2019年05月28日

オカモトトゲエダシャクの幼虫。幼虫は鳥の糞、成虫はT字形。個性豊かなガです。

オカモトトゲエダシャクはシャクガ科のガですが、成虫、幼虫とも変わった容姿をしたガです。最大の特徴は、成虫のとまった時の翅の形が変わっていることです。普通のガの形とは1風変わったT字形に見える姿でとまることです。この形に見える時は翅をたたんでいる時になります。翅を広げた場合は普通のイメージに近い翅の形をしたガでに見え、細長いT字に見える細長い翅の時は、前翅は扇子の様にたたみこまれています。さらに前翅を左右に長細く張り出し、後翅は体側に反ってたたまれているので、英字のT字形に見える形になるのです。このT字形に見える容姿のガには他にトリバガ科のガがいます。トリバガの仲間も翅を折りたたみますが、ただトリバガ科は小型な事と、さらに細く見えることから間違うことはありません。体色は枯葉の様な茶褐色、暗茶褐色、褐色をしていて、細長く左右に伸びた翅の形が独特です。成虫を見る機会が少なく春に現れる形の変わったガとして、マニアには人気の高い種類になっているようです。成虫はクワトゲエダシャクと判別がつきにくいほど良く似ています。オカモトトゲエダシャクの幼虫も変わっていて、鳥の糞に擬態していると言われています。地味な配色で鳥の糞に見える白い色も混ざっているイモムシ(シャクトリムシ)です。突起のある奇異な姿をしていて、丸まった時の姿は離れて見ると鳥の糞にも見える見事な擬態になっています。皮膚にはツヤがあり、ヌメっとした質感を持っていることが、よりリアルに思えます。3月に出現する成虫も翅をたたんで細長くなることで、褐色や茶褐色に見える体を、樹皮や葉のない樹の枝に紛れさせる擬態になっているのだと思います。
★オカモトトゲエダシャク シャクガ科エダシャク亜科。名前の由来は幼虫に見える沢山の突起状の棘があることから来たようです。開帳36〜45ミリ。出現は3〜4月。春に羽化する珍しいタイプです。分布は北海道、本州、四国、九州。オカモトトゲエダシャクの成虫は頭部、胸背部に毛が密生しています。胸背部の毛は長く立派です。成虫は翅を扇子の様に細長く折りたたむことができる事と、後翅も細長くたたんで体側に沿わせることから英字のTの字に見えるT字形になることが最大の特徴になっています。オカモトトゲエダシャクの後脚の脛節に1対の棘がある事で、良く似たクワトゲエダシャクと判別できます。 クワトゲエダシャクは数が激減していて、しかも局地的に生息している珍種なので、見つけることは難しいです。オカモトトゲエダシャクの成虫は灯火にも飛来しますが、灯火に飛来するのは雄になるようです。翅をたたんでいないと普通のガのイメージ(大雑把ですが)に近い形に見えると思って良いと思います。オカモトトゲエダシャクの幼虫は鳥の糞に見える配色をしています。これは鳥の糞に擬態しているものと思われます。危険を感じるなど、振動を感じたりすると体を丸めて大きな塊の様になります。色が鳥の糞に似ているので、丸まることでさらに擬態の効果を高める習性があるのかも知れません。幼虫はクルミ科、ニレ科、ツバキ科、バラ科、マメ科、ツツジ科などの葉を食べる広食性です。オカモトトゲエダシャクの幼虫は、太めのシャクトリムシになります。幼虫は5月下旬に土中で蛹化します。翌年の3月に羽化します。出現は3月ですがフユシャク科の仲間ではないので、オカモトトゲエダシャクの雌は雄と同じに見えます。雌雄の違いは触角に現れ雄は櫛歯状、雌は糸状になっています。幼虫は成虫よりも見つけやすいので、飼育を考えたこともあるのですが、飼育が難しい種類になるようです。夏場や冬の越冬時の管理が難しく、羽化させるためにはかなりの高度な飼育が必要になるようです。
オカモトトゲエダシャク幼虫1.JPGオカモトトゲエダシャク幼虫2.JPG
オカモトトゲエダシャクの幼虫です。エノキにいた終齢幼虫です。広食性で餌とする樹種は多く普通種になりますが、その割には見ない種類の様な気がします。幼虫にはヌメッとした湿った皮膚感があります。直ぐに羽化する種類なら成虫の姿を見たいのですが、成虫になるまでが長く、翌年の3月まで10カ月程も飼育管理する必要があり、飼育に適さない難しい種類になります。運良く成虫を見つけられる事を願うしかありません。幼虫は危険を感じると体の前方を丸めるようにします。さらに落下して死んだふり(擬死)をします。より鳥の糞に見えます。当方の観察地では数の少ない種類になっています。撮影地。神奈川県横浜市、こども自然公園。公園内の発生地は2か所確認していますが、気が付かないだけか個体数が少ないのか、見つける数は少ないです。絶滅は免れてほしいです。
ついでに良く似ているクワトゲエダシャクも調べてみました。
★クワトゲエダシャク シャクガ科エダシャク亜科。開帳39〜41ミリ。成虫はオカモトトゲエダシャクに良く似ています。クワトゲエダシャクの方が褐色が濃く、くすんだ色に見えるそうです。クワトゲエダシャクは極めて数が少ない珍しい種類になります。後脚の脛節には2対の棘があることで、良く似たオカモトトゲエダシャクの成虫と見分けることができます。昔はクワの害虫として知られていた種類でしたが、養蚕の衰退によるクワの減少にも影響を受けて、激減して、現在ではほとんど見つけることができなくなった珍しい種類になってしまったガです。分布は北海道、本州、四国。局地的に生息している種類になります。クワ科のクワ、バラ科のリンゴ、ソメイヨシノ。マメ科のフジで発生が確認されているようです。オカモトトゲエダシャクと同じように蛹で越冬するようです。クワトゲエダシャクは今後も数を減らしそうな貴重な種類になっていきそうです。かなりの珍品種になるので、当方観察地周辺では見ることはないと思います。そもそも餌となるクワがあまりないのでなおさらです。
オカモトトゲエダシャクの成虫を見つけたら追加したいと思っています。
posted by クラマ at 16:40| Comment(0) | 蝶・蛾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

テイカカズラ、オオイタビ。テイカカズラは捻じれた花で良い香りがします。オオイタビは花が咲かないで実がなる植物です。

テイカカズラの様な植物に見たことのない実がなっている。と不思議に思っていたら、葉が良く似ているオオイタビとテイカカズラが混ざり合って生えていた事が分かりました。葉が似ていて葉を良く見比べないと間違ってしまいます。調べてみたら日当たりの良い場所ではテイカカズラの葉は大きくなることが分かりました。葉が大きくなったテイカカズラとオオイタビが混ざっていたのでした。簡単な区別は葉の裏を見ることです。両種の葉を見比べると葉の脈に大きな違いがでます。その差は1目瞭然で、オオイタビの場合、葉裏が灰白色で葉脈が明瞭に浮き出ています。テイカカズラの場合、葉は薄く脈は浮き出ることがありません。実の違いはテイカカズラの場合は実がなるのですが、対になった長細い実です。オオイタビの場合は、葉の付け根にイチジクに似た形の実がなります。混在していたので、当方が葉の違いをよく観察しないで不思議がっていただけなのでした。テイカカズラの花は独特な形で可愛い白い小さな花です。花弁が捻じれたプロペラやスクリューような変わった形に見えます。小さな花を沢山つけて、とても良い芳香を放ちます。テイカカズラには園芸品種も数種類あって、庭木には葉の色を楽しむ園芸品種の方が良く植えられています。春先の新しい葉の色は魅力的です。テイカカズラの花は、良く知られているジャスミンにも似て見えます。あまりなじみのないオオイタビはイチジクの仲間で、関東地方であまり見ることのない植物です。調べてみたら自生は千葉県以西ということで、南方系の暖かい地方の植物でした。当方観察地でもめったに見ない種類です。オオイタビの実は小さい時からしっかりとしいます。オオイタビの実はイチジクと同じく、花嚢といって内部に花が咲く仕組みになっています。オオイタビはイチジク科なので仕組みが同じなのです。実の形は球形から倒卵形をしたビワやイチジクを思わせる形をしています。見つけたのは公園の斜面のグランドカバーとして植えられているものです。混在しているので意識的に両種を混ぜて植えたようです。当観察地ではオオイタビは珍しいです。オオイタビを見つけた公園では、ある時期に枝の剪定をするので実が熟す前には無くなってしまいます。余計に分からなかった訳です。オオイタビはイチジク科の植物なので、イチジクと同様に花は着きません。果物のイチジクと同じように実の内部に花が付きます。花が変わっているテイカカズラとオオイタビを調べてみました。
★テイカカズラ キョウチクトウ科テイカカズラ属の常緑蔓性木本。別名はマサキノカズラ。キョウチクトウ科なので、テイカカズラにも毒がある有毒植物になります。分布は本州、四国、九州。温暖な場所を好み暖地では普通種で、林内や岩場などの岩場、崖地に自生しています。蔓性で這い上がる性質を利用して緑のカーテンとして使われたり、庭木や公園などの斜面にも植栽されています。10メートル以上に伸びあがることがあります。植栽される場合、北海道や沖縄でも利用されています。耐暑性があり丈夫です。葉は対生で革質をした光沢のある楕円形や卵状披針形。十分に日の当たる場所では葉が大きくなり、林床では小さくなります。冬には紅葉します。枝先や葉腋から集散花序を出します。花時期は5〜6月で花には甘い香りがします。花は集散花序で白色で後に淡黄色を帯びてきます。中心部に黄色い部分が見えます。花冠は5裂していて2〜3センチ程。花の特徴は花の裂片ががねじれて平らに開きます。花弁の幅には個体差があります。やや幅の広い花や細くて風車を思わせるような花もあります。果実は対になる袋果で長さは15〜25センチの円柱形をしています。実は付きにくく、花は咲いてもほとんど結実しないようです。花弁や葉の形に個体変異がある植物です。テイカカズラは病害虫に強く密生します。12〜1月頃、テイカカズラの葉は赤く紅葉します。緑色の葉も涼しげで綺麗ですが、紅葉した赤い葉も綺麗です。良く似た植物にケテイカカズラがあります。ケテイカカズラの若枝や葉裏には毛が多く生えています。分かりやすい見分け方は花筒を見比べます。違いはケテイカカズラの場合、花の花筒の太い部分と細い部分の長さがほぼ同等になることで判別することができます。園芸品種にはハツユキカズラやオウゴンカズラがあります。庭木ではテイカカズラよりも新芽の頃に、葉に赤や白い斑入りのあるハツユキカズラを多く見ます。ハツユキカズラの別名はフイリテイカカズラと呼ばれています。ハツユキカズラは日本で生まれた品種になります。オウゴンカズラの葉には黄色が入り、これら園芸品種は花だけでなく葉の美しさを楽しむ植物になっています。テイカカズラは空気中の湿気を好む植物で、乾燥が苦手なようです。乾燥が進むと葉が落ちてしまうようですが、夏場の乾燥以外は十分適応できるようです。1日強い日が当たる場所よりも半日向を好む植物です。増やし方は挿し木が1般的なようです。
テイカカズラ花.JPGテイカカズラ6弁.JPG
テイカカズラの花です。白い色に黄色味を帯びた個性的な花で、とても良い香りがします。個体変異がある植物で、樹によって花びらの太さには細いものもありました。花は捻じれていて形がスクリューやプロペラ、風車に似ていると言われます。気を付けなければいけないことは、ジャスミンに花や香りが似ている事です。テイカカズラは有毒植物になります。下、6枚の6弁に見える珍しいテイカカズラの花を見つけました。普通は5弁に見える5裂ですが6裂しています。このように開き始めの花は幅が広く見えますが、徐々に細長い花弁の花に見えていきます。テイカカズラの花の変異は少ないようですが、花の形には株により個体差があるようです。上の写真は細く見える株、下は幅が広く見える株の花です。このように良く探すと珍しい6弁に見える花も見つけることができるかもしれません。
テイカカズラ2葉と蕾.JPGテイカカズラ葉表1.JPGテイカカズラ葉裏2.JPG
上、葉と蕾。中、葉の表。下、葉の裏。葉は日当たりが良いと大きくなります。若い葉では特に光沢が強く綺麗なツヤのある綺麗な色をしています。日当たりの良くない場所では葉が小さくなります。
ハツユキカズラ.JPGハツユキカズラ花.JPG
上、ハツユキカズラです。キョウチクトウ科テイカカズラ属の斑入りの園芸品種です。葉の色を楽しむ種類で、芽吹きの新芽の頃は、白い色やピンク色をした葉が鮮やかに目立ちます。葉の大きさは小さいです。下はハツユキカズラの花です。白い色で花冠は5裂する5裂花です。平らに開く白い花は可愛いです。花は5裂して咲いたあと細く見える様になるようです。裂片は時間がたつと捻じれて細く見える様になっていくようで、花の形が平たく見える花と、細い風車の様に見える花が咲いています。ハツユキカズラはもともと花付きは悪い種類のようで、花を見て楽しむ種類にはむいていません。ハツユキカズラは剪定されていると花が咲かないことが多いので、花を見たい場合はあまり剪定をしない方が良いです。剪定していない場合、花は沢山付きます。ハツユキカズラを増やしたい場合などは、挿し木で増やすことができます。成長速度が遅いので、寄せ植えなどに使われることが多いです。庭樹として植えられているので見ることが多い植物です。
★オオイタビ クワ科イチジク属の常緑蔓性木本。雌雄異株。葉には厚みがあり、長さは5〜10センチ。幅は3〜5センチ程。全緑で革質。葉柄は長く楕円形から広卵形。葉先は丸みがありやや尖っています。側脈は4対。葉の裏面は灰白色で葉の脈が浮き上がっていて良く目立ちます。葉は互生します。葉は幼木の葉と成木の葉とでは形が違っています。幼木の葉の場合、葉は小さく側脈の角度が大きくなっています。成木の側脈の角度は測ったことはありませんが、主脈から30〜40度で分枝するようです。オオイタビはイチジク科なので果実の内部に花が咲きます。葉腋に花嚢が1個付きます。 花嚢は3〜6センチ程になるようで、球形〜倒卵形をしているようです。花嚢は雌花嚢は食べられるのですが、雄花嚢は食べられないようです。イチジクコバチ科の寄生により雄花のある雄株の実(果嚢)は虫こぶ(ゴール)になるようです。紛らわしいのですが、実の場合は果嚢と呼ぶようです、果嚢は11月頃、熟すと暗紫色になります。とは言え雌雄の実の判別は難しいようです。その上、食べられる実が付くのは少ないようです。分布は本州(千葉県以西)、四国、九州、沖縄。暖地に多く、林縁に自生します。オオイタビは耐暑性が強く、病害虫、乾燥にも強く、刈込にも強い丈夫な種類になります。壁面緑化用に多く使われますが、観葉植物としても利用されています。観葉植物としての使われる場合葉斑入りの園芸品種が多く使われます。この園芸品種はフィカス・プミラと呼ばれ斑入りの種類になりますが、オオイタビは同じく別名としてフィカス・プミラやプミラとも呼ばれています。増やす場合は挿し木で簡単に増えるようです。挿し木の時期は5〜6月が最適のようです。
オオイタビ葉表.JPGオオイタビ葉裏.JPGオオイタビ葉の比較.JPG
オオイタビです。公園に植えられていました。オオイタビの葉の表。表側からも脈が分かります。2枚目、葉の裏。こちらは葉の脈が綺麗に浮き上がって良く目立ちます。葉の色も乳白色をしています。葉柄もやや長いです。下、葉の比較です。葉の大きさには驚くほどの差がでます。
オオイタビ実1.JPGオオイタビ実2.JPG
葉の付け根の葉腋には実のできる部分が付いていて、この部分(花嚢)が大きくなっていきます。上、まだ小さな実です。実は短毛に覆われています。毛は伏毛になっています。下、やや大きくなった実です。花嚢は5〜6センチ程になるようです。残念ながら剪定されてしまうので、まだ当方は成熟した実を見たことがありません。実の雌雄は判別が難しいようです。調べてみないと分からない実、というところでしょうか。観察してみたいです。
posted by クラマ at 16:01| Comment(0) | 自然観察・植物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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