2016年05月09日

キシノウエトタテグモ。地面に蓋の付いた巣を作るジグモです。

キシノウエトタテグモは地上を徘徊して移動するクモ(ジグモ)なので、多くの距離を移動することはありません。それゆえ生息場所に偏りができて、生息地が地域的なものになっています。生息地が山地に少ない(いない)ことはこのためだと思います。キシノウエトタテグモは地面に穴を掘って巣を作るジグモの1種で、巣穴は蓋で閉まるようにできています。巣穴の蓋の構造は片開になっていて、近くに獲物が通りかかると振動を感じて蓋を開けて獲物に襲いかかります。平面な地面に巣を作った場合は竪穴で、がけ地などの斜面に作った場合は横穴になります。地面に掘られた巣には蓋を作って分からないようにしてあるので、蓋が閉じられている巣を見つけることは難しいです。キシノウエトタテグモは原始的なクモの特徴を持っています。特に脚を縮めている時などは8本のはずの脚が10本あるように見えてしまいます。頭胸部には光沢があり黒い色をしています。頭胸部は円形状に見えます。脚は太く短めで、ジグモ科らしい体形をして見えます。雄も雌もよく似ていますが、雌の方が腹部が大きく、脚は太い脚をしています。分布は広いものの特定の地域に生息している珍しいクモになります。さらに面白い特徴としてジグモに寄生する菌であるクモタケに寄生されることが多い種類としても有名です。クモタケはクモの体から生えるキノコです。今まで見たクモタケは全て、キシノウエトタテグモの巣の蓋を押し上げて生えていました。クモタケは厳密には冬虫夏草とは少し違うバッカク菌になります。クモタケは当ブログ「クモタケ。クモから生えるキノコです。」で紹介させていただいております。こちらもご参考にして見てください。絶滅が危惧される数の少ない希少なクモ、キシノウエトタテグモを調べてみました。自己流で作ってみたキシノウエトタテグモの巣の標本の写真を追加しました。
★キシノウエトタテグモ トタテグモ科。歩いて移動するクモなので、あまり遠くには移動できません。そのため環境の変化に弱いという欠点があるので、普通種になるのですが絶滅危惧種にもなっています。現在も開発等の自然破壊により生息地を減らしています。体長は雄9〜12ミリ。雌13〜17ミリ。身体的な特徴として触肢が太く脚にみえることから、脚の数が10本に見えることです。この10本脚に見える特徴は原始的なクモに見られるとく特徴になります。頭胸部には光沢があり丸みを帯びています。色は濃赤褐色、腹部上面には茶褐色の斑紋があります。腹部は褐色〜紫褐色をしています。雄の腹部は雌よりも細く斑紋も不明瞭になります。脚は雌よりも長く見えます。分布は本州(福島県以南)四国、九州。キシノウエトタテグモは都市部から平野にかけて局地的に生息していて、低山や低地の歩道脇の赤土の崖や植木の盛り土、石垣の隙間、木の下の根元などの土中に巣を作ります。成体は雌は1年中、雄は9〜10月に地上に雌を求めて現れます。巣穴の深さ(巣の長さ)は4〜7センチで筒状。雨水の当たらない場所で、乾燥の強くない場所を選んで巣を作ります。雨水の流れ込んだり溜まるよな場所には巣は作りません。巣の入り口には蓋があり、近くを通りかかった昆虫の振動を感じ取って蓋を開けて捕えます。獲物はダンゴムシやワラジムシが多いようです。巣の蓋は蝶番のような円形の扉のような構造になっています。蓋を閉じられたら周りと区別がつかなくなってしまいます。巣穴の作り方は地面に対してまっすぐに穴を掘って作ってあるか、斜面に対してやや下向きに作られた構造になっているようです。キシノウエトタテグモ は人家付近にも生息するクモのようですが、絶滅危惧種、準絶滅危惧種にしていされている県が多くあり、簡単には見つからない種類になります。生息地を観察していて分かったことは、人為的なことにより(樹の伐採など)雨が当たる様になった場所には生息できなくなります。また、雨が当たらなすぎる場所など乾燥が進む場所にも生息することができません。やや湿り気のある場所や、コケ類の生えているような場所では繁殖が続いています。このことから、土中に巣を作るために適正な湿度が必要であることが推測できます。環境に左右されやすく、突然個体数を増やすような種類ではないようです。キシノウエトタテグモは今後は数を減らしていくと予想ができますが、条件がそろえば人家の庭でも生息はできると思います。
絶滅危惧T類には千葉県、群馬県、三重県。
絶滅危惧U類には滋賀県。愛知県。
準絶滅危惧種には東京都、埼玉県、茨木県、栃木県、石川県、京都府、大阪府、鳥取県、山口県、広島県、愛媛県、徳島県、福岡県、熊本県、長崎県が指定されています。
キシノウエトタテグモの分布域は広くても生息は局所的です。例え人家付近に生息している特徴があっても、生息する条件や開発等、自然破壊の影響を受けやすいクモになるので、今後もさらに数を減らしていきそうです。幸いなことに神奈川県では数が多くいる種類になっていて、探してみると横浜市内で8カ所(うち公園は3か所で、公園は1カ所として数えています)隣接する大和市、泉の森公園でも生息している場所を見つけました。巣は見つけにくいので大まかな確認になってしまい個体数は把握していませんが、どこも個体数は少ないようです。横浜市内で見つけた3カ所では3〜4個の巣穴しか見つけられませんでした。横浜市こども自然公園内で見つけた3か所のうち2カ所は雨除けになっていた大きな木の伐採により全滅の可能性が濃いです。巣を見つけることができませんでした。市有地の道路沿いにあった生息地も木の伐採でかなり生存は厳しくなってしまいました。雨が当たるようになってしまったのでこの場所でも生存は厳しいと思うので、かろうじて7カ所の棲息場所が残っていることになります(内訳は2017年3月の時点で公園4カ所、市有地の土手1カ所、民家の小さな土手2か所)もっと探せば個体数は少ないかもしれませんが見つけることはできると思います。調べているうちに慣れてくると住処になりそうな場所の雰囲気が分かってきました。キシノウエトタテグモの巣は石垣の石と石の間の泥の部分や斜度の少ない崖や斜面、大木の根元などに作られていていることが多いのですが、大木の平らな地面でも見つけています。崖に巣を作るイメージが強かったのですが、観察していくと雨が当たらない事の方が巣を作るためには重要なように思えてきます。
キシノウエトタテグモ1.JPGキシノウエトタテグモ2.JPG
1枚目(上)と2枚目は同じキシノウエトタテグモの雌です。この写真は腹部が大きい特徴から雌のキシノウエトタテグモになります。偶然に見つけることができました。頭胸部にはツヤ(光沢)があります。2枚目の写真では脚の数が10本に見えています。実に不思議な容姿のクモです。
キシノウエトタテグモ雄2.JPGキシノウエトタテグモ雄1.JPG
上2枚(同1個体)はキシノウエトタテグモの雄です。雄も雌も体形はよく似ています。雄の特徴は脚が雌の脚よりも長く見えることです。下の写真の様に脚を縮めていると雌雄の判別が難しいです。撮影場所、雄、雌共に神奈川県横浜市、南本宿公園。
キシノウエトタテグモはクモタケに寄生されることで知られています。ジグモには全く感染しないで、ほとんどがキシノウエトタテグモに感染することが分かっています。クモタケはバッカク菌で、厳密には冬虫夏草ではありませんが、クモから発生するので冬虫夏草の仲間として知られています。
トタテグモ巣1.JPGトタテグモ巣2.JPG
キシノウエトタテグモの巣B3.JPG
トタテグモの巣です。撮影は2月。土中に作られる巣は、蓋が閉まっていると地面と見分けがつきません。上2枚は僅かに斜面になっている場所にあった巣です。近くには蓋の径が非常に小さい巣もありました。横浜市内の道路に面した民家の僅かな土の斜面で見つけたものです。中、の写真は枯草の茎で上の巣の蓋を開けてみたところです。ほとんど斜度のない場所に作られていたこの巣は、偶然に周りの土が僅かにどいていたので見つけることができましたが、通常蓋と地面の差がないと地面と同じにしか見えないので、とても見つけにくい状態にあるといえます。下、別の場所の巣で斜面に対して横向きに作られていました(写真には見て分かりやすい巣を使っています)巣の内部は滑らかにできていることが分かります。この写真も枯れ草で蓋を開けて写しました。この巣は民家の垣根にある約20センチほどの土の部分に作られていた巣です。他の場所でも確認済みですが、石垣の石と石の間の僅かな土の部分にも巣を作る性質から、意外な場所でも見つけることができることが分かりました。巣を作るためには、雨水が巣に入らないことが重要になるようです。
キシノウエトタテグモ巣.JPG
上、キシノウエトタテグモの巣の標本を作ってみました。作り方は自己流ですが、クモの巣を保存したくて作り方を考えて、ぶっつけ本番で作ってみました。初めてにしては上出来だと思っています。丁寧に水で泥を落として十分に乾燥させてから作成して見ました。中に筒状の発泡スチロール製の型を入れてあります。巣の表面についている枯葉等は接着剤(木工用の速乾性のボンド)で固定してあります。この巣は空き巣になったものを使用しています。この巣は長さは40ミリ。入り口の直径は約11ミリです。写真の右側が入り口部分です。右下の円形に見えている所が巣の蓋になります。注意:この巣は横浜市内で見つけた生息地の土手から、空き巣になった空の巣を採取したものです。許可ももらいました。







posted by クラマ at 17:18| Comment(0) | 蜘蛛 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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