スイバやギシギシは食べられる山野草として、山菜としても利用されますが、蓚酸を多く含んでいる事から、茹でてから水にさらすなどして、食用とすることが多いようです。当方の持っている食べられる山野草の本によると、独特の酸っぱさを好んで、塩に付けた1夜漬けも美味しいと記されています。食用には本来は在来種のギシギシ、スイバが利用されます。スイバはヨーロッパではソレルと呼ばれて栽培種(フレンチソレルと言うらしい)が葉菜として食用に利用にされている植物です。スイバには食べると酸っぱく感じる酸味の強い特徴があります。スイバ(酸葉)とは酸っぱい葉から来た名前のようです。スイバとギシギシの見分け方として、スイバとギシギシは似ているのですが、花茎が立つ前のスイバの葉の基部は矢じり型をしていることで、スイバとギシギシを見分けることができます。またスイバでは、花茎が伸びてくると上部の葉には茎(葉柄)が無いので、葉の基部が茎を抱いています。春先のスイバの容姿はホウレンソウにも似ています。ヨーロッパ原産の外来種のナガバギシギシはギシギシとよく似ていますが、葉の縁が著しく波打つ特徴があります。ギシギシと交雑していて両種の雑種が非常に多いようです。在来種のギシギシはほとんど見かけなくなっているようです。ナガバギシギシを食用とするのかは不明です。また、エゾノギシギシも食用にするとは聞いたことがありません。毒は無いようなのですが(蓚酸は含んでいる)通例不食になっているようです。そのうちに食べられる山野草のプロの方が、安全性を確認して食べ方等の本を出すかもしれませんが、良く分からないうちは食すのはやめておいた方が無難だと思います。
コガタルリハムシは、人間には生で食べすぎると害が出る蓚酸を多く含んでいるギシギシやスイバを食べる昆虫で、変わり者の部類に入る昆虫のようです。それゆえ雑草としても知られるスイバやギシギシ類を餌にすることで、他の昆虫との餌の取り合いになるというデメリットは少なくなるようです。他にギシギシやスイバを餌にする昆虫には、シジミチョウ科のベニシジミがいます。コガタルリハムシはギシギシやスイバを食べつくすほどの食欲により、農薬を使わないで雑草としてのギシギシ類やスイバを防除してくれる昆虫としても注目されているようです。
コガタルリハムシとエゾノギシギシを調べてみました。
★コガタルリハムシ 別名ギシギシハムシ。ハムシ科。体長は5〜6ミリ程。出現は3〜11月の年1化。分布は本州、四国、九州。平地から山地のタデ科の植物がある林縁、草原、牧地、荒れ地などにいます。普通種ですが生息は局地的になると思われています。ギシギシ類、タデ類に発生するハムシです。成虫、幼虫共にギシギシなどタデ類の葉を餌にします。スイバにも発生していますが、名前についているように、主にギシギシを好んで発生するハムシです。タデ科のダイオウにも発生してダイオウの害虫にもなっています。成虫は光沢のある濃い青藍色をしています。前胸背部や上翅(鞘翅)には小さい点刻が沢山(密になっている)あります。この上翅の点刻が特長になっています。体色は光の関係もあるのですが、黒っぽく見える色の濃い個体から瑠璃色に見える個体がいます。神奈川県では3月初めには腹部の大きい雌と雄のペアをギシギシの葉の上で見つけることができます。コガタルリハムシは越冬後、すぐに繁殖行動に移ることができるようです。コガタルリハムシの生息地は局地的と言われています。卵は葉の裏に産卵します。コガタルリハムシは、大きな体で黄褐色に見えるパンパンに膨れ上がった腹部をしている雌と、上に乗っている雄のペアを見つけることができます。上にいる雄の方が体が小さいです。1匹の雌に2匹の雄が乗っかているものも見ることがあります。餌になる植物が限定されてくるので、タデ科のギシギシを探すと見つけることができますが、必ず見つかるという昆虫ではないようです。いないところではギシギシを見つけても見つけることができませんでした。越冬は成虫で土中で越冬します。コガタルリハムシは暑さが苦手で夏眠しますが、成虫はそのまま土中で冬眠にはいり翌春を迎えます。潜り込む深さは思ったよりも深く、3〜10センチ程潜り込むようです。コガタルリハムシは眼覚めが早く、3月初め頃からいち早く活動を始めるハムシです。コガタルリハムシの幼虫は黒い体色をしています。姿はテントウムシの幼虫と似ています。食草が限定されてくるので、名前が分かりやすい種類になります。
コガタルリハムシを見つけた場所には食草であるエゾノギシギシ(ヒロバギシギシ)、アレチギシギシ、ギシギシ、スイバの4種類がありました。エゾノギシギシは在来種のギシギシと交雑も可能で、交配雑種も多いようです。エゾノギシギシ(ヒロバギシギシ)は丸味のある葉で、葉の長さが40センチ、葉脈に赤い色が目立ちます。葉の主脈が赤くなる種類にはエゾノギシギシとアレチギシギシがあります。葉の幅が狭く長細く見えるアレチギシギシにいました。春先には在来種のギシギシで多く見ることができますが、観察地に多いエゾノギシギシに群がっていきます。スイバは株数も少なかったのですが、コガタルリハムシは付いていませんでした。やはりギシギシの仲間が大好物のようです。少し離れた場所(100m程)のエゾノギシギシ、アレチギシギシ、スイバの生えている場所では見つけることが難しいくらい少なかったです。他の観察エリアにしている近くの公園2か所のギシギシ、スイバでは見つけることができませんでした。コガタルリハムシが局地的な発生になると思われている事は、個人的にこのことからも察することができました。生息地は広げていくのでしょうが、爆発的に増えて食草があれば生息数を広げていくという感じでは無い様に思えます。ギシギシを食べるハムシには他にイタドリハムシがいますが、名前についているように、ギシギシよりもイタドリを好んで餌にします。タデ科の植物は、タデ食う虫も好き好きと言いますが、スイバ、ギシギシなどは、蓚酸を含んでいて酸っぱい植物です。食べられる野草として食すこともあるのですが、スイバ、ギシギシ等に含まれている蓚酸は取りすぎると体に良くないので注意して食べる山野草になっています。特にスイバは味が酸っぱいことから、他の動物、昆虫も好んで食べない植物になっています。とても良く似た種類にヨモギハムシ、ハンノキハムシがいますが、食草が違うので判別は簡単です。
コガタルリハムシです。刺激しないように撮影しました。静かに撮影していれば飛んで逃げ出すことはないのですが、葉の裏に隠れようとします。臆病な性格をしているハムシです。春先から5月までが数が多く見つけやすいです。昼行性で動きは緩慢なのですが、じっとしていないとピントを合わせにくくて苦労します。上2枚は雌です。腹部に卵を持っていて、鞘翅から黄褐色から橙褐色に見える腹部がはみ出ています。3枚目、雄のコガタルリハムシです。ややサイズが小さく見えます。4、5枚目、雄と雌です。雌の腹部が大きいため、雄は真上に乗るよりも落ちそうな格好で雌にしがみついています。5枚目は横から見た所です。2匹の雄が乗っかっています。卵が沢山入っていて、雌の腹部の大きさが良く分かります。下(6枚目)葉の裏に産み付けられたコガタルリハムシの卵です。産み付けられていたのはエゾノギシギシの葉です。卵は黄色くて長細い形をしていて、まとめて産み付けられています。手に触れると手にくっついて取れてしまいます。
コガタルリハムシの幼虫です。真っ黒い色をしたテントウムシの幼虫に似た体をしています。撮影地。神奈川県横浜市、こども自然公園。
最近、特に見かけるようになってきた要注意外来生物にもなっているエゾノギシギシ(ヒロバギシギシ)も調べてみました。
★エゾノギシギシ 別名ヒロバギシギシ。タデ科のヨーロッパ原産の多年草。要注意外来生物に指定されているだけあって、雑草として最強ランクに挙げられています。1909年に北海道で確認された外来植物。他種との交配も多く、繁殖力が強いです。茎は紅紫色で葉の中央脈は赤色や赤色を帯びていることが多く、下部の葉は大きく幅もあり、長さは15〜30センチ程にもなります。葉の基部は浅い心形で丸みがあります。耐寒性が強く、土質もあまり選びません分布は北海道、本州、四国、九州、沖縄。北海道、本州北部から南下して分布を広げてきました。北方系で沖縄には少ない種類になります。根生葉で越冬します。同じタデ科のギシギシやスイバは食べられる山野草として知られていますが、エゾノギシギシがどのような扱いになっているんか分かりません。当方の持っている食べられる山野草に関する本には、エゾノギシギシは名前が載っていないです。草丈は50〜130センチ程。株も成長して行くと、がっしりとしていて大きく見えます。花期は6〜9月。似た仲間と確実に区別する場合は種子を調べる必要が出てきます。
エゾノギシギシとナガバギシギシの春の姿。左側がエゾノギシギシ。1見して葉の幅が広くて大きいです。まだ立ち上がらない株でも大きく見えます。右側がナガバギシギシ。葉が長く葉の縁が波打っています。ナガバギシギシはヨーロッパ原産の外来種です。
エゾノギシギシはギシギシよりも普通に生えています。毒成分は含んでいないようですが、蓚酸やタンニンの含有量は多いようです。蓚酸を水でさらせば食可能と言うことでしょうか?しかし、ここでは野草を食べるために調べているのではないので、食べることはお勧めしません。間違って他の植物を食べたり、食べすぎたりして体調を壊しても当方は1切の責任は負いません。交配雑種も多く存在するので、不確かなものは食べない方が良いと思います。