2017年08月08日

ハイイロチョッキリとエゴツルクビオトシブミ。どちらも変わった習性を持つ器用な昆虫です。

ハイイロチョッキリとエゴツルクビオトシブミはどちらも幼虫のために変わった産卵方法を取ります。林縁を歩いているとドングリがついている小枝が沢山落ちている所を見たことのある方もいると思います。この地面に枝ごと落ちているドングリを落とした犯人はハイイロチョッキリという昆虫です。初めて地面に落ちたドングリの付いている沢山の小枝を見た時は、てっきりタイワンリスの仕業かなと思っていました。ドングリが付いていたのでおかしいなとは思ったのですが、いくら細枝と言っても昆虫が切り落とした枝だとは思えなかったからです。しかも切り口は綺麗に切られたように見えます。どのように切り落としたのか見て見たいものです。調べて見たら口吻の先にある口を使ってドングリに穴を開けて産卵をした後、今度はドングリが付いたままの小枝を数時間かけて切り落とすことが分かりました。直接見て見たいものですが、低い樹の枝で観察できないことが残念です。ハイイロチョッキリはシギゾウムシの仲間に似ています。触角を確認しないと他のゾウムシ科のゾウムシと間違えてしまいます。エゴツルクビオトシブミは名前にオトシブミとあることから、葉で揺り籠を作る昆虫だと気が付く人がいると思います。エゴツルクビオトシブミは首の長い変な形をした昆虫です。主にエゴノキにいてエゴノキの葉を巻いて揺り籠を作ります。オトシブミの揺り籠というと切り落とされて地面に落下するものを想像される方も多いと思いますが、エゴツルクビオトシブミの葉でできた揺り籠は切り落とされることなく、樹についたままになります。形は円筒形で細長く見えます。エゴツルクビオトシブミはエゴの樹にいるツルのように長い首をしたオトシブミからついた名前なのだと察することができます。雄と雌で若干見た目が違っていて、雄は名前のように長い首をしていて、雌の場合は雄よりも短くなります。昆虫の世界ではあることなのですが、雄の成長が十分でなく小型化した場合は雄であっても形が変わります。エゴツルクビオトシブミの小型の雄の場合には、首の長さが十分に伸びないで、雌に似た体形になってしまうようです。しかし小さな体の昆虫が葉を巻いて、器用に葉で揺り籠を作るとは驚きです。幼虫のために小枝を切り落とすハイイロチョッキリと揺り籠を作るエゴツルクビオトシブミは、どこでそのような技を身につけたのかと関心させられてしまいます。ハイイロチョッキリとエゴツルクビオトシブミを調べてみました。
★ハイイロチョッキリ チョッキリゾウムシ科。普通種。褐色から黒褐色に見える体色で、灰色や灰黄色をした粗い毛で覆われています。ハイイロチョッキリの容姿は長い口吻があり、体色も容姿もゾウムシ科のシギゾウムシと間違えるほどよく似ていますが、ゾウムシとの違いは触角の形態が違っていることです。ハイイロチョッキリの触角の先端は膨れていて、3個のコブ状に膨れた節が見えます。またハイイロチョッキリの雄には胸部前方(肩にあたる部分)に棘があることが特徴になっていて、この特徴的な棘は雌には無いことから、棘を確認することで雌と判別することができます。体長は7〜9ミリ(体長は口吻の長さは含めない長さになっています)出現は6〜10月。分布は本州、四国、九州。平地から山地のドングリ類の生えている雑木林や林縁に生息しています。餌となる樹がある緑の多い公園にもいます。成虫はコナラ、クヌギの葉を食べます。特定の植物と関係を持つことが多いゾウムシの仲間などの中では、幼虫の餌とする植物の幅(ドングリの種類)は広い昆虫になります。雌は主にクヌギ、コナラ、ミズナラに産卵します。他にカシワ、ナラガシワなど(ナラガシワでの産卵を確認しました)に産卵します。雌はドングリの帽子(殻斗)の上方に口で穴を開けてから産卵します。(殻斗の表面やま殻斗と実の境目)まだ若い緑色をした未熟なドングリに卵は産み付けられます。次に卵を産み付けたドングリは葉の付いた細枝ごと地表に落とされます。地面にドングリと葉が付いた枝先が切り落とされて落ちていたら、ハイイロチョッキリが産卵した後の幼虫のために地面に落としたドングリだと思って良いでしょう。ハイイロチョッキリの名前は枝をチョッキりと切り落とすことから来た名前なのでしょう。見事なまでにハサミで切ったような小枝の切り口は、小さな口を使って2〜3時間かけて切り落としたものになります。ハイイロチョッキリがいる樹の下には、驚くほど切り落とされた小枝が落ちていることがあります。この小枝が多い樹には多くのハイイロチョッキリがいると思って良いでしょう。越冬は、秋にドングリから脱出した終齢幼虫が土中で繭を作り越冬します。幼虫は翌年に蛹化します。ドングリの実には不作の年が訪れることが知られているので、発生する個体数はドングリの実の付き方に左右されてしまう昆虫になるのかと思います。
ゾウムシ科のシギゾウムシ類はドングリを落とすことなく、卵を産み付けます。ハイイロチョッキリは確実に幼虫を育てるために産卵後にドングリを地面に落としてしまうのです。似た昆虫にはゾウムシがいて、コナラにはコナラシギゾウムシ、クヌギにはクヌギシギゾウムシがいますが、コナラの実に産卵するともあるようです。
クハイイロチョッキリ1.JPGハイイロチョッキリ2.JPG
ハイイロチョッキリです。横から見ると面白いです。いびつに見える体形も可愛く思える昆虫です。口吻が長いゾウムシです。上から見ると横から見るより長く見えますね。横から見ると形が可愛く見えます。鳥のキウイにも似て見えるのは私だけでしょうか。数カ所で切り落とされ多枝を見つけることができました。写真は同じ個体です。ハイイロチョッキリは樹の上の方にいることが多いので、樹をゆすって落とさないと姿を見るのは難しいかも知れません。撮影地。神奈川県横浜市、こども自然公園。
ハイイロチョッキリ産卵後の小枝.JPGハイイロチョッキリ産卵痕1.JPGハイイロチョッキリ産卵痕2.JPGハイイロチョッキリ産卵痕.JPG
ハイイロチョッキリが落とした小枝とドングリです。2枚目と3枚目は産卵のために開けられた穴です。中に卵が産み付けられています。穴を開ける部位は殻斗の半分より上部か殻斗と実の境目に開けられています。下、コナラの実に開けられた穴(実を枝から外して撮影しました)です。ドングリの種類が違っても、穴を開ける部位は同じです。未成熟の緑色のドングリに産卵するので、時間が数時間後には穴が黒く変色していきます。この痕を見つければ産卵されていることが分かります。殻斗に穴があけれれている場合は確認しにくくなってしまいます。ハイイロチョッキリには小枝を切り落とす力があるので、殻斗の上から穴を開けることも難しくない仕事になるのでしょう(写真を追加しました)。殻斗に開けられた穴には、わずかに殻斗のクズが詰まっているようです。よく見ないと穴があけられている場所が分からないものもありましたので、穴を埋め戻す習性があるのか、殻斗に穴を開けるため殻斗のクズが穴に入るものなのか、いずれにせよ実の表面に穴を開けるよりも、卵がある内部の乾燥を防ぐことができるのではないのかと予測することができます。実の表面よりも殻斗に穴を開けて産卵することが結果として理想的なのかもしれません。観察した樹ではドングリの殻斗に穴があけられていることの方が多かったです。また観察地ではクヌギ、ナラガシワの樹は極めて少ないです。ほぼコナラでの繁殖になっています。1番下の写真の左側のドングリは殻斗に開けられた穴の位置を重視したので、穴についていたクズをどけて見やすくしました。
ハイイロチョッキリ産卵痕クヌギ1.JPGハイイロチョッキリ産卵痕クヌギ.JPGハイイロチョッキリ産卵痕2.JPG
上、ハイイロチョッキリに落とされたクヌギの小枝とドングリです。よく見ると中央から右側の上方に穴が開いていることが分かります。この小枝はかなりの太さがありました。クヌギの樹の下に落ちてい小枝は少なかったです。前はもっと多くの小枝が落ちていました。昨年枝を切られているので、このクヌギの樹のある付近のハイイロチョッキリの個体数が少なかったか、樹下の歩道がアスファルトと砂利を敷き詰めた小道になっているので、繁殖が難しくなっているのかも知れません。中、上の写真と同じクヌギの殻斗に開けられた産卵痕です。クヌギの殻斗は厚みがあるものの、未熟な実の殻斗は柔らかいのかも知れません。あけられている穴が大きいです。下、ナラガシワのドングリの殻斗にあけられていた穴(産卵痕)は小さく、殻斗には細かい白い毛が多く生えています。ドングリの種類による穴の大きさについて予測して見ました。殻斗の硬さなどドングリの種類による殻斗の質で、穴の大きさが変わるのかも知れません。クヌギの殻斗は厚みがあるので穴が大きくても内部が乾燥しにくいのかも知れません。
★エゴツルクビオトシブミ オトシブミ科。体長は雄、8〜9・5ミリ。雌、6〜7ミリ。首の長いオトシブミで、黒い体色で光沢があります。雄は首の部分が長く見えます。上翅には粗い点刻があります。エゴツルクビオトシブミは樹上性の普通種で出現は4〜10月(4〜6月は越冬成虫が活動しています。年2化で新成虫は7月から活動します)になります。分布は北海道、本州、四国、九州。平地から山地に生息しています。自然公園にも生息しています。エゴノキに主に生息していますが、ハクウンボク、フサザクラも餌にするようです。エゴツルクビオトシブミの葉を巻いて作る揺り籠は長細い円筒状で切り離されることが無く、樹の枝についたままになっています。揺り籠は雌が作り、中には卵が1個入っています。孵化した幼虫は内側から葉を食べて育ちます。越冬は揺り籠の中で成虫越冬するようです。
エゴツルクビオトシブミ1.JPGエゴツルクビオトシブミ2.JPG
エゴツルクビオトシブミの雄です。見ての通り長い首をした面白い容姿をしたオトシブミ科の昆虫です。横から見るとさらに変な形をして見えます。これだけ変わった個性的な形をしているので、もっと大きかったら人気が出たかもしれないと思いました。この個体はコナラの葉の上で見つけました。近くにはエゴノキが無かったので、どこかから飛んできたようです。写真は同じ個体です。撮影地。神奈川県横浜市、南本宿公園。
posted by クラマ at 16:38| Comment(0) | 昆虫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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