★コフキコガネ コガネムシ科コフキコガネ亜科。体長は25〜31ミリ。コガネムシとしては大型種になります。コフキコガネの特徴は灰黄色に見えるのビロード状の短毛がある美しいコガネムシです。ビロード状の短毛と地色によりが黄灰色、淡い茶色、淡い茶褐色などの色に見える、地味ながら美しく見える愛嬌のある顔をしたコガネムシです。この短毛が粉を吹いたように見えることからついた名前になるようです。短毛が密生しているのでカナブンのような光沢はありません。数の多い普通種になりますが産地により個体変異がある種類としても知られています。雄と雌の違いは触角と前肢に現れます。触角が太く大きく見える方が雄になります。雌の触角は小さいのですが、雄の触角は1目でわかる位に大きく、触角の先は扇子のように大きく広がります。雄の体形は胴長に見えます。雄の前肢脛節の端刺は2歯(脚の先に見えるトゲ状の突起)。雌の前肢脛節の端刺は3歯と言うことですが3歯目は目立ちません。大きさには個体差が出ます。コフキコガネは夜行性が強く灯火に飛来します。コフキコガネは日中は葉にとまってじっとしていることが多いのですが、昼間でも見つけることができます。手に乗せると飛翔性が強い種類なので、すぐに飛んで逃げてしまいます。年1化で出現は6〜9月。分布は本州、四国、九州、佐渡、伊豆諸島。平地から山地、林縁、自然公園など都市部の自然公園にも生息しています。餌とする植物の食性が広いので市街地でも見つけることができる種類ですので、探してみると面白いと思います。夜行性が強いので見つけにくいのですが、灯火に来るので灯火による採集も可能です。成虫はブナ科やクルミ科(クヌギ、コナラ、ミズナラ、クリ、クルミなど)の広葉樹の葉を餌にします。幼虫は広食性で土中にいて樹や草などの植物の根を食べます。越冬は幼虫で越冬します。非常に良く似た種類にオオコフキコガネがいます。オオと名前に付いていますが、オオコフキコガネは個体差もあることからコフキコガネとほぼ同じ大きさに見えてしまいます。見た目も良く似た区別が難しい種類になっています。コフキコガネは光の関係などで写真では見た目の色が上手く出ないことも多く、実際に見ると写真で見るよりも灰黄色が可愛いコガネムシです。
★オオコフキコガネ コガネムシ科コフキコガネ亜科。体長は25〜32ミリ。コガネムシとしては大型種になります。雄は触角が大きく雌は小さいことで雌雄の判別ができます。雄の触角の先端は扇子の様に大きく広がって見えます。雄の前肢脛節の端刺は2歯(脚の先に見えるトゲ状の突起)。雌の前肢脛節の端刺は3歯になっています。オオコフキコガネの大きさには個体差があります。暗赤褐色の地色にビロード状の灰白色の短毛が生えているコガネムシです。この短い毛が粉を吹いたように見えることから付いた名前のようです。短毛が密生しているので光沢はありません。出現は5〜8月。分布は本州、四国、九州。日中は餌となる樹の葉などにとまっていますが、夜行性が強く灯火にも飛来します。成虫はコナラ、クヌギなどの葉を食べます。幼虫は土中にいて樹や草の根を食べます。成長は遅く成虫になるまで1〜2年かかるようです。越冬は幼虫で越冬します。日本のレッドデータで群馬県で絶滅危惧T類になっています。コフキコガネとオオコフキコガネはあまりに良く似ているので判別が難しいです。オオコフキコガネは普通種ですがコフキコガネよりも数が少なくなります。これから数を減らしていく種類になっていきそうです。オオコフキコガネは海岸の近くの方が個体数が多いようで、山地よりも海岸線に多く生息する種類になる様です。
・オオコフキコガネとコフキコガネを判別する方法として両種の比較をしてみました。見分けるためのオオコフキコガネとコフキコガネの特徴を記して見ました。
@体表に見える短毛の色はオオコフキコガネは灰白色でコフキコガネの短毛は灰黄色をしています。ただし、短毛が脱落していたり、色が分かりにくい場合があります。オオコフキコガネの方が地色が濃い色に見える傾向が強いです。また、写真で見ると光の関係で色が違って写ることも多いです。自然光で見る新鮮な個体のコフキコガネは、淡いクリーム色に見えるなど優しい色合いをしています。
A雌雄で頭楯の形は違うのですが、雌の場合、頭楯の幅で両種の判別ができます。コフキコガネの雌の場合は頭楯の幅(側縁)が先に行くほど細まって見え、オオコフキコガネの雌の頭楯はほぼ平行に見えます。
B雄の場合。雄のオオコフキコガネは雌のオオコフキコガネと同じような体形をしています。1方、
雄のコフキコガネは体が雌よりも長細く胴長に見えます。鞘翅の後端部から腹部の先端がはみ出て見えます。オオコフキコガネの雄の腹部の先端は上から見ると飛び出て見えませんが、コフキコガネの場合はオオコフキコガネよりも大きく飛び出て見えます。
C見た目を比べるとオオコフキコガネの方が丸みを帯びて見えます。
D地域的な分布を調べることで、どちらの種類なのかの判別の確立を高めることができます。
E体長はオオコフキコガネの方がコフキコガネよりもやや大きいのですが、大きさには個体差が出るため見た目の大きさは参考までにした方が良いと思います。
読んでいても文章での判断では分からいと思います。1番良い方法は両種の雌雄を見比べて見ることですが、写真が無いので上記を参考にしてみてください。雌の場合だと頭楯を比べることが良いと思います。体色(短毛の色)は地域によってやや違いが出るので体色だけでの判別に頼らない方が良いと思います。
上はコフキコガネの雄です。光沢のあるコガネムシと違い淡い色合いに見えます。写真上、色も淡い黄色味を帯びています。尾端(腹部先端)は鞘翅から大きくはみ出して見えます。雄の体形の特徴で胴が長く見えます。下、雄は触角が大きく、先端が広がって見えます。またオオコフキコガネと色の差があることがお分かりいただければと思います。写真は以前に使った写真の個体と同じものです。
上、オオコフキコガネの雌です。雌なので触角が小さいです。雄の触角が大きく、雌の触角が小さいのは両種ともに共通しています。雌雄の判別に至っては簡単ですね。2枚目、オオコフキコガネの雌の頭部です。雌の頭部は幅が広く見えます。3枚目、尾端の写真です。1番下オオコフキコガネの短毛。比べて見るとコフキコガネとの短毛の色の差がわかります。短毛は灰白色をしているので、短毛が生えていると(脱落していないと)体色はコフキコガネよりも白っぽく見えます。
どちらも神奈川県横浜市で発見しました。両種の雌雄の写真で紹介したかったのですが、簡単には見つかりませんでした。神奈川県では昔は個体数が多く、ごく普通にいたコフキコガネとオオコフキコガネですが、樹上性のコガネムシで日中は大人しく葉にとまっていることが多い種類なので、見つけにくいこともあるのですが、現在は見る機会が減ってきました。観察エリアにしている自然公園には生息しているのですが、簡単に見つけることができなくなりました。
撮影に使ったコフキコガネ、オオコフキコガネにはコナラの葉を与えてから林縁に放ちました。両種とも他の属に言う害虫コガネムシと比べると食が細く、元気に与えた葉を食い散らかすということはありません。コフキコガネは短期間で死んでしまうことが多いので、2日程餌を与えた後に逃がすことにしています。撮影に使ったオオコフキコガネは4日間餌を与えて飼育したのち林縁に放ちました。どちらも短命だと思っています。過去にコフキコガネを飼育したことがありますが短命でした。これは捕獲時にすでに弱っている個体ゆえに捕まえられたためなのか(道に落ちていることが多いので)、コフキコガネ亜科が短命な種類になるのかは分かりません。新鮮な葉を与え続けても成虫での飼育は難しい種類になると思います。餌とする葉は必ず新鮮な葉を使うことが必要です。
前足が二つ欠けているオオコフキコガネを見つけたので保護しようとしました。ゼリーではなく新鮮なクヌギの葉が餌であることを知りました。明日あたり、クヌギの茂っている場所に行って放してやろうと思います。