2019年01月30日

ガの幼虫(シャチホコガ科、シャクガ科、ヤママユガ科、ドクガ科)7種類。

ガの幼虫は姿形から気持ち悪がられることが多く、種類によってはかぶれたり、毒を持った種類もいて嫌われる対象になっています。しかし、種類によって面白い形や色があるなど、観察すると面白い昆虫でもあります。見た目の気持ち悪い幼虫では、かえってその姿が気になって名前を知りたくなることもあると思います(当方がそうなので)。そのような方のために役立てば幸いです。ガの幼虫はイモムシ、ケムシ、シャクトリムシなどと、種類による容姿から分類されて呼ばれている個性的な昆虫でもあります。実際に気持ちの悪い形をした種類もいるので、苦手な方はスルーしてください。今回はシャチホコガ科(ツマキシャチホコ、モンクロシャチホコ)、シャクガ科(トビモンオオエダシャク、マエキオエダシャク、ウスバミスジエダシャク)、ヤママユガ科(シンジュサン)、ドクガ科(リンゴドクガ)の7種類の幼虫を紹介します。この中で1番良く知られているのはシャクガの幼虫だと思います。シャクガの幼虫はシャクトリムシと総称で呼ばれていて、細長い体をしたイモムシです。名前の由来は、ものの長さを測る(尺をとる)ような動きをすることからついた名前のようです。シャクトリムシの動きは、細長い体で伸びたり縮んだりを繰り返す動作から、気持ち悪いと気味悪がられることも多いようです。シャチホコガ科の幼虫は、1般的にイメージするイモムシとは異なる奇異な姿をした種類が多いことが知られています。容姿の不気味さではインパクトが強い種類になります。ドクガ科の幼虫には毒を持っている種類がいて、体には毛が生えているケムシです。皮膚のかぶれや炎症を起こすことで注意が必要なケムシになります。ドクガといってもすべての種類が毒を持っているのではなく、1部の種類に毒があるガになります。ヤガ科は種類の多い科になります。1般的にはイモムシ型の幼虫になります。ヤママユガ科は成虫も幼虫も大型です。ヤママユガ科のヤママユは山蚕(やまこ)と呼ばれて、カイコガの様に糸が使われています。
・シャチホコガ科の幼虫、2種類。
★ツマキシャチホコ シャチホコガ科。普通種で成虫の出現は6〜8月。ツマキシャチホコは夜行性で発生は年1化になります。幼虫の体長は50ミリ程。幼虫は集団を作りブナ科コナラ族のクヌギ、アベマキ、コナラ、ミズナラ、ウバメガシ、アラカシなどの葉を餌にします。成虫は地味な色をしていますが、幼虫のインパクトは強烈です。ツマキシャチホコの幼虫は特徴的な配色をしていて、黒地に赤色、オレンジ色、橙褐色などの4本の縞模様があり、とても毒々しく見えます。また体に白く長い毛が密生していて体を覆っている様に見えます。危険に見える長い毛には毒がなく、かぶれることはありません。分布は北海道、本州、四国、九州、対馬。平地から山地まで広く生息していて、都市部の自然公園などでも見かけます。集団が大きいと葉がすっかり食べられて、葉の無い木の枝が見えるコナラやクヌギを見ることがあります。幼虫は集団で群れていますが、終齢になると分散していきます。土中に潜り蛹で越冬します。
ツマキシャチホコ(シャチホコガ科).JPGツマキシャチホコ幼虫9月.JPG
上2枚、 ツマキシャチホコの幼虫です。赤やオレンジ色に見える4本の縞模様の色には集団により個体差があります。目立つ色で敵から身を守る警戒色になっています。ツマキシャチホコの幼虫は個性的な毒々しい色をしているので、覚えやすい種類になります。集団で群れていることが多いので見つけやすいのですが、どこにでもいるという程、個体数は多くないです。林縁や公園のクヌギで見つけることが多いです。
★モンクロシャチホコ シャチホコガ科。幼虫はサクラに多く発生することから、別名サクラケムシやフナガタムシと呼ばれています。成虫の出現は7〜8月の年1化。幼虫は群生します。大きな集団をしばしば形成します。幼虫の体長は50ミリ程で体色は紫がかった黒色をしています。若齢幼虫は赤褐色をしています。体には黄色味を帯びた長い毛が生えていて終齢になるとより目立つようになります。分布は北海道、本州、四国、九州、対馬。幼虫はバラ科サクラ類に多く発生します。ウメ、アンズ、リンゴ、ナシ、スモモ、ビワなどにも発生するので果樹の害虫として嫌われています。終齢になると餌とする樹木は幅広くなるそうです。このモンクロシャチホコの幼虫(ケムシ)は食用にできることが知られてきたようです。何でも美味しいという事らしいです。昆虫食を好む方には定番になってきているようです。サクラに発生したものが香りもよく美味しいそうで、他の樹から発生しているものは好まれないようです。この香りはサクラに含まれる匂いの成分によるものだそうです。モンクロシャチホコの幼虫には毒がなくかぶれる心配は有りません。しかし、どう見ても当方には美味しい食材として見ることはできません。美味しいとされていても、やはり食べる気にはなれません。幼虫が土中に潜り蛹で越冬するようです。
モンクロシャチホコ幼虫(シャチホコガ科).JPG
上、 モンクロシャチホコの幼虫。大発生すると旺盛な食欲と群生することから樹木に大きな被害を与えることがあります。これが食可能とは思えませんが、美味しいということです。サクラを食べるモンクロシャチホコの場合、地面に落ちている糞もサクラに含まれる成分により良い匂いがするそうです。農薬の使用によりイナゴ(バッタ)が激減して流通しなくなっていると聞きました。モンクロシャチホコの場合、公園にサクラがあれば発生している可能性があります。意図的に食べようとすれば簡単に手にはいることから、食材として認知されて採取されることもあるかも知れませんね。奇異な姿をした幼虫で知られるシャチホコガの中では、モンクロシャチホコの幼虫は普通のケムシのような姿をしています。
・シャクガ科の幼虫、3種類。
★トビモンオオエダシャク シャクガ科。幼虫は80〜90ミリ程の大型のシャクトリムシです。幼虫の体色は灰色から褐色をしていて太さもあります。頭部には2本の角状の大きな突起が生えていて、漫画に描いたウサギやネコのような顔にも見えて、とても愛嬌がある大きなシャクトリムシです。動きが気持ちの悪いシャクトリムシの中にあっても、トビモンオオエダシャクの幼虫は探して見たくなる可愛いさがあります。樹の枝にいるときは、見事に枝に擬態しているので見つけるのは難しいです。トビモンオオエダシャクの幼虫は、身を守るために木の枝にそっくりに化けた擬態と、体から寄生した植物の枝の成分(臭い)を体表に持つ2つの方法で身を守っています。成虫は3〜4月。沖縄では12〜3月に発生します。幼虫は4〜9月の発生で年1化。分布は北海道、本州、四国、九州、対馬、屋久島、沖縄。サクラ、ミズキ、クリ、クヌギ、コナラ、リンゴ、ナシ、ツバキなど餌とする広葉樹の樹種は広いです。越冬は土中の蛹で行います。発生は普通は少ない種類になりますが、大型であるため大発生した場合は葉が食い荒らされる深刻な被害が出るようです。
トビモンオオエダシャク幼虫.JPG
トビモンオオエダシャクの幼虫は大きさと太さがあり、かなり迫力のある大型のシャクトリムシですが、顔が可愛いので見る価値はあります。体長もさることながら太さもそこそこにある存在感の大きなシャクトリムシなので、覚えやすい種類になると思います。苦手意識を取り払って顔を覗いてみると面白いと思います。
★マエキオエダシャク シャクガ科。マエキオエダシャクの名前の由来は、成虫の前翅前縁が黄色い色をしていることからついた名前のようです。幼虫は濃褐色、灰褐色をしていて灰白色の筋模様があり、胴の部分が極端に太くなっている変わった体つきをしています。幼虫の体長は25〜26ミリ程。分布は本州、四国、九州、対馬、屋久島、沖縄。幼虫はモチノキ科のイヌツゲ、ソヨゴ、クロガネモチ、アオハダ等、ニレ科のケヤキを餌にするのでこれらの樹木がある樹林、林縁、自然公園、神社、庭木などに生息しています。成虫は年2回の発生で4月、6〜8月に出現。4月に出現する個体は蛹で越冬した個体になります。夜行性で灯火に良く飛来します。普通種で数が多い種類になります。幼虫は独特の形をしています。頭部に近い胴の1部が大きく膨れ上がっていてヘビの顔にも見えます。膨らんでいる部分の頭側には丸い斑紋があり、これが目に見えることからヘビを連想する人は多いと思います。尾部は扇形に広がって見え、ザリガニの尻尾の先端のような形に見えます。マエキオエダシャクの幼虫は、小さくてもヘビに擬態して身を守っているようです。迫力のある奇異な姿には1見の価値があると思います。幼虫の体色は黒褐色、褐色、灰褐色、灰色など地色に個体差があり、体の模様にも個体差があります。体には灰白色の筋があります。マエキオエダシャクの幼虫は5〜6月、8〜9月に幼虫の食害があり、庭木の被害が出ることがあります。
マエキオエダシャク幼虫(シャクガ科).JPGマエキオエダシャク幼虫2.JPG
上2枚、マエキオエダシャクの幼虫です。幼虫は前方向から見ると、よりヘビに似て見えます。小型の幼虫なので人間がびっくりするほどではないのですが、天敵となる他の動物や昆虫には擬態としての効果は大きいと思います。個体により体表の地色は違っていますが、特異な体形から名前を知ることが容易なイモムシです。普通に垣根などに使われるイヌツゲに寄生するので、見つけることは簡単な部類の種類になると思います。
★ウスバミスジエダシャク シャクガ科。ウスバミスジエダシャクは夜行性で灯火にも飛来します。越冬は幼虫で越冬します。幼虫の体長は35〜45ミリ。分布は北海道、本州、四国、九州、対馬、屋久島。幼虫はヤナギ科、ブナ科、ニレ科、クワ科、ヒノキ科、バラ科、マメ科、カバノキ科、クルミ科など幅広く広葉樹を餌にします。餌となる樹種も多いので普通に見ることができる個体数の多い種類です。成虫は年2化(成虫は5〜6月、7〜9月に出現)成虫はオオバナミガタエダシャクと非常に良く似ていて判別が難しいです。ウスバミスジエダシャクの方がサイズは小さいのですが、良く似ているので見た目は同じように見えてしまいます。ウスバミスジエダシャクは幼虫もオオバナミガタエダシャクと似ていますが、背面にあるコブに見える部分がウスバミスジエダシャクの方が小さく見えるようです。
ウスバミスジエダシャク幼虫.JPG
ウスバミスジエダシャクの幼虫で良いと思います。良く似ているオオバナミガタエダシャクの幼虫の方が背面に見える突起が大きくなるようです。成虫も大変良く似ているのですが幼虫だとさらに分かりにくいです。幼虫は写真で見た通り、樹の小枝にそっくりに見える見事な擬態になっています。
・ヤママユガ科の幼虫、1種類。
★シンジュサン ヤママユガ科。シンジュサンはヤママユガ科で沖縄のヨナグニサン(開帳130〜140ミリ)に次いで2番目に大きなガです。シンジュサンの成虫は開帳が110〜140ミリもある大型のガで灯火に飛来します。幼虫の体長は50〜60ミリ。淡い青緑色で短い棘のような突起が体表に並んでいます。大きさ(太さ)があり、見つけると驚いてしまうとおもいますが、淡い青緑色の体は綺麗です。ズングリとしていて太さのある幼虫です。体表には棘に見える突起が沢山ついています。分布は北海道、本州、四国、九州、沖縄。北海道と対馬以外は亜種とされています。成虫は5〜6月、8〜9月に出現します(暖地では年2化)。北海道産は数が少なく発生も局地的になるようです。ニガキ科のニワウルシ(別名ニガキ)、シンジュ。ミカン科のキハダ。ブナ科のクヌギ。(当方コナラで発見しています)。エゴノキ科のエゴノキ。クスノキ科のクスノキ。バラ科のリンゴ、ナシ。モクセイ科のモクセイ、ネズミモチ。モチノキ科クロガネモチなども餌にする広食性です。越冬は葉を巻いて蛹で越冬します。
ヤママユガ科シンジュサン.JPG
上、クヌギ科のコナラにいたシンジュサンの幼虫です。幼虫は個性的なので覚えやすいです。綺麗な体色をしています。当方、まだ成虫は見たことがありません。成虫も幼虫も見つけてみたくなるガです。食性は広いものの個体数は減っているようです。
・ドクガ科の幼虫、1種類。名前からは危険なイメージを連想するのですが、毒針毛のない(毒の無い)ドクガの幼虫の方が多いです。
★リンゴドクガ ドクガ科。幼虫の体長は30〜40ミリ。成虫は4〜5月。7〜8月の年2化。分布は北海道、本州、四国、九州、対馬、屋久島。リンゴドクガは見た目は危険そうに見えるドクガ科のケムシですが、毒針毛がない無毒のガです。成虫にも毒はありません。ドクガ科に属するガに全て毒があるわけではありません。リンゴドクガの幼虫はドクガといっても綺麗で毒の無いガになります。リンゴやナシ、クリなどの果樹等の葉を食べるので、果樹の害虫として嫌われています。幼虫はクリ、クヌギ、アベマキ、コナラ、リンゴ、ナシ、サクラ、カエデ、ヤナギなどの広葉樹の葉を食べます。食樹の幅も分布域も広いので普通種になります。綺麗な黄色い棘状の長い毛のリンゴドクガを良く見ますが、幼虫の体色には変異があります。黄色系の他に白い毛の白系や赤系がいるようです。当方は黄色い毛の幼虫しかまだ見ていません。鮮やかな黄色の毛で覆われたリンゴドクガのケムシは1見の価値があると思えるほど綺麗です。尾端には赤い毛束があります。リンゴドクガは蛹で越冬します。
リンゴドクガ幼虫.JPG
上、リンゴドクガの幼虫です。黄色い毛を持つ個体です。ドクガと名前がついていても、1見危険に見える長い毛には毒はありません。幼虫の体色には個体差があり綺麗な色をしているケムシです。個体差による違った色の幼虫を探すのも面白いと思います。ご覧のように綺麗な色をしたケムシなので、見慣れてくると気持ち悪さよりも可愛く見えて来るから不思議です。毛の色の違う幼虫も探してみたくなります。
ガの幼虫も綺麗なものや変わった形に見えるものもいて、苦手意識がなくなってくると観察が面白くなる昆虫です。
posted by クラマ at 16:29| Comment(0) | 蝶・蛾 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする