2018年10月22日

アリジゴク(コウスバカゲロウの幼虫)。地面にすり鉢状の落とし穴を作る昆虫です。

アリジゴクほど成虫よりも幼虫が有名で人気のある昆虫は珍しいと思います。アリジゴクは個性的で本当に面白い昆虫です。アリジゴクとはウスバカゲロウの仲間の幼虫の呼び名です。または地面に作られたすり鉢状の巣を蟻地獄(アリジゴク)と呼んでいます。ウスバカゲロウの仲間の中に、地面にすり鉢状の巣穴を作り、通りかかった昆虫が穴に落ちるという、落とし穴を作る種類がいます。全ての仲間がアリジゴクとして地面にすり鉢状の巣を作る訳ではありません。すり鉢状の巣穴を作らない非営巣性の砂地の表面近くに住む種類や、樹皮や岩に発生した地衣類(レプラゴケ等)に潜む種類もいます。むしろ作らない方が多いです。1般的にはこれら地中に住む種類を総称としてアリジゴクと呼んでいます。地面にすり鉢状の落とし穴のような巣を作る種類はウスバカゲロウ、コウスバカゲロウ、クロコウスバカゲロウ、ハマベウスバカゲロウ、ミナミハマベウスバカゲロウの5種類になるようです。ずんぐりむっくりの楕円形のような形の幼虫に対して成虫は細長く、トンボに似た姿をしています。特にアリジゴクは幼虫期を地面の土や砂の中で生活する変わった昆虫になります。食性は肉食性で、餌の捕り方は乾いた土や砂地に作られる巣穴に落ちた昆虫を捕らえる方法によります。斜度のあるすり鉢のような穴に落ちた昆虫は、必死に脱出を試みるも、這い上がることができないうちに捕らえるというものです。這い上がろうとする足場は崩れやすく、斜度のある斜面になっているのですが、縦穴式の落とし穴の様にいきなり底に落ちることはほとんどないようです。アリジゴクは(幼虫)は落ちてくる砂粒などの振動を感じて、獲物が巣穴に落ちてきたことを察知して、巣の中に脚を踏み入れた(落ちた)獲物となる昆虫に向けて、大顎(おおあご)を使って巣穴の中心部付近にいるアリジゴク(幼虫)が土や砂をすくって投げつけます。これで這い上がるどころではなくなり、すり鉢の中心部に近い所に徐々に落ちていきます。そこで獲物を挟むことができる距離に近づくと、大きなハサミ状の顎で捕らえ地中に引きずり込んでしまいます。またアリジゴクの唾液は猛毒成分を含んでいるそうです。これはアリならともかく、大きめの昆虫が獲物として落ちてきた時の対策にもなっているようです。早く動きを止めるに越したことありません。考えて見ると凄い獲物の捕らえ方です。獲物の昆虫にしてみたら、穴に落ちて大顎で挟まれたあげく毒殺されるという、まさに地獄に引きずりこまれるがごとしです。人間界では抜け出すことが困難な状況や状態を「蟻地獄に落ちる」という表現もあります。怖いですね。しかし、これは成功例の話になります。実際はアリジゴクの巣の中に落ちたアリでも、すり鉢状の穴の外に出ていくアリも観察できます。人為的に巣穴に落としたアリも脱出することも多いです。これは子供の頃にアリジゴクで遊んだ経験があることから確認済みで、観察するとすぐに分かります。観察地の神奈川県では、ウスバカゲロウとコウスバカゲロウの2種類がいて地面にすり鉢状の巣(アリジゴク)を作ります。巣は乾いた砂状の土に作られます。家など建物の軒下や大木の下、橋などの橋脚の下など雨が当たりにくい場所を選んで作ります。アリジゴク(幼虫)の体表には毛が生えていて、巣から取り出すと砂で覆われています。種類を判別するには、頭部の上面と下面の模様を調べて、種類を判定します。取り出したアリジゴクにスポイト等で水滴を落として頭部等の砂を落とします。肉眼での確認は無理なので、コンパクトデジカメや虫メガネを使って調べることになります。スケッチしても構わないのですが、後で調べるには撮影しておくことが便利です。体が乾いたら元の場所に返してあげると、砂に潜る様子も観察できます。お尻から後ろ向きで砂の中に潜っていきます。普通、知らないと頭の方から潜ると思ってしまいますね。ピョコピョコとした動きで潜っていくので見ていると面白いです。円運動を利用して落とし穴(巣穴)を作る様子も観察すると面白いです。すり鉢状の巣の作り方は、大きな外円から徐々に中心に向かって渦巻き状に進んでいくことで作られます。進む方向はお尻からです。後ろ脚を使って後進します。後ろ方向に進む習性も珍しいのですが、これは立派な大顎があるため、前進するよりもお尻から進んでいく方が、スムーズに乾いた土中を進行できるためだと思います。また、土中にいるアリジゴクは呼吸するために地表近くにいます。乾燥した場所を好むのも、砂状の土等が雨等で濡れて呼吸ができなくなることを防ぐためだと推察できます。
ウスバカゲロウとコウスバカゲロウの幼虫の餌はダンゴムシ、ワラジムシ、アリ、クモ等の小型の昆虫です。イモムシやケムシも餌にするようです。ダンゴムシの大きさになると巣穴の中心にダンゴムシの姿が見えています。このサイズから地中に引きずりこむことが困難になるようです。
今回見つけたアリジゴクはコウスバカゲロウの幼虫でした。アリジゴクとして成虫よりも幼虫の方が有名な昆虫になるのではないのでしょうか。人家周辺に多い普通種なので身近にいるかも知れません。見つけたら観察されると面白いと思います。見つけるコツは雨の当りにくい乾いた砂地を探すことです。成虫( コウスバカゲロウ)は夜行性が強く見つけにくいのですが、幼虫(アリジゴク)は見つけやすいです。
・飼育して見ようと思われた方のための、アリジゴクの飼育の方法と考察。
土や砂は見つけた場所のものを使うか、その質に近いものを使います。乾燥ぎみの土質が良いのですが、あまりに乾燥した状態を避けることも必要です。容器は100円ショップの昆虫用のプラケースで十分です。高さもあり、この大きさだと羽化の際にも対応ができます。自然界では巣が隣り合っていることも多いのですが、飼育する数は共食いの危険性を考えると1匹が理想です。アリジゴク(幼虫)は乾燥と空腹に強い性質があるので、飼育は楽な部類の昆虫になります。餌も最大で1か月近く捕れなくても生きていけるようです。自然界では餌にありつけないことが多いと予想することができるので、餌の与えすぎも良くないのかも知れませんが、餌が十分に足りていると大きな体になる事ができます。餌はアリが簡単なのですが、アリは小さく栄養に乏しいのでおやつ程度に考えると良いと思います。ダンゴムシ、ワラジムシが簡単で手に入りやすいと思います。種類にもよるのですが小さな1〜2齢位のイモムシも良いと思います。アリ以外だと餌を与える間隔も空けることもできます。餌は大きすぎなければ良しです。元気の良い餌(昆虫)だと巣穴に落ちても逃げてしまう事もあります。ダンゴムシ、ワラジムシ等を餌としてケースの中に入れておいて巣に落ちていなかったら手助けすることもできます。冬場でも休眠しないことがあるので、餌を食べるかどうかを冬場は確認した方が良いです。死んだ餌には反応しないので、弱った昆虫を巣穴に落としても反応が無かったら巣から出して様子を見てください。餌の昆虫は入れっぱなしにはしない方が良いです。幼虫はやがて泥の繭を作ります。分かりやすいのは巣穴から外に幼虫が出てきている場合ですが、土中に作られる場合は繭を作る時期を知るのが難しいです。繭は地表や土中に作られ、この繭の中で蛹になります。飼育での注意点はこの時点で止まり木になるものを入れておくことです。成虫は翅が長いので、羽化不全を起こさないようにしないといけません。羽化の際には翅が泥の上に付かない事、十分に体を乾かせることができる条件が必要になってきます。止まり木の変わりは割りばしでも木の小枝でも構いません。羽化した種類がウスバカゲロウなのかコウスバカゲロウなのか、羽化してからのお楽しみにするのも面白いと思います。自然界では7〜8月頃が最も多い羽化の時期になりますが、飼育下では多少時期がずれる可能性もあります。昔はアリジゴク捕りは子供の頃の遊びでしたが、神社等でも敷地にコンクリート部分が多くなったので、今は昔ほどアリジゴクがいないことが残念です。羽化までの時期(飼育期間)を短くしたい場合は大きなサイズのアリジゴクを捕らえ飼育する方法もあります。以上、アリジゴクの飼育の参考にしてみてください。
★コウスバカゲロウ ウスバカゲロウ科。コウスバカゲロウはウスバカゲロウと良く似ています。体長は35〜40ミリ。出現は6〜9月。分布は北海道、本州、四国、九州、沖縄。成虫は夜行性です。幼虫はアリジゴクと呼ばれ、乾いたや砂状の地面にすり鉢状の巣穴を作り、すり鉢状の穴に落ちた昆虫を捕らえて体液を吸います。巣は待ち伏せ式の落とし穴です。総称としてアリジゴクの名で呼ばれています。幼虫は1〜3年かかって成虫になります。幼虫期の長い昆虫になります。この差が何なのかは当方には分かりません。アリジゴクを調べるとコウスバカゲロウが多いです。神奈川県では個体数が多いようです。
コウスバカゲロウ蟻地獄.JPG
上、コウスバカゲロウの幼虫(アリジゴク)が作った巣です。この巣はかなり深さがあるものです。巣は乾いた土のある場所を見つけて、すり鉢状に作られています。とても細かい砂状の土で崩れやすい構造になっています。この場所は他の昆虫の観察用に作った雨よけの下に巣を構えたアリジゴクです。この巣に潜んでいた幼虫を掘り出して撮影しました。アリジゴク(幼虫)は巣の底の浅い所に潜んでいます。巣の周りには弾き飛ばされた粒の大きい塊が堆積しています。
コウスバカゲロウ1.JPGコウスバカゲロウ2腹部.JPGコウスバカゲロウ3頭部.JPG
上、アリジゴク(コウスバカゲロウの幼虫)上3枚は同1個体です。撮影のため体に付いていた泥は落としてあります。体の表面には棘状に毛が沢山生えていることが分かります。この棘状の毛はセンサーの役目をしていて、獲物が巣穴に落ちてきたことを感じ取ります。振動を感じて捕食行動をするので、餌は生きた昆虫になります。体液を吸って餌とした後の死骸は、大顎を使って巣の外に投げ出します。わずかな乾いた土を入れたプラスチックの容器で観察すると、動きが良く分かります。中、腹面です。頭部の下面に見える斑紋が薄く不鮮明になっている個体です。ひっくり返すとすぐに大顎を使ってピョンと元の姿勢に戻ります。昆虫は裏返しになる事を大変嫌うので、どの種類の昆虫も元の姿勢に戻ろうとしますが、アリジゴクは1瞬でもとの姿勢に戻します。この動作が早いので撮影には1苦労しました。写真からもわかるのですが、後脚が発達しています。これは後ろ向きに進むからなのでしょう。前脚はとても貧弱に見えます。脚の付いている位置も変わっていて面白いです。下、頭部の拡大です。歯の付いた鋭い大顎をしています。種類の判別には頭部の背面と前面の斑紋を調べます。この斑紋の形等が種類により違っているからです。
アリジゴクを観察していると、今まで気にしていなかったウスバカゲリウ類の成虫にも興味が出てくると思います。なかなかの面白い習性を持った昆虫なので、調べてみると好きな昆虫になるかも知れませんよ。成虫の姿を見たくなったら、夜行性が強く灯火に飛来する習性がある昆虫なので、灯火の周りで見つけることができます。
posted by クラマ at 00:22| Comment(0) | 昆虫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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