方が有名な昆虫になるのではないのでしょうか。人家周辺に多い普通種なので身近にいるかも知れません。見つけたら観察されると面白いと思います。見つけるコツは雨の当りにくい乾いた砂地を探すことです。成虫( コウスバカゲロウ)は夜行性が強く見つけにくいのですが、幼虫(アリジゴク)は見つけやすいです。
・飼育して見ようと思われた方のための、アリジゴクの飼育の方法と考察。
土や砂は見つけた場所のものを使うか、その質に近いものを使います。乾燥ぎみの土質が良いのですが、あまりに乾燥した状態を避けることも必要です。容器は100円ショップの昆虫用のプラケースで十分です。高さもあり、この大きさだと羽化の際にも対応ができます。自然界では巣が隣り合っていることも多いのですが、飼育する数は共食いの危険性を考えると1匹が理想です。アリジゴク(幼虫)は乾燥と空腹に強い性質があるので、飼育は楽な部類の昆虫になります。餌も最大で1か月近く捕れなくても生きていけるようです。自然界では餌にありつけないことが多いと予想することができるので、餌の与えすぎも良くないのかも知れませんが、餌が十分に足りていると大きな体になる事ができます。餌はアリが簡単なのですが、アリは小さく栄養に乏しいのでおやつ程度に考えると良いと思います。ダンゴムシ、ワラジムシが簡単で手に入りやすいと思います。種類にもよるのですが小さな1〜2齢位のイモムシも良いと思います。アリ以外だと餌を与える間隔も空けることもできます。餌は大きすぎなければ良しです。元気の良い餌(昆虫)だと巣穴に落ちても逃げてしまう事もあります。ダンゴムシ、ワラジムシ等を餌としてケースの中に入れておいて巣に落ちていなかったら手助けすることもできます。冬場でも休眠しないことがあるので、餌を食べるかどうかを冬場は確認した方が良いです。死んだ餌には反応しないので、弱った昆虫を巣穴に落としても反応が無かったら巣から出して様子を見てください。餌の昆虫は入れっぱなしにはしない方が良いです。幼虫はやがて泥の繭を作ります。分かりやすいのは巣穴から外に幼虫が出てきている場合ですが、土中に作られる場合は繭を作る時期を知るのが難しいです。繭は地表や土中に作られ、この繭の中で蛹になります。飼育での注意点はこの時点で止まり木になるものを入れておくことです。成虫は翅が長いので、羽化不全を起こさないようにしないといけません。羽化の際には翅が泥の上に付かない事、十分に体を乾かせることができる条件が必要になってきます。止まり木の変わりは割りばしでも木の小枝でも構いません。羽化した種類がウスバカゲロウなのかコウスバカゲロウなのか、羽化してからのお楽しみにするのも面白いと思います。自然界では7〜8月頃が最も多い羽化の時期になりますが、飼育下では多少時期がずれる可能性もあります。昔はアリジゴク捕りは子供の頃の遊びでしたが、神社等でも敷地にコンクリート部分が多くなったので、今は昔ほどアリジゴクがいないことが残念です。羽化までの時期(飼育期間)を短くしたい場合は大きなサイズのアリジゴクを捕らえ飼育する方法もあります。以上、アリジゴクの飼育の参考にしてみてください。
★コウスバカゲロウ ウスバカゲロウ科。コウスバカゲロウはウスバカゲロウと良く似ています。体長は35〜40ミリ。出現は6〜9月。分布は北海道、本州、四国、九州、沖縄。成虫は夜行性です。幼虫はアリジゴクと呼ばれ、乾いたや砂状の地面にすり鉢状の巣穴を作り、すり鉢状の穴に落ちた昆虫を捕らえて体液を吸います。巣は待ち伏せ式の落とし穴です。総称としてアリジゴクの名で呼ばれています。幼虫は1〜3年かかって成虫になります。幼虫期の長い昆虫になります。この差が何なのかは当方には分かりません。アリジゴクを調べるとコウスバカゲロウが多いです。神奈川県では個体数が多いようです。
上、コウスバカゲロウの幼虫(アリジゴク)が作った巣です。この巣はかなり深さがあるものです。巣は乾いた土のある場所を見つけて、すり鉢状に作られています。とても細かい砂状の土で崩れやすい構造になっています。この場所は他の昆虫の観察用に作った雨よけの下に巣を構えたアリジゴクです。この巣に潜んでいた幼虫を掘り出して撮影しました。アリジゴク(幼虫)は巣の底の浅い所に潜んでいます。巣の周りには弾き飛ばされた粒の大きい塊が堆積しています。
上、アリジゴク(コウスバカゲロウの幼虫)上3枚は同1個体です。撮影のため体に付いていた泥は落としてあります。体の表面には棘状に毛が沢山生えていることが分かります。この棘状の毛はセンサーの役目をしていて、獲物が巣穴に落ちてきたことを感じ取ります。振動を感じて捕食行動をするので、餌は生きた昆虫になります。体液を吸って餌とした後の死骸は、大顎を使って巣の外に投げ出します。わずかな乾いた土を入れたプラスチックの容器で観察すると、動きが良く分かります。中、腹面です。頭部の下面に見える斑紋が薄く不鮮明になっている個体です。ひっくり返すとすぐに大顎を使ってピョンと元の姿勢に戻ります。昆虫は裏返しになる事を大変嫌うので、どの種類の昆虫も元の姿勢に戻ろうとしますが、アリジゴクは1瞬でもとの姿勢に戻します。この動作が早いので撮影には1苦労しました。写真からもわかるのですが、後脚が発達しています。これは後ろ向きに進むからなのでしょう。前脚はとても貧弱に見えます。脚の付いている位置も変わっていて面白いです。下、頭部の拡大です。歯の付いた鋭い大顎をしています。種類の判別には頭部の背面と前面の斑紋を調べます。この斑紋の形等が種類により違っているからです。
アリジゴクを観察していると、今まで気にしていなかったウスバカゲリウ類の成虫にも興味が出てくると思います。なかなかの面白い習性を持った昆虫なので、調べてみると好きな昆虫になるかも知れませんよ。成虫の姿を見たくなったら、夜行性が強く灯火に飛来する習性がある昆虫なので、灯火の周りで見つけることができます。