テントウムシは似た種類が多い個性豊かな愛嬌のある昆虫です。テントウムシはテントウムシ科の昆虫の総称で、まとめてテントウムシと呼ばれています。小さくて丸くて模様の可愛い昆虫と言うイメージを持つ人が多いと思います。半球形をした面白い形から、昆虫が苦手な人でもひどく嫌われることが少ない昆虫になると思います。1般的に見て可愛いイメージがある好感の持てる昆虫で、昆虫の中の人気度ランキングを作ったら、上位に位置するのではないかと思います。テントウムシは、いざ探してみると種類が多いことに気が付きます。色々な種類のテントウムシを探すのも面白いです。テントウムシはアブラムシ類、キジラミ類、カイガラムシ類を食べる肉食性と、植物の葉を食べる草食性がいます。キイロテントウはウドンコ病の菌類を食べます。肉食性のテントウムシは害虫を食べる益虫として喜ばれます。ウドンコ病菌類を食べるキイロテントウも益虫として役に立っています。畑や菜園の野菜類の葉を食べる種類のテントウムシは、厄介な害虫として嫌われています。テントウムシの特徴として、身を守るために臭い体液を出すことも知られているので、臭い虫として嫌われることもあります。この臭い匂いのする黄色い液体は、とても苦い味をしていて、アルカロイドを成分としています。これは鳥に食べられない様にしているテントウムシの防御方法になります。1度不味いテントウムシを食べた鳥は学習して、2度と不味いテントウムシを食べようとしなくなるということです。鳥がまずいと感じるとは驚きですね。赤や黄色のテントウムシの持つ警戒色もここで最大限に発揮されてくることになるのです。鳥に対して視覚的にも忘れないような効果が生かされるという訳です。このことから、テントウムシの仲間は鳥などの動物、他の昆虫に捕捉されない外敵の少ない昆虫になっています。テントウムシは昼行性で成虫で越冬する昆虫になります。ナミテントウは集団で建物の壁などに集まることがあります。子供の頃は数百匹と言う集団も見たことがありますが、現在では大きな集団は見ることが無くなってきました。集団で越冬する種類で建物に侵入する種類のテントウムシは、不快害虫として嫌われてしまいます。成虫は丸味のある愛嬌を感じる体付きをしていますが、この半球形をした成虫に対して、幼虫は長細く体に棘を生やしたものなどがいて、この幼虫からテントウムシの成虫になると思うと、何とも不思議な感じを受けると思います。
食性としてテントウムシの仲間にはアブラムシやキジラミを食べる種類、ウドンコ病菌を食べる種類などが益虫として役に立っていることから、今後、テントウムシを使って、薬品を使わない防虫防カビをしてくれる環境にやさしいメリットが生かされていくと思います。実際に千葉大学でテントウムシの上翅(鞘翅)の会合部にテントウムシに害を与えない樹脂で接着して、飛んで逃げないようにして肉食性のテントウムシに餌として発生したアブラムシを食べさせてイチゴの苗等を守る研究をしているとテレビのニュースで放映していました。テントウムシに配慮して、接着に使う樹脂もある1定の期間で剥がれるようになっていると説明がされていました。逃げ出したところで害のない、大食漢の肉食性のテントウムシを使った害虫退治、駆除には、自然環境にも優しいとても良い方法だと思います。
似たいる種類の多いテントウムシの中でも特に難解なのは、植物を餌にするニジュウヤホシテントウ、オオニジュウヤホシテントウ、ヤマトアザミテントウ、ルイヨウマダラテントウ、トホシテントウです。どれもよく似ていて間違い探しを探すように違いを見つけて判断しなくてはいけなくなります。個体変異で28個以下の星の数(斑紋)になるものもいるそうです。よく目にする種類としては畑や家庭菜園にいるニジュウヤホシテンやオオニジュウヤホシテントウになると思います。幼虫も似ていてどちらの幼虫も鋭そうな1見危険に見える刺(刺毛)を体に密生しています。このテントウムシの幼虫の棘には毒は無く、かぶれたり、刺さることはありません。見た目から感じるような危険性の無い幼虫になります。ナミテントウにも星(斑紋)の数が多い個体がいますが、星(斑紋)の数が多く植物の葉を食べる害虫テントウムシを別名テントウムシダマシと呼ぶことがあります。主にニジュウヤホシテン、オオニジュウヤホシテントウがテントウムシダマシと呼ばれています。詳しく種類を調べようと思ったら訳が分からなくなりそうです。種類を判別したかったら、たかがテントウムシとあなどらないで、色々な角度から写真を撮っておくと良いと思います。
・ナミテントウ、ナナホシテントウは当ブログ「ナミテントウ、ナナホシテントウ。最も知られているテントウムシです。」でも紹介していて、2度目の登場になります。ナミテントウの斑紋の違うタイプも数種類、新たに追加したので、こちらも参考にしてみてください。
テントウムシの中でも良く知られているナナホシテントウは個体数の多い普通種で、ナミテントウと共に良く目にする種類になります。
植物を食べるテントウムシ。5種類(ヤマトアザミテントウ、ルイヨウマダラテントウ、ニジュウヤホシテントウ、オオニジュウヤホシテントウ、トホシテントウ)。草食性のテントウムシは似たものが多く、星(斑紋)の数も同じ種類などがいて見分けることが難しくなります。体には微毛があり、体色はくすんで見えます。ナナホシテントウなどの肉食性のテントウムシのような光沢はありません。
肉食性のテントウムシ。7種類(キイロテントウ、シロジュウシホシテントウ、ナミテントウ、ナナホシテントウ、ダンダラテントウ、ヒメアカホシテントウ、ヒメカメノコテントウ)を調べてみました。
・植物を食べるテントウムシの種類。
★ヤマトアザミテントウ 名前にあるようにアザミ類を餌にするテントウムシです。背中に見える斑紋(星)の数は多く28個あります。食べる食草がはっきりしている場合、良く似た種類との判別が簡単に分かります。体長は6〜9ミリ。出現は4〜10月。年1化。越冬は成虫で越冬。分布は北海道、本州(本州中部)。山地に多く生息しています。ヤマトアザミテントウは長野県では準絶滅危惧種になっています。 ルイヨウマダラテントウ、オオニジュウヤホシテントウとよく似ています。特にルイヨウマダラテントウとは酷似しています。ヤマトアザミテントウの特徴は、オオニジュウヤホシテントウよりも斑紋は大きく、上翅前縁側の斑紋は会合部で繋がり、大きな斑紋になっています。腿節は両端が飴色で広い部分が黒色をしています。腹部(腹面)は黒い部分が多く、ほぼ黒く見えるそうです。北海道にはエゾアザミテントウと言う種類もいて、当方には詳しい違いは分かりません。ヤマトアザミテントウとルイヨウマダラテントウは食草の違いから生活圏を分けているようで、両種の雑種を避ける知恵にもなっているようです。似た種類では斑紋の数まで同じになるものもいて、斑紋の数での見分けはできません。
上はヤマトアザミテントウです(写真は同1個体)。アザミが近くにある草原にいました。下で紹介するルイヨウマダラテントウとそっくりで、識別が大変困難な種類です。下のルイヨウマダラテントウと写真を見比べると若干の差があるように見えますが、外見での正確な識別は困難の様です。撮影地。神奈川県横浜市旭区。
★ルイヨウマダラテントウ 体長は6・5〜7・5ミリ程。ルイヨウマダラテントウの体にはツヤがあり地色が濃く、餌とする作物は成虫、幼虫共にナスやジャガイモ、トマトの葉などをを食害するので、畑の害虫として嫌われています。背中に見える斑紋(星)の数が多く28個あります。出現は4〜10月。分布は北海道、本州(東京から関東地方北部に多い)。神奈川県では普通種です。ルイヨウマダラテントウにも細かい分類があって大変難しいようです。神奈川県にはルイヨウマダラテントウ東京西郊型エピラクナと言うのがいます。この種は食性を変えて害虫化したようです。分布は関東地方南部から東海地方になるようです。ルイヨウマダラテントウの脚の腿節は黒い色をしています。紛らわしいことに、特徴もよく似た種類にヤマトアザミテントウがいます。外見では判別できないほど良く似ています。ヤマトアザミテントウの分布は北海道、本州で、ヤマトアザミテントウの特徴は脚の腿節が両端を除き黒い色をしていることですが、ルイヨウマダラテントウとヤマトアザミテントウの体の特徴は非常によく似ていて、外見的な判別は不可能に近いのではないのかと思います。食性に違いがあるので、餌とする植物の違い(食性)で判断することが簡単な方法の1つになります。ルイヨウマダラテントウの地色は濃く光沢があります。オオニジュウヤホシテントウモよく似ていますが、短毛が多いのでルイヨウマダラテントウの様に光沢はありません。間違いやすい種類が多いので、じっくりと観察しないといけない種類になってしまいます。越冬は成虫で越冬。
ルイヨウマダラテントウは地域個体群により食べる植物が違うなど、詳しい分類は分かりません。難解なテントウムシです。食べる植物が違うなどから細かい分類がされるかと思います。
上、ルイヨウマダラテントウ東京西郊型エピラクナと思われる個体です。近くの菜園では普通に見られる種類です。上2枚(1枚目、2枚目)は同じ個体です。ジャガイモの葉を食べていました。2枚目は脚の色を見やすくしたものです。3、4枚目は別個体の2枚です。裏側(腹面)は黒く見えます。下2枚(別個体)最初の2枚とは若干、地色の色が違って見えます。地色の濃淡は普通にあるようです。撮影地。神奈川県横浜市南本宿第三公園。
★ニジュウヤホシテントウ 体長は6〜7ミリ程。出現は4〜10月。発生は年2~3回のようです。分布は本州(関東以南)、四国、九州、沖縄。ニジュウヤホシテントウの特徴は背中に見える斑紋(星)の数が多く28個あります。名前の由来にもなっている特徴ですが、個体変異により斑紋(星)の数が少ないこともあります。腿節には黒い紋が無く、体色は黄褐色〜赤褐色をしています。上翅の斑紋は小さく、灰色〜灰黄色の短毛が密生しています。前胸に見える黒い斑紋は横長に見えます。オオニジュウヤホシテントウによく似ていますがやや小さい体をしています。斑紋の大きさはオオニジュウヤホシテントウよりもニジュウヤホシテントウの方が小さくなります。神奈川県では良く見る普通種です。ニジュウヤホシテントウは成虫、幼虫共にナスやジャガイモの葉を食べる害虫として有名で、畑の嫌われ者のテントウムシです。ナス科の植物に大被害を与える昆虫として有名な害虫です。ニジュウヤホシテントウは年平均気温14度を境目にしてオオニジュウヤホシテントウとすみ分けているそうです。個体数は関東南部より南に多い種類になります。生態や色や形もオオニジュウヤホシテントウとよく似ています。成長が早く、卵(産卵)から35〜40日程で成虫になります。幼虫は白い体で基部が白く先端部は黒い色をした刺(刺毛)が生えています。この枝分かれした鋭そうに見える棘は柔らかく、毒はないので痛みを感じたり、かぶれることはありません。越冬は成虫で越冬します。
・同じ28個の星(斑紋)のあるニジュウヤホシテントウと オオニジュウヤホシテントウの見分け方。
ニジュウヤホシテントウの前胸に見える黒斑が横長に見えるのに対して、オオニジュウヤホシテントウの前胸の黒斑は縦長で目立ちます。ニジュウヤホシテントウの脚の腿節には黒い紋がありません。大きさはオオニジュウヤホシテントウの方がやや大きくなります。住み分けではオオニジュウヤホシテントウは関東地方以南では高地に、ニジュウヤホシテントウは平地に生息しています。斑紋の大きさはニジュウヤホシテントウの方が小さくなります。
ニジュウヤホシテントウです。上2枚を比べると、やはり若干の地色の濃淡があります。斑紋の並び方に特徴が出ます。下は腹面です。脚が黄色く見える特徴があります。菜園のジャガイモの葉を食べていました。
★オオニジュウヤホシテントウ 体長は6・5〜8ミリ程で体色は黄褐色〜赤褐色。特徴は背中に見える星(斑紋)の数が多く28個。斑紋の大きさはニジュウヤホシテントウよりも大きくなっています。この特徴と斑紋の数が名前の由来にもなっています。灰黄色の短毛で覆われていて、斑紋が大きいのでニジュウヤホシテントウよりも黒っぽく見え、地色の赤味は強いです。前胸に見える黒い斑紋は縦長になっています。出現は4〜9月。発生は年1〜2回のようです。分布は北海道、本州、四国、九州。ニジュウヤホシテントウとの違いは脚と斑紋の大きさに違いが出ます。オオニジュウヤホシテントウの場合、腿節に黒い紋が見えます。斑紋の大きさはニジュウヤホシテントウよりも大きくなります。オオニジュウヤホシテントウはナス、ジャガイモ、トマト、ピーマンなどナス科の葉を食べる害虫テントウムシです。ウリ科にも発生しますが、特にナスやジャガイモに大被害を与えることで有名な害虫になっています。オオニジュウヤホシテントウは年平均気温14度を境目にしてニジュウヤホシテントウとすみ分けをしています。南方に住むオオニジュウヤホシテントウは標高の高い所に生息しています。個体数は北方に多い種類になります。成長が早く、卵から35〜40日程で成虫になります。幼虫は黄色い体で黒い棘(刺毛)が生えています。越冬は成虫で越冬しますが、幼虫でも越冬するようです。
★トホシテントウ 体長は6〜9ミリ。トホシテントウの特徴は名前にあるように斑紋(星)の数は10個で、体表面には細かい微毛が生えています。そのことから体色にはツヤがありません。トホシテントウの斑紋は大きいです。出現は6〜9月。分布は北海道、本州、四国、九州。林縁や林に生息しています。トホシテントウは草食性のテントウムシです。餌はウリ科のカラスウリ類(カラスウリ、スズメウリ、アマチャズル等)の葉を食べます。特にカラスウリでの発生が多いようです。稀に畑のウリ科植物に付くようですが、畑の害虫として知られていないので発生は少ないようです。幼虫は橙色の体に黒い棘が生えています。越冬幼虫は5月頃に蛹にな羽化は6月。年2回の発生をします。越冬は主に幼虫で越冬しますが、少ないながらも成虫でも越冬する個体もいるようです。
・肉食性のテントウムシの種類。
★キイロテントウ 体長は3.5〜5ミリ程の小型ですがツヤのある黄色い体が綺麗なテントウムシです。キイロテントウの特徴は名前のように、上翅には斑紋が無くツヤのある鮮やかな黄色1色のテントウムシで分かりやすい種類になります。胸部(前胸部)と顔は白い色をしていて上翅(鞘翅)には黒い斑紋が1対ありますが、目の色も黒いので頭部も見えると4個の斑紋がある様に見えます。脚の色も薄い黄色をしています。出現は4〜11月。分布は北海道、本州、四国、九州、沖縄。樹木の葉にいる所を良く見かけます。餌としてキイロテントウは成虫、幼虫共に葉に発生したウドンコ病菌(ウドンコカビ科)を食べるテントウムシで、植物の病原菌を食べる益虫として貴重です。普通種で低地から山地、市街地にも生息しています。幼虫も黄色い体をしていて、マダラに黒い斑紋が並んで見えます。ナミテントウやナナホシテントウなどはキイロテントウよりも大きいので分かりやすいのですが、単に黄色い色をしたテントウムシと覚えてしまうと蛹から成虫になったばかりのテントウムシは黄色い色をしているので間違ってしまいそうです。キイロテントウは小さくても鮮やかな黄色をしていて、とても綺麗です。もっと大型のテントウムシだったら人気が出たと思います。
ウドンコ病は ウドンコカビ科の菌類が原因で発生します。キュウリ、トマト、ナスなどの野菜やクワ、ブドウ、バラなどの樹木など植物に広く発生します。キイロテントウの餌としては豊富なのですが、
殺虫剤等、農薬に弱いので、菜園などでは見つけにくい種類になっています。
キイロテントウは黄色くて可愛いテントウムシです。名前にあるように鮮やかな光沢のある黄色い色をしたテントウムシです。キイロテントウは普通種で割と見つけることができる種類ですが、群生するなど大量にいる所は見たことがありません。餌が豊富な場合、餌となるウドンコ病が発生中の樹に、沢山いるのかどうか観察してみたいところです。写真は別個体。撮影地。神奈川県横浜市南本宿第三公園。
★シロジュウシホシテントウ 光沢があって綺麗なテントウムシです。上翅(鞘翅)に14個の白い斑紋があるテントウムシです。個体変異のある種類で、基本種では紋の数は14個になります。この特徴がシロジュウシホシテントウの名前の由来にもなっています。この斑紋は綺麗な形の紋ではなく、紋の外縁はぼやけています。体長4.5〜6ミリ程。出現は4〜10月。分布は北海道、本州、四国、九州。林縁や自然公園の背の低い樹で見かけます。肉食性でキジラミ類を食べるそうです。背の低い樹木で見かけることが多いです。基本種(普通型)のオレンジ色(黄褐色)の地色にも濃淡があるなど、個体変異があり、黒い体色に白い白斑の個体(暗色型)や、黒い12個の斑紋のある地色が淡紅色の個体(紅型)も出るようです。シロジュウシホシテントウの型は3型あることになります。基本種ではないと斑紋(星)の数も違っているので、実際に変異種を見つけると、これは何の種類だろうと迷ってしまいそうです。成虫で越冬します。
よく似たシロホシテントウの斑紋は12個。ムーアシロホシテントウの場合は前胸背板の斑紋の数がシロジュウシホシテントウと違い4個の白い小さな斑紋が並んでいます。
上、シロジュウシホシテントウです。なかなか見つけられないでいます。個体数は少ない方かも知れません。白い斑紋が可愛いテントウムシです。
★ナミテントウ 体長4.7〜8.2ミリ。ナミテントウは体色や斑紋に個体差が多い種類です。出現は3〜11月。分布は北海道、本州、四国、九州、沖縄。成虫、幼虫共にキジラミ、アブラムシ、カイガラムシを食べます。木に沢山発生したアブラムシも食べつくしてしまうほど食欲が旺盛です。草の葉や花よりもアブラムシ等が発生している樹木で多く見かけます。数の多い普通種で高い樹を好むテントウムシになるようです。ナミテントウは体色と斑紋に実に多くのバリエーションがあることでも知られています。そのことから似た種類がいて、ナミテントウとダンダラテントウにはよく似た模様をしたものがいます。両種は共に個体差があって斑紋の数や形に多くのバリエーションがある面白いテントウムシです。色や斑紋の形、数などが違う個体が集まっていると同じ種類とは思えない位です。ナミテントウとダンダラテントウを区別する大きな違いは触角の先端に現れます。触角の形状の違いを覚えておくと似た斑紋の個体がいても判別することができます。特にナミテントウは普通種で数も多く、地色の違いと個性豊かな斑紋の形や数の違う個体がいる事から、探すことが面白くなってくるテントウムシです。ごく普通に見られる種類なので、斑紋(模様)の違うペアのテントウムシがいたらナミテントウの可能性が強いです。
・ナミテントウとダンダラテントウの見分け方。
ナミテントウの触角の特徴は先端部が太くなっていて丸味を帯びています。ナミテントウの触角は長めで、よく似たダンダラテントウの触角の先端は尖っていて、ナミテントウの触角よりも細長く見えます。触角の長さもナミテントウの方が長く、ダンダラテントウの触角の方が短くなっています。色や斑紋が似ていてどちらか分からなくなった場合、触角の先端部をデジカメ等で撮影するなどして確認すると良いでしょう。
ナミテントウは実に色々な斑紋があるお洒落なテントウムシです。雄と雌がペアになっていても同じ種類とは思えないペアもいて、見つけることが大変面白くなるテントウムシです。1番下はナミテントウの幼虫です。
★ナナホシテントウ 体長は7〜9ミリ。出現は3〜11月。分布は北海道、本州、四国、九州、沖縄。草花の上で良く見かける種類になります。ナナホシテントウの特徴は、ツヤのある体に名前の通りに7個の斑紋(星)があることです。翅の基部(頭部に近い部分)の翅の会合部上にある黒斑は左右が合わさって1つの斑紋になっています。またこの斑紋の頭部側にはわずかに黄白色の斑紋があります。この黄白色の部分の形や大きさには僅かに変異があります。地色は赤色〜橙色で黒い斑紋の形にも変異があります。最も良く見かける個体は赤い地色をしたナナホシテントウになります。ナナホシテントウはナミテントウと共に良く知られた代表的なテントウムシになります。個人的にはナナホシテントウの星の数(斑紋)が7個だとバランスよく見えると思っています。草の根元などに潜って成虫で越冬します。暖かい日には動くことがあり、まだ寒い時期でも見ることがあります。
ナナホシテントウです。皆様ご存知の有名なテントウムシです。上はアブラムシを食べている所です。下は頭胸部を拡大したところです。鞘翅の上部に見える白い色の部分は、個体差によりあまり目立たないものと良く目立つものがいます。地色にも個体差がでます。
★ダンダラテントウ 体長は4〜7ミリ。出現は3〜11月。普通種で良く見かけることができます。神奈川県で見かけるダンダラテントウは黒い部分が多い個体も多くいて、小さくて地味なテントウムシと言うイメージが個人的には強いです。分布は本州、四国、九州、沖縄。餌は成虫、幼虫共にアブラムシを食べる肉食性のテントウムシです。よく似たナミテントウと比べると、ダンダラテントウの触角は先端が細くみえ、先端部の膨らみは弱い特徴があります。触角は赤褐色でナミテントウよりも短いです。また上翅の外縁は反り返っています。斑紋の形や数には個体差が多くあります。体色は北に行くほど地色の黒い部分が多くなり、黒いテントウムシに見え、南に行くほど斑紋の部分の赤い部分が広くなって、赤色が目立つという変わった特徴があります。観察エリアが神奈川県なので、見つけるものの体色はほぼ黒く、赤い部分(斑紋)がとても少ない個体も多いです。黒く見える個体でも、頭部側には赤い部分がわずかに見えていることが多いです。このように地色は真っ黒くなることは珍しいのですが、極、稀に黒い個体(黒型)のダンダラテントウもいるそうです。ダンダラテントウは北に行くほど黒い個体、南に行くほど赤い部分が多い個体になる特徴があるので、両極の地域の個体を観察できたら面白いと思います。斑紋には個体差が多いので、肉眼では確認しにくいのですが、ダンダラテントウの特徴にある反り返っている上翅の外縁部を確認すると他種との比較ができます。
ダンダラテントウです。上の個体では斑紋の赤色が見えます。中、この個体は斑紋の色は黄色味がかかっています。この斑紋の色には個体差が出ます。下は赤い色の部分が少なく黒く見える個体です。
★ヒメアカホシテントウ(別名ヒメアカボシテントウ) 体長3.5〜5ミリ程。小型で頭部は似た他種よりも盛り上がりがなく胴に潜って見えます。出現は4〜11月。分布は北海道、本州、四国、九州。低地から山地、都市部でも見られる普通種になるのですが、小さくて見つけにくいためなのか思ったよりも見かけません。どうやら数は多くないようです。特徴は黒いツヤのある体に1対の赤色や黄褐色の斑紋がある小型のテントウムシです。斑紋は小さくて体の中央に位置して見えます。越冬は単独で樹皮の裏などで越冬します。ヒメアカホシテントウは小さくても肉食性で、成虫、幼虫共にクワカイガラムシなどのカイガラムシ類を餌にします。クワ、モモ、アンズ、ウメ、マサキなどに付くカイガラムシ類を好むようです。餌が確保できると移動しないようです。
似たテントウムシとの比較。
ナミテントウの2紋型に似ていますが、ヒメアカホシテントウの2個の斑紋は小さく、中央に位置して見えることに対して、よく似たナミテントウの2紋型を比べると、ナミテントウの斑紋は大きく、斑紋の位置も前より(頭側側)になります。大きさもナミテントウの方がはるかに大きいことと、頭部には丸みがあってナミテントウのように頭が突き出て見えません。この特徴を比較すると簡単に判別することができます。ヒメアカホシテントウの大きさと体つきからはフタホシテントウ(体長は2・5〜3ミリ程。体格は上から見ると楕円形に見えます。1対の斑紋は中央より尾部側にあります)、アカホシテントウ(体長は6ミリで頭部は盛り上がって突出して見えます)が良く似ています。
上、ヒメアカホシテントウは小さなテントウムシです。ヒメアカホシテントウの斑紋は小さく、上から見ると頭部は隆起して見えません。小さくて分かりずらいのですが平らに見えます。
★ヒメカメノコテントウ 体長は3・5〜5ミリ程の小型のテントウムシ。ヒメカメノコテントウは斑紋や地色に変異が多い種類になります。基本型(亀甲紋があるタイプ)、セスジ型(翅の会合部に黒い縦筋が見える個体)、全体が黒い黒化型などのヒメカメノコテントウモいます。色彩等に個体差がある小型のテントウムシです。成虫、幼虫共にアブラムシ類、キジラミ類を食べる肉食性のテントウムシです出現は3〜11月。分布は北海道、本州、四国、九州、沖縄。普通種で草地、畑、庭、花壇などで見かけます。成虫で越冬します。ヒメカメノコテントウの鞘翅(上翅)の色や斑紋には変異が多いものの、頭部(触角の付け根)は黒く、白く見える3角形紋が対に見えます。この紋はつながっている個体もいます。胸部外縁も白く縁どられています。カメノコテントウ(体長は11〜13ミリと大型)に似た模様のものがいますが、体の大きさと頭部、胸部の斑紋の違いで見分けることができます。よく似た柄でも大きさだけ見てもカメノコテントウの半分ほどですので、大きさを覚えておくと間違えることはないと思います。変異の多い種類なので、ヒメカメノコテントウも探すと面白いと思います。カメノコテントウはオニグルミの葉につくクルミハムシを餌にすることから、当方はまだ見たことがありません。近くにオニグルミの樹もないので、機会があったら見て見たい種類になっています。
ヒメカメノコテントウです。ヒメカメノコテントウは基本型と呼ばれる亀甲紋が可愛いテントウムシです。このテントウムシも色の違いが面白いです。下の写真は黒化型と基本型(白と黒)のペアです。下にいる黒化型が雌です。黒化型は上2枚と同じ種類に思えない黒い色をしています。ヒメカメノコテントウの黒化型になると、単独でいると特徴になっている亀甲紋が見えないので、種類の判別は難しくなってしまいます。雌雄の判別も、テントウムシはペアになっていると雌雄が分かりますが、単独でいると外見では判別ができません。大きさの違いにも個体差が出るので難しいです。
今回写真を紹介できなかった種類は、同じように見えてしまうかも知れませんが、撮影できたら追加したいと思っています。