2019年06月06日

キアシドクガ。白色でチョウの様に昼間に飛ぶガです。

キアシドクガはドクガ科に属するガですが、成虫にも幼虫にも毒がない無毒のガです。ドクガと言っても、ドクガ科に属する全てに毒があるわけではないのです。毒の無いドクガ科のガです。幼虫は長い毛で覆われている毛虫タイプで、背中には黄色い斑紋が並んでいます。体には長い毛が生えていて迫力があります。見た感じは危険な感じを受けますが、怖がることはありません。キアシドクガの成虫は綺麗な半透明の白い色のガで、幼虫の餌となるミズキやクマノキズキの周りを日中に華麗にヒラヒラとチョウの様に飛び周ります。昼行性のとても綺麗なガで、近くで見ると美しい半透明に見える白色に驚かれると思います。チョウの様にヒラヒラと日中に盛んに飛び回る昼行性のガなので、チョウだと思っている方も多いと思います。蛹はむき出しに見える作り方で、蛹のインパクトも強いです。黄色や薄い黄色をした蛹に、黒い縞や斑紋が入っています。この紋や筋の入り方には個体差があります。蛹もよく見ると綺麗に見えます。キアシドクガは綺麗なガなので、ガという偏見をなくして見ると美しい種類です。毒も無くかぶれることもないので、安心して観察する事ができます。ミズキやクマノミズキを餌にするので、樹を見つけておくと発生時期(5〜6月初め)に見つける確率は高くなります。キアシドクガの名前の由来は、成虫の脚が黄色い色をしていることからきているそうです。似た種類にニレ科のンハルニレに付くヒメキアシドクガがいます。出現は6〜8月。分布は北海道、本州(東北地方北部、中部地方山地)。数は少ない種類になるようです。当方は見たことがありません。サイズはキアシドクガよりも小さくなります。毒を持たないドクガ、普通種のキアシドクガを調べてみました。
★キアシドクガ ドクガ科。開帳は50〜57ミリ。普通種で数も多く出現は5〜6月。発生は年1回。分布は北海道、本州、四国、九州。普通種のドクガです。名前にある様に脚が黄橙色をしていますが、色の濃さ等に個体差があります。発生は年1回。終齢の大きさは35〜40ミリ。幼虫の地色は黒で背面には黄色い斑紋が並んでいます。個体によってこの黄色が薄い個体もいます。幼虫はミズキ科のミズキ、クマノミズキの葉を餌にします。当観察地ではミズキ、クマノミズキで普通に見ることができます。大発生が数年に渡り続くと木が枯れてしまうこともあるそうです。蛹は黄色や薄いクリーム色で黒い斑紋や筋が入っています。蛹は寄生する樹の周りで見つけることができます。蛹になる場所は植樹の他、他の植物や建物の壁周り、杭などあまり場所は選ばないようです。キアシドクガは昼行性で群れを成してチョウの様に食樹の周りを飛び周ります。成虫は灯火にも飛来します。成虫には口吻が無く餌を食べることができないので、成虫としての寿命は短く数日で死んでしまいます。雌雄の区別は触角で分かります。雄の触角は大きくて立派です。鳥の翅の形にも似た櫛歯状です。雌の触角も櫛歯状ですが雄の触角よりもはるかに幅が狭く細く見えます。また、雄のキアシドクガの場合、前翅前縁と翅脈が黒ずんで見えます。キアシドクガが群れて飛んでいると、純白な色をしたチョウの様でとても美しいです。ガの汚いイメージが変わる存在のガです。樹(ミズキやクマノミズキ)の高い所をチョウの様にヒラヒラと飛ぶことが特徴です。翅は柔らかく飛ぶ力が弱いので、同じ白っぽい色のモンシロチョウよりも弱々しく思えます。越冬は卵で越冬します。
キアシドクガ雄1.JPGキアシドクガ雄2.JPG
キアシドクガの雄です。上、羽化したばかりで蛹にぶら下がっています。下、林縁でキアシドクガが飛んでいるのを見ていたら、樹の上から落下してきました。弱っていてほとんど動けません。発生は当方観察地では5月下旬が数が多いです。
キアシドクガ雌.JPGキアシドクガ腹側.JPG
上、キアシドクガの雌です。同じ個体です。撮影のため弱っていたところを持ち帰ったのですが、戻す前に動かなくなってしまいました。ストックしてあった写真を使いました。
キアシドクガ蛹1(横位置に変更).JPGキアシドクガ蛹2.JPGキアシドクガ蛹3.JPG
上はキアシドクガの蛹です。葉の裏や杭や柵などで蛹になっています。場所にはあまりこだわらないようです。見比べても分かるように模様等が微妙に違っています。上、人工物の杭で蛹になっていました。写真は横位置にしました。中、木の杭の手すりの下面に作ってありました。下、葉の裏に作ってあった蛹です。場所は寄生する樹の近くの植物なら何でもよいようです。
キアシドクガ終齢.JPG
キアシドクガの終齢幼虫です。写真は横位置にしてあります。普通はもう少し背部の黄色味が強い個体が多いです。トイレの壁で見つけました。蛹になる場所を探しているようです。成虫、蛹、幼虫を見つけた場所は神奈川県横浜市、こども自然公園。ドクガ科と言っても毒の無い種類の方が多いです。キアシドクガの乱舞は見事で毎年楽しみにしています。ガが苦手でなかったら、蛹の模様の個体差も面白いので観察することが楽しくなる種類だと思います。
posted by クラマ at 20:14| Comment(0) | 蝶・蛾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月28日

オカモトトゲエダシャクの幼虫。幼虫は鳥の糞、成虫はT字形。個性豊かなガです。

オカモトトゲエダシャクはシャクガ科のガですが、成虫、幼虫とも変わった容姿をしたガです。最大の特徴は、成虫のとまった時の翅の形が変わっていることです。普通のガの形とは1風変わったT字形に見える姿でとまることです。この形に見える時は翅をたたんでいる時になります。翅を広げた場合は普通のイメージに近い翅の形をしたガでに見え、細長いT字に見える細長い翅の時は、前翅は扇子の様にたたみこまれています。さらに前翅を左右に長細く張り出し、後翅は体側に反ってたたまれているので、英字のT字形に見える形になるのです。このT字形に見える容姿のガには他にトリバガ科のガがいます。トリバガの仲間も翅を折りたたみますが、ただトリバガ科は小型な事と、さらに細く見えることから間違うことはありません。体色は枯葉の様な茶褐色、暗茶褐色、褐色をしていて、細長く左右に伸びた翅の形が独特です。成虫を見る機会が少なく春に現れる形の変わったガとして、マニアには人気の高い種類になっているようです。成虫はクワトゲエダシャクと判別がつきにくいほど良く似ています。オカモトトゲエダシャクの幼虫も変わっていて、鳥の糞に擬態していると言われています。地味な配色で鳥の糞に見える白い色も混ざっているイモムシ(シャクトリムシ)です。突起のある奇異な姿をしていて、丸まった時の姿は離れて見ると鳥の糞にも見える見事な擬態になっています。皮膚にはツヤがあり、ヌメっとした質感を持っていることが、よりリアルに思えます。3月に出現する成虫も翅をたたんで細長くなることで、褐色や茶褐色に見える体を、樹皮や葉のない樹の枝に紛れさせる擬態になっているのだと思います。
★オカモトトゲエダシャク シャクガ科エダシャク亜科。名前の由来は幼虫に見える沢山の突起状の棘があることから来たようです。開帳36〜45ミリ。出現は3〜4月。春に羽化する珍しいタイプです。分布は北海道、本州、四国、九州。オカモトトゲエダシャクの成虫は頭部、胸背部に毛が密生しています。胸背部の毛は長く立派です。成虫は翅を扇子の様に細長く折りたたむことができる事と、後翅も細長くたたんで体側に沿わせることから英字のTの字に見えるT字形になることが最大の特徴になっています。オカモトトゲエダシャクの後脚の脛節に1対の棘がある事で、良く似たクワトゲエダシャクと判別できます。 クワトゲエダシャクは数が激減していて、しかも局地的に生息している珍種なので、見つけることは難しいです。オカモトトゲエダシャクの成虫は灯火にも飛来しますが、灯火に飛来するのは雄になるようです。翅をたたんでいないと普通のガのイメージ(大雑把ですが)に近い形に見えると思って良いと思います。オカモトトゲエダシャクの幼虫は鳥の糞に見える配色をしています。これは鳥の糞に擬態しているものと思われます。危険を感じるなど、振動を感じたりすると体を丸めて大きな塊の様になります。色が鳥の糞に似ているので、丸まることでさらに擬態の効果を高める習性があるのかも知れません。幼虫はクルミ科、ニレ科、ツバキ科、バラ科、マメ科、ツツジ科などの葉を食べる広食性です。オカモトトゲエダシャクの幼虫は、太めのシャクトリムシになります。幼虫は5月下旬に土中で蛹化します。翌年の3月に羽化します。出現は3月ですがフユシャク科の仲間ではないので、オカモトトゲエダシャクの雌は雄と同じに見えます。雌雄の違いは触角に現れ雄は櫛歯状、雌は糸状になっています。幼虫は成虫よりも見つけやすいので、飼育を考えたこともあるのですが、飼育が難しい種類になるようです。夏場や冬の越冬時の管理が難しく、羽化させるためにはかなりの高度な飼育が必要になるようです。
オカモトトゲエダシャク幼虫1.JPGオカモトトゲエダシャク幼虫2.JPG
オカモトトゲエダシャクの幼虫です。エノキにいた終齢幼虫です。広食性で餌とする樹種は多く普通種になりますが、その割には見ない種類の様な気がします。幼虫にはヌメッとした湿った皮膚感があります。直ぐに羽化する種類なら成虫の姿を見たいのですが、成虫になるまでが長く、翌年の3月まで10カ月程も飼育管理する必要があり、飼育に適さない難しい種類になります。運良く成虫を見つけられる事を願うしかありません。幼虫は危険を感じると体の前方を丸めるようにします。さらに落下して死んだふり(擬死)をします。より鳥の糞に見えます。当方の観察地では数の少ない種類になっています。撮影地。神奈川県横浜市、こども自然公園。公園内の発生地は2か所確認していますが、気が付かないだけか個体数が少ないのか、見つける数は少ないです。絶滅は免れてほしいです。
ついでに良く似ているクワトゲエダシャクも調べてみました。
★クワトゲエダシャク シャクガ科エダシャク亜科。開帳39〜41ミリ。成虫はオカモトトゲエダシャクに良く似ています。クワトゲエダシャクの方が褐色が濃く、くすんだ色に見えるそうです。クワトゲエダシャクは極めて数が少ない珍しい種類になります。後脚の脛節には2対の棘があることで、良く似たオカモトトゲエダシャクの成虫と見分けることができます。昔はクワの害虫として知られていた種類でしたが、養蚕の衰退によるクワの減少にも影響を受けて、激減して、現在ではほとんど見つけることができなくなった珍しい種類になってしまったガです。分布は北海道、本州、四国。局地的に生息している種類になります。クワ科のクワ、バラ科のリンゴ、ソメイヨシノ。マメ科のフジで発生が確認されているようです。オカモトトゲエダシャクと同じように蛹で越冬するようです。クワトゲエダシャクは今後も数を減らしそうな貴重な種類になっていきそうです。かなりの珍品種になるので、当方観察地周辺では見ることはないと思います。そもそも餌となるクワがあまりないのでなおさらです。
オカモトトゲエダシャクの成虫を見つけたら追加したいと思っています。
posted by クラマ at 16:40| Comment(0) | 蝶・蛾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年05月06日

ハジマヨトウ。幼虫(イモムシ)はタケノコを食べるガです。

ハジマヨトウはヤガ科キリガ亜科のタケノコを食べる害虫になります。タケノコの中にいるタケノコを食べる害虫といっても、最も多く流通しているモウソウのタケノコから虫が出てくるということは聞いたことがありません。当然、出荷時に確認されているので、タケノコの中にいて驚くような目には合わないと思います。当方観察地ではモウソウチクのタケノコで見ることは少なく、野生のメダケに多く寄生しています。ヤダケでも確認しています。ササダケとして有名なチシマザサ(ネマガリダケ)にも多いようですが、チシマザサ(ネマガリダケ)を食べる幼虫はサッポロチャイロヨトウの幼虫が多いようです。研究者の発見によりサッポロチャイロヨトウの幼虫の餌はネマガリダケ(チシマザサ)になるようです。サッポロチャイロヨトウの幼虫は白っぽい体色をしているようです。タケノコを餌にする幼虫は大きくなるとタケノコの表面に穴ができていることで、中にいることが分かります。ハジマヨトウは当方の観察地ではモウソウチクのタケノコで見ることができませんでした。やはり外皮の部分が薄く、脱出しやすいササ類のメダケの方を選ぶのではないのかと推測しています。野外でヤダケやメダケの細いタイプのタケノコに穴が開いている物を目にすることは多いです。調べてみるとタケノコを食べる種類は他にもいます。餌がタケノコなので、どの種類も年1化であるものと思われます。幼虫はまだ十分に伸び切る前の地表にでた若く小さなタケノコに潜り込んで成長して行くようです。タケノコを食べるちょっと変わったガ、ハジマヨトウを調べてみました。名前にヨトウと付いているのでヨトウガ亜科に属すると思いきや、キリガ亜科に属するガになるようです。ハジマヨトウの成虫にはなかなか出会えないことと、すぐに逃げられてしまうことから残念ながら撮影には成功していません。幼虫を観察しようと思った場合は、寄生しているタケノコを見つけないと見ることができないので、よほど興味がない人以外は見ることがないイモムシになると思います。
★ハジマヨトウ ヤガ科キリガ亜科。ハジマヨトウの終齢は 幼虫は体長35ミリ程。ハジマヨトウの分布は本州、四国、九州、沖縄。成虫の出現は6〜8月。年1化。灯火に集まるようです。幼虫は体長35ミリ程。幼虫はタケノコから出て土の中で蛹になります。越冬は卵で越冬します。幼虫はササやタケの芽(タケノコ)を餌にするガです。神奈川県の観察地では6月に出現しています。成虫には地色に個体差があります。イネ科のハチク、モウソウ、マダケ、ホテイチク、メダケ、カンザンチク(中国原産のササ類の中で最大の種類)、ヤダケ(ササ類ヤダケ属)など食用タケノコの中に潜り込んで餌とします。成虫は地味な茶色で翅には3角形の斑紋があります。地色には個体差があるようです。個体差がある種類だと違いの判る成虫の写真を撮ってみたくなります。
ハジマヨトウ(ヤガ科キリガ亜科).JPG
上のハジマヨトウの幼虫はメダケのタケノコの中にいました。黒い地色に白い筋が見えます。食用タケノコ等を餌にするガの幼虫です。モウソクチクやマダケではあまり見ません。メダケのような細いタケノコに多く発生しているようです。タケノコの表面に穴もしくは中から何か塊状の物が出て見えます。が開いているものを探して中を探すと見つけることができます。成虫は地味な茶色ですぐに飛んで逃げてしまうので、撮影ができないままになっています。
タケノコを食べる他の種類には次の3種類がいます。
・サッポロチャイロヨトウはチシマザサ(ネマガリダケ)を食べるガになります。分布は北海道、本州、四国、九州。年1化で成虫の出現は7〜9月。幼虫の地色は白っぽく見えるようです。
・カバマダラヨトウはメダケを餌にします。分布は本州、四国、九州。成虫の出現は8月で年1化。
・ミヤケジマヨトウは日本固有種でカンザンチク、リュキュウチョク、メダケなどササのタケノコを食べるようです。分布は本州(千葉県以南)、四国、九州。年1化で成虫の出現は6〜7月。
ハジマヨトウは繁殖場所がササ藪や竹林になることと、幼虫の餌がタケノコの中身なので、さらに成虫幼虫共に見る機会の少ないガになります。成虫の色も地味なので、タケノコを食べるガというと興味も出てくる種類になるのかも知れませんが、ほとんど知られることが無い地味な昆虫になると思います。
観察地のメダケが全て刈り取られてしまいました。地上に1本もありません。もともと少なかったのですが、根元からの伐採なのでもう生えないかも知れません。ただでさえ成虫の捕獲は難しかったので、成虫の写真と合わせて追加して投稿しようと思っていたのですが、難しくなってしまいました。幼虫の紹介にすることに変更することにしました。写真が少ないので追加する予定です。
posted by クラマ at 18:19| Comment(0) | 蝶・蛾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする