・野鳥の巣が欲しくなっても、鳥が住んでいる場合や卵やヒナなどがいる場合は、野鳥に迷惑が掛からないように巣を採らないようにしましょう。鳥が巣立った後のメジロの巣は痛みが少ない状態で樹から落ちてくることがあります。巣の作りが丈夫で標本としても保存しやすいです。ただし、野鳥の巣にはダニなどの虫が寄生していることが多いので、むやみに持ち帰らない方が良いです。メジロの巣のように壊れにくい素材でできている巣は、少しずつ丁寧に壊れないように(形が崩れないように)熱湯をかけて消毒すると良いです。そのあと速乾性のボンドなどで壊れにくくなるように補強すると良いです。ボンドは乾くと透明になってツヤが出るものがあります。ツヤのでるタイプのボンドを使った場合、気になるときは艶消しをすることも考慮した方が良いです。ボンドの質を確かめてから使う方が良いと思います。
メジロ、ウグイス、キジバト、キツツキ、ツバメ、カラスの巣を調べてみました。
★メジロの巣。樹の葉が落ちてくる頃になると、樹にメジロの巣があることに気が付くことがあります。メジロの巣は低い場所から高い場所まで、環境に合わせて作るようです。普通は巣が分かりにくい常緑照葉樹林などに住んでいて、これらシイやカシなどの樹に巣を作るようです。自然の林の中でも樹高の低いウグイスカグラの樹で2回、メジロの巣を見つけていることから、安全な場所だと思ったら、低い場所にも巣を作るようです。メジロは適応能力が強く、巣は林縁、林、公園、庭先、街路樹など広範囲で見ることができます。市街地の街路樹などでは、比較的に高い樹の高い位置に作られています。秋になると街路樹の樹から落ちてきたメジロの巣を見ることもあるので、思ったよりも見つけやすい野鳥の巣と言えると思います。ススキの穂や枯草の茎、コケなどの素材にクモの糸を使って補強して作られます。巣の大きさは直径7センチ程、高さは4センチ程で形は整った椀状をしています。市街地や人家の庭先に作られるメジロの巣には、材質にナイロン性のヒモなどの人工物も巣に編み込まれるように使っています。庭先に巣を作る場合、低い樹で巣を作っていることが多いです。この傾向は理想的な高さの樹がないからかも知れません。メジロは特に巣を作る樹は選びません。巣が隠れるような樹を選んで作ります。巣の大きさはメジロが小さいので巣も手の平に乗るほど小さいサイズになります。卵やヒナが巣の中にある時に巣を覗いたり、触るなどの行為をすると、メジロは巣を見捨てて他の場所に逃げ出してしまうことが良くあるそうです。ヒナが巣立つと巣は捨てられます。巣はヒナが育つまでの家なのです。
上、メジロとメジロの巣です(同じ巣です)街路樹の下で拾ったものです。よく見ると白いナイロンテープの素材が使われています。この巣は熱湯で消毒はしてあるのですが、これから壊れないようにボンドで補強する予定です
★ウグイスの巣。ウグイスの巣の特徴はササの葉などでやんわりと包むようにできていることです。巣はササの葉を丸めて作ってあり、やや雑な作りで壊れやすくできています。巣の形状はボール状の形をした巣を作ります。直径は9センチ程で高さは15センチ程の大きさです。ウグイスは雄は巣を作りません。作ったのは雌のウグイスになります。ウグイスは巣を作る時期が早く、巣は春に向けてまだ寒いうちに作りだします。巣を作る場所は巣が隠れるような背の低い藪や小枝、笹薮などに作られています。巣の材質はササやススキの穂など柔らかい素材のものと草の茎、小枝などを利用して作られます。外面は雑に見える巣もありますが内側は綺麗な丸みのある形に作ってあります。鳴き声は有名ですが姿と巣を見たことがある方となると、少なくなると思います。
上はウグイスとウグイスの巣です。この巣はササの葉、草丈のある細い枯草の茎を主に作られています。巣の内側はササで作られていました。外壁は丈夫な草の茎などで作られています。内側は柔らかい素材のササの葉でできています。ウグイスは1夫多妻で、巣作りから子育てまでを全て雌が行います。巣はササのある山道などや道路の脇の近くに作られることが多いようですが、適応能力が高い種類なのでササが近くになくても巣を作ることはよくあるようです。雌は巣をヘビなどに襲われてヒナがいなくなってしまった(ヒナの全滅)場合や危険を感じた場合、巣を放棄して逃げてしまいます。その際は巣を離れるだけでなく、それまでの1夫多妻の関係を解消して逃げ出します。雌は逃げた先で別の雄を探して新たな巣作りをします。この習性が1夫多妻のウグイスの繁殖方法になっています。2枚目、巣の入り口がわずかに見えています。3枚目、同じ巣を横から見たものです。下、ウグイスの巣の標本を作ってみました。熱湯消毒したあと、十分に乾燥してから、速乾性ボンドで接着して強度を上げて壊れにくくしてあります。作りは大変もろい巣です。いじっていると形が壊れてきます。標本にする場合、丁寧に扱う必要が有ります(この標本は寄付しました)
★キジバト(ヤマバト)の巣。キジバトは都市部に多く生息している野鳥で普通に見ることができます。都市部に住んでいるキジバトは人慣れしていて人が近づいても逃げないものまでいます。森林、農耕地、公園、住宅地などに生息していて、巣は庭先の樹や街路樹など葉の茂った樹に作られます。巣の大きさは直径30センチ程。高さは7〜8センチ程で皿形をしています。巣の作りは簡単なもので、巣は枯れた細い小枝を組み合わせて低木の上の方に作られていることが多いです。キジバトはかなりの確率で古い巣を再利用することも知られています。古巣は自分で作ったものなのか、他のキジバトが作ったものなのかは気にしないようです。再利用する場合、わずかな補強でリホームを完成させてしまうものもいます。これはキジバトが年数回から多いと6〜7回程も繁殖することができることによる行動とも言えます。合理的に手間を省いた繁殖方法の1つとして、本能的に働くのかも知れません。庭先に巣を作られたくない方は、巣だった後撤去すると再び作られる可能性は低くなると思います。キジバトは外敵に狙われやすく、ハシブトガラス、ハシボソガラス、やヘビ(アオダイショウ)、野良猫の餌になってしまうヒナや卵が多いようです。庭先に作った場合、猫に狩られてしまうこともあるようです。外敵によるヒナや卵の被害は繁殖力でカバーしているようです。
キジバトと民家の庭に作ってあった巣の写真です。この写真の巣はキジバトにしたら上手な巣です。単に枝の上に平らに枝を乗せたような雑な作りの巣も見ることがあります。昔、当方のアンズの樹に作った巣では下から卵が見えるほど雑でした。巣のできには作成者の上手下手がでるようです。キジバトの巣は樹の上の方にあることが多く、標本を作るのに巣を採ることが難しくなります。キジバトは大きいので良く目立ちます。庭先で巣を作って繁殖する場合、すぐに気が付くことが多いと思います。庭先に巣を作ることもあるので、観察しやすい野鳥の1種と言えます。キジバトは通例2羽で行動している仲の良い野鳥です。
★キツツキの巣。キツツキの仲間は樹の幹に穴を掘って巣を作ります。アオゲラの場合は生樹の幹に巣穴の直径が5センチ程の穴を開けます。アカゲラは枯れ木に巣穴の直径が4・5センチほどの穴を開けます。コゲラは生木の枯れ木部分に直径が3・5〜4センチ程の穴を開けます。巣穴だけだと分かりにくいです。コゲラは日本で1番小さいキツツキで体長は15センチです。背部には白い点状の斑紋(横縞模様)があります。この白い斑はつながって見えることもあります。雄には見えにくいのですが耳羽のあたりに赤い羽根があります。色彩には地域変異があるようです。雑木林の他に、市街、住宅地、街路樹、自然公園にも生息しています。コゲラは体が小さいので細い樹の幹にも巣を作ります。観察エリアにしている自然公園ではアカゲラは見なくなってしまいました。そのことから枯れ木の幹に作られた小さな入り口の巣穴だとコゲラ。生きている樹の幹で巣穴が大きい入り口だとアオゲラと言う感じで判別しています。アオゲラは日本固有種のキツツキで、体色は暗緑色に見えるキツツキです。顔には赤い斑紋があり、灰褐色〜灰色に見える腹部には横縞模様があります。頭部に赤い斑紋がある方が雄になります。都市部の公園などでは古いサクラの幹に巣を作ることが多くなっているようです。アオゲラは体長が29センチもある大型になります。アリが好物で地上に降りてアリを捕食することが多いそうです。山地から平地の広葉樹林を住み家にしています。鳴き声は「キョッ、 キョッ」と大きな声で鳴くので、鳴き声を手掛かりに樹を探すと見つけることができます。アオゲラもコゲラと同じく都市部に進出して来ています。都市部の公園などのサクラが古くなり、巣穴を作るなどに適してきたことも関係あるようです。個人的な見解としても、古いサクラの樹のある場所(公園等)で見る機会は多いです。
上、生きているコナラの幹に開けられている巣穴なので、アオゲラの巣で良いと思います。入り口もコゲラの巣の入り口よりも大きいです。観察エリアの公園では、古くて大きなソメイヨシノやヤマザクラに巣を作っていましたが、ほぼまとめて伐採されたので、最近ではアオゲラも見ることが無くなってきています。大きくて緑色が綺麗なので見つけると嬉しくなる野鳥です。中、アオゲラです。写りの良い写真が撮れたら差し替えを予定です。下、コゲラです。小さくて可愛いいキツツキです。
★ツバメの巣。巣の形状は椀型で、椀を半分にした形になっています。これは壁などの垂直になった壁(垂壁)に巣をつくるために、椀型を半分にした形の巣になるからです。巣の上面は開いているので雨に柔い構造になります。そのために屋根のある場所に巣を作ることが必要になります。その条件を満たす場所が、人家の軒先やビルなどの建物の壁になるのです。ツバメに関して言うと巣は完全に人工物に作ります。橋の橋脚部分当には作ることはまれで、人の住んでいる場所や人の生活している環境に接する場所に巣を作ります。ツバメは必要以上に人に慣れることはなくても、人慣れした野鳥と言えます。ツバメは縁起の良い鳥として人から危害を加えられることがなかった事も、人の傍で繁殖するようになった理由の1つになるのだと思います。その他、益鳥として好かれる野鳥でもあります。同じ野鳥でもムクドリが家の戸袋等に巣を作られると酷く嫌われてしまいます。ツバメは飛んでいる姿もりりしく、日本人好みの野鳥になっているのだと思います。ツバメの巣は泥と草でできています。水分を含んだ泥水と枯草を唾液で固めて作っていきます。巣の大きさは直径15センチ程。高さは3〜4センチ程で、巣は壁に接して作られています。直接に壁(垂壁)に作られたり、巣の下部に支えとなる物を利用して壁に面して作られたり、巣の底が受け皿のようになっている(人が作った巣台、電灯の上、何らかの物が台状になっている部分がある)部分を利用して壁に作られることがほとんどです。最近では巣の材料となる泥がない事から都市部では、都市部での繁殖が激減してきています。本来、ツバメは同じ場所に戻ってきて巣を作る渡り鳥です。子供の頃から馴染みが深かった鳥だけに、姿を見なくなってくると寂しく感じてしまいます。
上、ツバメとツバメの巣です。もっと天井が高い位置になるように作ればよいのにと思うのは人間の側から見た感想のようです。ツバメにはこの高さで良いのでしょう。数年前には3個あった巣も去年は1個(写真は昨年のものです)今年はとうとう飛来することが無くなってしまいました。駅前だったのでさすがに巣を作る材料が確保できなくなってしまったのでしょう。1番上の写真のツバメは目の前に来てくれたので、コンパクトデジカメでも良く撮れました。ツバメは飛ぶために特化したような体つきに見えます。均整のとれたスタイルの良い野鳥です。
★カラスの巣。カラスの巣を追加しました。ハシボソガラスの巣です。大きな樹の上部に近い場所など高い所に巣を作ります。鉄塔などの人工物にも巣を作ることがあります。巣の形状は皿状で、外側は木の枝、内側には動物の毛や柔らかい藁などを使います。カラス自体が大型なので、巣も大きなものになります。直径は50〜80センチ程にもなります。厚みは20〜30センチ程になるようです。カラスは巣の材料に木の枝だけでなく、針金製のハンガーなどを利用することが知られています。軽くて強度がある針金を分かって使っていたら凄いことですね。針金のハンガーがカラスに盗まれるということは良くあるようです。ハシボソガラスの繁殖期は3〜7月。ハシブトガラスの繁殖は4〜8月になるようです。巣は通例、毎年新たに作られるようです。カラスは大変頭の良い鳥で、鳥としては極めて頭脳が高く、高い所から落下させて食べ物を食べやすくしたり、人の顔を認識することもできます。カラスはサングラスやマスクをしても人を認識できるほどの頭脳を持っています。巣にヒナがいるとカラスはヒナを守るために凶暴になることが良くあります。初めは近くに飛来して大声で威嚇します。威嚇が効かないと攻撃に移るカラスもいます。カラスには嘴の太くて大きなハシブトガラスと嘴の細いハシボソガラスがいます。以前公園に「カラスに注意、巣があり危険!」と立て札が立っている場所がありました。近道なので進むことにしましたが、突然背後からカラスが舞い降りてきて頭をかすめました。そのあと、こちらを見て大人しく飛び去りました。いつも見かけるカラスのようです。餌はあげないのですが、顔なじみで怖がらないで比較的に近くに来るカラスがいますが、どうやらそいつのようです。(8年間通っている強みのようです)敵としては認識されなかったようです。他の人は怖がっていたので、カラスが顔を覚えるということは本当のようです。この写真の巣は放棄されてしまいました。近くの安全な場所に巣を作り直したようです。この公園には羽に白い帯が入るハシボソガラスの個体群がいます。餌の確保が難しいのでこの公園ではカラスが激減しました。近くの別の公園に来るカラスに羽に灰色の帯のある個体を見つけたので、同じ系統のカラスは生き残ったようです。
ハシボソガラスの巣です。巣の材料に針金が使われています。ピンクや緑色をした針金だと、すぐに樹の枝以外の材料が使われていることが分かります。巣のサイズが大きいので、高い樹の上部の太い枝に巣は作られます。写真では分かりにくいのですが、大変大きな巣になります。カラスは有名なので写真は省略します。もっと近くで観察してみたい巣です。