今年は夏の降雨が丁度良く、キノコ類には良い条件がそろったようです。キノコの豊作が伝えられています。とはいえ、山地や林が乏しい当方の観察エリアでは毒キノコも探すことすら難しいです。キノコの時期と言われる10月のキノコ探しで、16種類を探すことができました。発生する種類が多い10月は恒例のキノコ観察の時期になっています。見つけたのはベッコウタケ、ウズラタケ、ヌルデタケ、カニノツメ、キツネノタイマツ、ヒメカタショウロ(もしくはアミメヒメカタショウロ)、アオゾメタケ、アラゲキクラゲ、ニオイコベニタケ、ツチグリ、テングタケ、イロガワリ、カワラタケ、オオミノコフキタケ、マンネンタケ、コガネニカワタケ。見つけた数は多いと言ったら多いかもしれませんね。やはり当り年になるようです。今回は新しい種類が見つかって収穫が大きかったです。以前にも紹介している種類もありますが。今回はこのうちの7種類。ベッコウタケ、ウズラタケ、ヌルデタケ、カニノツメ、キツネノタイマツ、ヒメカタショウロ(もしくはアミメヒメカタショウロ)、アオゾメタケを紹介します。キノコの科で面倒なのは、このうちのサルノコシカケ科としても紹介される種類の菌です。サルノコシカケ科は確定された科ではないので、何の科にするのかがはっきりしていません。暫定的にタマチョレイタケ科とすることが多いようです。等ブログでもタマチョレイタケ科として紹介します。観察エリアの公園内のオオミノコフキタケは生きた樹に発生しているので、子実体を切り取られるのですが、菌糸は樹の材に侵入しているので、また復活してしまいます。断面を比較して良く似たコフキサルノコシカケと判別しますが、低地の多くはオオミノコフキタケになるようです。
★ベッコウタケ タマチョレイタケ科。色々な広葉樹の根際に寄生して倒木被害を起こすことで知られている根株腐朽菌です。ベッコウタケは生きている樹を枯らす原因になる菌なのです。生きている樹に発生して木の内部を腐らせて空洞化してしまいます。そのために強度が落ちて樹が倒れてしまいます。街路樹の倒木被害を起こすことでも知られています。ベッコウタケはサクラに多く発生することが知られていて、街路樹や公園のサクラの被害も多いようです。ベッコウタケは普通種で公園樹、街路樹で良く見かけることができます。通年の発生のようですが、子実体は6〜8月に多く発生します。半球形のコブのような幼菌は、成長して行くと半円形や重なっていきます。傘は灰褐色〜赤褐色で黄色や淡いオレンジ色の環紋があります。生きた樹を枯らしたり、生きた樹に寄生して弱らせる菌には、ベッコウタケの他にオオミノコフキタケ、ナラタケ等が知られています。

ベッコウタケの傘の形等にはバリエーションがあります。ストックしてあった他のベッコウタケの写真が見つからなくなってしまったので、再度、違う感じの写真が取れたら追加したいです。
★ウズラタケ タマチョレイタケ科。ウズラタケの科は統1されていないようです。タコウキ科やサルノコシカケ科としていることもありますがタマチョレイタケ科とすることが多いようです。幅は3〜4センチと小型で厚さも1〜2センチの白色からクリーム色、淡い褐色をしたキノコです。傘の形に変異があります。管孔は子実体に対して大きめで肉眼でも確認できます。管孔は丸く規則正しく綺麗に並んでいます。傘には不鮮明な環紋が2〜3本見えます。環紋が良く見えない事もあります。過去記事「ウズラタケ、ヒメシロアミタケ。白っぽい幼菌が似ています」でも紹介していて、2度目の登場になります。今回は桜の枝から発生していました。枝は樹から落下したもので、傘の部分の形が円型(円盤型)で、管孔は大きく整然としていました。横から見ると柄に見えた部分は伸びあがった柄ではありません。初めは種類が分かりませんでした。特徴からするとウズラタケですが、ウズラタケがこのような形で出るとは思ってもいませんでした。柄に見えた部分がこれから広がっていくところだったのでしょう。菌類の判別は難しいです。



上、珍しい形をしていたウズラタケです。地面に落ちていた小さな桜の枝から発生していました。このような形は初めて見ました。この円型に見える形は珍しいと思います。ヌルデタケに似ている形だったので、見つけた時はやや大きいものの、ヌルデタケかな?と思ってしまいました。特徴からウズラタケで良いと思います。このように落ちた枝から発生している場合には、子実体をどの位置で見るのかも大事になると思いました。中、横から見ると環紋が見えます。これから広がっていく前の段階だったのでしょう。下、管孔の部分の拡大です。綺麗に管孔が並んでいます。
★ヌルデタケ カンゾウタケ科。タマチョレイタケ科からカンゾウタケ科に変更になったようです。子実体は革質で高さ5〜10ミリ。ヌルデタケは夏から秋に広葉樹の枯れ木、枯れ枝に発生します。地面に落ちている枝についているものもよくあります。子実体は高さ5〜10ミリ。傘は直径2〜5ミリ程と小型で群生します。傘は開くと円形に見える杯状をしていて、表面には極めて小さな管孔があります。色は傘も柄の部分も同じ淡褐色をしています。やや柄が長く見え下向きにぶら下がる様につく面白い形をしています。ヌルデタケは良く人の鼻の形に似ていると言われる変わった形が特徴です。名前の由来は最初に植物のヌルデで見つかったことからきているのですが、他の広葉樹からも発生します。サクラやコナラ等で見つけることが多い普通種です。


上の2枚、ヌルデタケです。写真は以前に撮りためてあったストックを使いました。このキノコはとても小さいのですが、ユニークな形をしていて面白いです。
★カニノツメ アカカゴタケ科。日本固有種。カニノツメの特徴は見たままでカニのハサミを連想させる形をしています。食菌ですが通例不食。小さいこととグレバが臭いことで普通は食用にはしません。初夏〜秋に竹林、林内、芝生、庭園などに群生します。不食した土を好みます。発生は群生して発生します。数個から沢山群生していることもあります。卵は球形で径は16〜22ミリ。壺からカニの爪を思わせる2本の腕が柱状体となって伸びあがります。高さは4〜7センチ。当方の図鑑の1つにはこの腕の下方は白く、上方はオレンジ黄色〜朱赤色となっています。今回見つけたカニノツメではほぼオレンジ色をしていました。この色には個体差があるようです。2本の腕の上部の内側にグレバがあります。卵は約半分ぐらいが埋もれています。卵から出ると沿いおれるのが早く、数時間で萎れてしまいます。発生している場所が分かっても、ちょうどよい成菌の写真を撮るの難しいです。卵が5個ぐらいの塊で最初に出ていたものが3本の柱状体だったので、サンコタケかと思ったことがあります。稀に3本の腕があるカニノツメもあります。3か所の群生地で3本爪を3個見つけたので、この変異は群生している数にもよりますが、珍しいものではないようです。





カニノツメは形がユニークな面白キノコです。もっと大きかったら話題になるに十分だと思います。形には多少、見た目の違いがあって、カニの爪に見える腕が3本あるものもあります。カニの爪に見える腕は柱状に伸びあがるもの、カニの爪(前脚の爪)の様に湾曲しているもの、色の濃淡があるものなど、観察すると面白いです。上2枚は卵です。小gたのキノコだけに卵も小型です。3枚目は卵から出た新鮮なカニノツメです。先端の内側には暗褐色〜黒色に見えるグレバがあります。4枚目、5枚目、形には多少の違いがあります。下の写真の様に柱状に伸びあがって見えるものもあります。この腕が3本のものもあります。群死して生えているので探すと3本の腕のカニノツメも見つけられると思います。写真の個体は全て別個体です。何回も足を運んで撮影しました。
★キツネノタイマツ スッポンタケ科。キツネノタイマツは初夏〜秋に林内、竹林、道端、畑などの地上に発生します。卵は球形または卵形をしています。グレバは悪臭を放ちます。キツネノタイマツの特徴は、卵から長い桃色〜暗赤色の柄を出して伸びあがることです。傘は長い鐘型で頂端は開口していません。傘は暗赤色をしていて、表面は暗黒褐色のグレバに覆われています。グレバは雨などで落ちやすいです。柄は長く根元は白い色をしていて、上部に向かって桃色から暗赤色になっています。柄が細く、長細いスッポンタケという感じに見えます。柄の長さは10〜15センチ。キツネノタイマツは他のスッポンタケ科のキノコと同じく、成長が早く急激に伸びて1日と持たなく萎れてしまいます。似た菌にキツネノエフデやキツネノロウソクがありますが、キツネノタイマツのような傘はありません。

上はキツネノタイマツです。グレバが取れてしまっています。昨年は3本出ていたのですが、今年は1本になってしまいました。しかも時期を外してしまい、良い写真が撮れませんでした。スッポンタケ科の菌は伸びあがってから萎れるまでが早いので、撮影のタイミングがとても難しいです。
★ヒメカタショウロ ニセショウロ科。毒。子実体は球形で直径は3センチ前後になります。シイ、カシなどの林内に発生します。似た種類が多く、アミメヒメカタショウロと外見上は判別できないです。正確な判別には胞子を見る必要があります。ヒメカタショウロかアミメヒメカタショウロとして、当ブログ2度目の登場です。食菌としてショウロが知られていますが、似ていてもこの仲間には毒菌が多いので食べてはいけないキノコとして覚えておいた方が良いです。ちなみに、ショウロは海岸のマツ林に出るキノコで、当方は見たことがありません。

ヒメカタショウロとして紹介させてもらいました。地味ながら丸い形の可愛いキノコです。ニセショウロ属は似た種類が多く、正確には胞子を確認するなど見た目での判別が困難な種類になります。
★アオゾメタケ タコウキン科。夏〜秋に広葉樹、針葉樹の枯れ木、切株、倒木、用材から発生します。横幅は2〜6センチ。厚さ3〜20ミリ。半円形で山形。無柄。全体的には白い色をしていますが、青藍色など青味を帯びます。白色が強く青味の弱い個体や、青色の濃い個体等、色には個体差があります。傘の表面には密に白色の短毛がありますが、のちにくすんだ黄茶色を帯びてきます。円型の微細な管孔を持っています。若い菌だと表面も管孔面も同じような白色に見えます。胞子紋は青色をしています。アオゾメタケが青味を帯びて見えるのは、胞子が付着していることによります。肉は白く海綿質で触って見ると水分を多く含んでいることが分かります。似た菌にオシロイタケがありますがオシロイタケの場合、短毛はごく若い時にはあるだけです。傘の表面にはアオゾメタケのような短毛は生えていません。

上、アオゾメタケです。生え方は単性や群生、このように並んで生えることも多いです。写真の上に見える傘はナメクジに食べられています。下にある傘は若干、青色を帯びています。綺麗な青藍色に染まったアオゾメタケの写真が取れたら追加したいです。