2017年06月20日

オオハラナガツチバチ、キンケハラナガツチバチ、ヒメハラナガツチバチ、キオビツチバチ。 よく似ているツチバチ科のハチです。

ツチバチは1見すると黒と黄色の配色から、細長いミツバチやアシナガバチに似て見えます。ツチバチの仲間はどれも良く似ていて、どれもこれも同じに見えてしまうので判別は難しくなります。腹部に見える横帯の数や短毛の生え方などを確認しなくてはいけなくなります。姿、形からツチバチの仲間であることの推測はできても、花にとまっている所を見てツチバチの種類を区別することは至難の業になります。幸いなことに、ツチバチは大人しい性格をしているので、そっと覗き込んで観察すれば特徴をつかむことができます。ただしハチに変わりはないので、捕まえようと思わない方が無難です。ツチバチとはツチバチ科に属する総称で、雌はコガネムシの幼虫に卵を産み付ける寄生蜂になります。雌は地表を飛んで寄生する(卵を産み付ける)コガネムシの幼虫を嗅覚を使って探し出します。見つけると幼虫がいる所まで穴を掘って進み、幼虫に麻酔をうちます。麻痺した幼虫を土中の深い部分に運び、独房を作ってから産卵するそうです。卵は1個産み付けます。この作業はツチバチには大変な苦労と労力になることから1日に1回の産卵回数になると予想されています。麻酔をうたれてコガネムシの幼虫は麻痺して動けなくなっている状態でツチバチの幼虫の餌とされてしまいます。産卵はコガネムシの幼虫の体表面に卵を産み付けます。孵化した幼虫は麻痺しているコガネムシの幼虫を食べて育ちます。麻酔されたコガネムシは生きたまま食べられる訳ですが、餌の幼虫が腐らない(腐りにくい)防腐剤的な成分を含んでいると予想することができます。 また、食べ方は他の寄生蜂のように、孵化した若齢が幼虫の体内に侵入して餌とします。食べ方は寄生する幼虫が死なない程度に少しずつ食べるのだと予想します。ツチバチの幼虫は肉食性で、麻痺した生きたままのコガネムシの幼虫を餌にするという、まるで映画のエイリアンを想像させる恐ろしさがあります。ツチバチの仲間は幼虫も成虫も単独で生活しているハチになります。コガネムシの天敵として、コガネムシの幼虫を餌として食べるオオハラナガツチバチ 、キンケハラナガツチバチ 、ヒメハラナガツチバチ、キオビツチバチなどは、植物の根を食べる植物の害虫であるコガネムシの幼虫を餌にするハチなので、立派な益虫と言うことができます。紛らわしいのがツチバチ(土蜂)とジバチ(地蜂)の呼び名です。ツチバチ(土蜂)とジバチ(地蜂)は呼び名が似ていますが科が違います。大人しい性質のツチバチの仲間に対して、ジバチは刺されると危険なスズメバチ科クロスズメバチ類の総称になっています。特にジバチというとクロスズメバチの事を言うことが多いようです。クロスズメバチはスズメバチ科の中では小型で、攻撃性と毒性は弱いハチなのですが、刺されることはあります。クロスズメバチは、土中に巣を作り集団で暮らしています。オオスズメバチやキイロスズメバチのような凶暴性は持っていなくても毒を持っているハチになるので、しっかりと分けて覚えておかないといけません。長野県ではクロスズメバチをジバチと呼んでいて、幼虫を「ハチの子」と呼んで食用にしています。食用とされるハチの中では、味はクロスズメバチの幼虫(ハチの子)が1番美味しいということです。ツチバチ科の4種類。オオハラナガツチバチ、キンケハラナガツチバチ、ヒメハラナガツチバチ、キオビツチバチを調べてみました。
★オオハラナガツチバチ ツチバチ科。埼玉県では絶滅危惧U類になっています。雄は長い触角をしていて体長18〜25ミリ。雌の体長は25〜32ミリ。胸背部には黄色の毛が生えていて腹部は細長く見えます。腹部の特徴は、雄の横帯は5本ですが、しばしば尻尾の先端側の横帯は細くて消失している個体も多いようで、横帯は4本に見える(4本)個体もいます。雌の腹部の横帯は3本。雌の場合、厳密には帯紋ではなく毛帯が細い帯のように見えています。腹部の基部は段差になっています。横帯の色は白っぽく見えます。よく似ている キンケハラナガツチバチの横帯は4本で、横帯の色は黄色く見えます。雌は地表近くを飛んでコガネムシの幼虫を見つけて麻酔を注射してから土中で卵を産み付けます。分布は本州、四国、九州、沖縄。昼行性で成虫は花の蜜を吸うために花に飛来します。成虫の出現は8〜10月。オオハラナガツチバチ もツチバチ科なので成虫で越冬すると思います。
オオハラナガツチバチ雄1.JPGオオハラナガツチバチ雄2.JPG
上はオオハラナガツチバチの雄です。触角が長いです。この写真では触角が1本欠損してしまっています。この2枚は同1個体です。下、腹部の横帯が見えます。写真ではこの個体の横帯は4本に見えています。オオハラナガツチバチの雄の横帯は5本目が細かったり、4本に見える個体がいるそうなので、オオハラナガツチバチの雄で良いと思います。横帯は白っぽい色をしています。おとなしいハチなのですが、写真より実物は大きく迫力があります。
オオハラナガツチバチによく似ているハラナガツチバチも比較のために調べてみました。
★ハラナガツチバチ ツチバチ科。普通種で数が多い。体長19〜33ミリ(雄は体長19〜25ミリ。雌は体長23〜33ミリ)胸部微毛は少なく黒色をしています。腹部には黄色い色の帯模様があり帯の下部には黄色い毛が生えています。横帯の幅は広くなっています。ハラナガツチバチの腹部の帯の数(横帯)は5本で、ハラナガツチバチは他の仲間と比べて腹部の光沢が強く見えます。攻撃債は弱く大人しい性格のハチで、単独で生活する寄生バチです。餌は成虫は花の蜜、幼虫の餌は土中にいるコガネムシ類の幼虫です。雌は土中のコガネムシ類の幼虫に卵を産み付けてしまいます。ハラナガツチバチ の幼虫は、コガネムシの幼虫の体内で育ちます。分布は本州、四国、九州、沖縄。昼行性で出現は4〜11月。発生は年1回の発生になります。越冬は成虫で行われます。成虫は乾いた崖などに穴を掘って、穴の巣穴で単独で越冬します。よく似ているハチにキンケハラナガツチバチがいます。キンケハラナガツチバチの横帯は4本です。オオハラナガツチバチもよく似ています。
★キンケハラナガツチバチ ツチバチ科。普通種で数が多い。体長は雄16〜23ミリ。雌17〜27ミリ。雄の触角は長く、雌の触角は雄に比べて、はるかに短くなっています。名前に付いているキンケとは、体に密生している金色の毛色から来ているようです。分布は本州、四国、九州、沖縄。林縁、畑地、公園、人家付近に生息しています。出現は5〜10月で発生は年1回。成虫は花の蜜を餌にしていて、単独で生活しています。昼行性のおとなしい蜂で、雄のキンケハラナガツチバチは刺さないハチです。実を守るためなのでしょうか、雄のキンケハラナガツチバチは針をお尻の先から出して刺すしぐさをします。恐らく威嚇行動の1つなのでしょう。キンケハラナガツチバチは花に良く集まるハチです。体が意外と大きいうえ、黄色い帯の有るハチなので、見た目がとても怖いのですが攻撃性の少ないとても大人しいハチです。雌は土中にいるコガネムシの幼虫を探して針で刺して麻痺させてから卵を産み付けます。小型の雄の体色は薄く、よく似た種類のヒメハラナガツチバチにより似て見えてきます。越冬は雌が越冬します。乾いた崖の土に穴を掘って単独で越冬します。
体の特徴は、腹部に見える黄色の帯の数は4本で、帯の幅がよく似ている他のツチバチよりも太く見えます。頭部、胸部をはじめ体には名前のように金色に見える黄褐色〜赤褐色の毛が密生しています。雌と雄の違いを比べて見ると、
・雌。雌は黒い地色で頭部、胸部には黄色い長毛が密生しています。腹部には黄褐色の毛帯はあるものの横帯(帯紋)はありません。雄の腹部では黄色い帯に見える部分が雌では黄色い毛帯になっています。雌の触角は短いです。
・雄。雄の腹部には淡黄色の幅のある横帯(腹部に見える黄色い帯)があります。良く似ているオオハラナガツチバチの雌の腹部の帯の数は3本です。キンケハラナガツチバチの雄の腹部の帯の数は4本になります。雄の触角は雌よりもとても長くなります。
キンケハラナガツチバチ雌。.JPGキンケハラナガツチバチ雌3.JPG
キンケハラナガツチバチの雌です。特徴である金色に見える剛毛が目立ちます。
★ヒメハラナガツチバチ ツチバチ科。体長は雄、11〜19ミリ。雌、15〜22ミリ。ヒメハラナガツチバチの雄と雌では容姿が違っています。出現は4〜11月で年1回の発生になります。分布は本州、四国、九州。平地から林縁、畑地、公園、人家付近に生息しています。ヒメハラナガツチバチの体の特徴は腹部に見える黄色い帯です。雄と雌では横帯の数が違います。ヒメハラナガツチバチの腹部に見える黄色い帯の数(横帯)は雄は5本あります。横帯の色は薄い黄色です。大変よく似ているキンケハラナガツチバチでは4本であることで判別することができます。体色もキンケハラナガツチバチよりも薄い色になります。ヒメハラナガツチバチの雄の胸背部(小楯板)にある黄色い斑紋は笑った人の顔に見えます。特徴であるこの斑紋も小型のヒメハラナガツチバチでは小楯板の斑紋(2紋に見える部分)は消えてしまいます。胸部におある2個の斑紋の有無と腹部にある横帯の数を確認すると間違いにくくなります。雄の発生率は少なく、雄の出現は7〜8月が多いようです。雌のヒメハラナガツチバチの特徴は、体色は他の似た種類よりも黒味が強く濃く(黒っぽく)見えることです。雌の触角は短く、翅端の色は濃い色をしていることも特徴になります。腹部に見える縞(毛束)は4本で、毛の色は灰黄色や白色で白っぽく見えます。この縞模様の部分は毛束のみで白斑はありません。雄に見られる小楯板にある斑紋は雌にはありません。越冬は雌が越冬します。乾いた崖の土に穴を掘って土中で単独で越冬します。成虫は花の蜜を吸います。性格がおとなしい蜂で、攻撃性はとても低いです。雌は土中にいるコガネムシの幼虫を探して針で刺して麻痺させてから卵を産み付けます。
ヒメハラナガツチバチ(雄).JPGヒメハラナガツチバチ雌.JPG  
上、ヒメハラナガツチバチの雄です。雄は触角が長いので雌雄の判別は簡単です。特徴である雄の背中(小楯板)に見える斑紋は可愛いです。ヒメハラナガツチバチの体はやや細長く見えます。下、雌の写真を追加しました。雌のヒメハラナガツチバチです。雄と比べると体の違いがわかると思います。同じ種類の雄と雌とは思えないです。
★キオビツチバチ ツチバチ科。腹部に黄色い黄色紋がある黒い体をしているツチバチです。全体的には地色の黒い部分が多いので、細長くて黒く見えるツチバチです。体には黒色の短毛が密生しています。雌と雄は外見的には大変良く似ていますが、雄の触角は雌よりもよりも長く、雌の体は雄よりも大きくなります。雄の触角の長さは前翅長の3分の2ほどあります。簡単なキオビツチバチの雄と雌の違いは腹部の黄色い紋の形を比較すると見分けることができます。雄の腹部にある黄色い紋は大きくて接近していますが、雌では黄色い紋は小さく、目玉のように見える紋は離れていることで判別ができます。雄の場合この紋はつながりそうに見える個体もいます。体長は11〜25ミリ(雄は11〜20ミリ、雌は15〜25ミリ)。分布は北海道、本州、四国、九州。各種樹林、林縁、畑地、公園、人家の周辺。平地から山地まで普通に生息しています。出現は6〜10月。年1化。成虫で崖などに土を掘って土中で越冬します。昼行性で活発に動き回って花の蜜を吸います。群れることはなく単独で行動しています。キオビツチバチ はコガネムシ類の幼虫を土中で探して、見つけた幼虫に卵を産み付ける寄生蜂です。コガネムシの幼虫などは毒針で麻酔をかけられて卵を産み付けられます。成虫は様々な花の蜜を餌にします。攻撃性のない大人しいハチです。とても良く似た種類にアカスジツチバチとオオモンクロクモバチ(オオモンクロベッコウ)がいます。
よく似ているアカスジツチバチとオオモンクロクモバチ(オオモンクロベッコウ)を調べてみました。
・アカスジツチバチ ツチバチ科。数は少ないようです。アカスジツチバチの紋の色は橙黄色で、黒い体色をした体には強い光沢があり翅には弱い金属光沢があるようです。特徴は顔にある斑紋です。額に橙黄色の斑があるのは雌になります。腹部にある斑紋の形からの区別は、斑紋に個体差があるので難しくなりますが、アカスジツチバチの紋の方が小さくなるようです。紋のほとんど見えない個体もいるようです。名前に「アカ」と色を連想する名前がついていますが、赤い色の部分はありません。アカスジツチバチの分布は北海道、本州、四国、九州 、沖縄で、林縁などに多いようです。               
・オオモンクロクモバチ(オオモンクロベッコウ)。ベッコウバチ科。地色が黒い色をした真っ黒い体色をしていて、腹部(第二腹節の基部)にはオレンジ色(橙赤色)に見えるの紋が2個あります。この紋は大きくて接近していることから1つの帯のように見えます。のオオモンクロクモバチはクモを狩るハチで、獲物とするクモの種類は多く、ハシリグモ類、アシダカグモ類などの大型のクモを狩ることが多いようです。ものすごいハンターなのです。麻酔をうって捕らえたクモは地中の巣穴に運ばれた後、幼虫の餌とするためにクモに産卵します。成虫の餌は花の蜜で各種の花に集まります。体長は12〜25ミリ。分布は北海道、本州、四国、九州 、沖縄。年2化するようです。
キオビツチバチ雄1.JPGキオビツチバチ雄2.JPG
上、キオビツチバチの雄です。全体的に黒く見える体で、腹部には黄色い帯状の紋が見えます。黒い体色をした似たハチも多いうえ、雄と雌でも違いがあることから判別は難しいです。
キオビツチバチ雌.JPGキオビツチバチ雌の斑紋.JPG
上、キオビツチバチの雌です。腹部の目玉模様の斑紋が目立っています。土の上を歩き回り、土中にいるコガネムシ類の幼虫を探していました。土の中にいる幼虫を見つける能力には驚いてしまいます。下は雌の腹部にある斑紋の部分を拡大したものです。
紹介したツチバチの成虫は花に集まるので、花壇などで待ち伏せすると見つけることができます。怖そうに見えるのですが、おとなしい種類が多いので好きな種類です。実際に撮影となると難しいのですが、オオモンクロクモバチ、アカスジツチバチの写真が撮れたら追加したいと思っています。
posted by クラマ at 17:33| Comment(0) | 昆虫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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