2016年12月20日

オオワラジカイガラムシとルビーロウカイガラムシ(ルビーロウムシ、ルビーカイガラムシ)、イセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)。カイガラムシは変わった形をしている昆虫です。

ルビーロウカイガラムシ(ルビーロウムシ、ルビーカイガラムシ)、オオワラジカイガラムシ、イセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)は変わった姿をした昆虫です。単にカイガラムシというとカメムシ目のカイガラムシ上科の昆虫の総称になっています。カイガラムシは多くの樹種や草花の汁を餌として吸っている昆虫で、果樹や木の害虫として有名になっています。カイガラムシは雄と雌とでは別種のように見える、まるで姿が違う雌雄異形の昆虫で、雌に至っては頭も脚も退化しています。驚いてしまうことに、この奇妙な姿のカイガラムシも昆虫なのです。カイガラムシの仲間は種類が多く、とても昆虫とは思えない姿をしていることが特徴になっています。昆虫としての6本の脚は恐ろしく微小で、退化した脚がロウ物質に隠れて見えなくなっているうえ、体は寄生する植物体に密着しています。脚が6本なのが昆虫と思っていると、なんだこれ?と思わざるを得ない奇異な生物にしか見えません。カイガラムシの種類は多く、日本で発見されているものだけで400種類以上もいます。雌は成虫になると動かなくなるうえ、長期に寄生する植物に固着していることから目にする機会が多いものの、雄の姿を見る機会は少なく、ほとんどの人がカイガラムシの雄は見たことが無いと思います。カイガラムシは脚が退化して動けなくなる種類、1生動き回ることができる種類など様々です。動き回る種類にはイセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)、オオワラジカイガラムシがいます。固着して動き回れない種類は1齢幼虫では動くことができても2齢以降に脚が退化して動けなくなるものが多いようです。カイガラムシの仲間はヘンテコな姿をしている変わった昆虫になります。今回は、ルビーロウカイガラムシ(別名ルビーロウムシ、ルビーカイガラムシ)とオオワラジカイガラムシの変わった姿をした2種類のカイガラムシを調べてみました。イセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)も追加しました。
★ルビーロウカイガラムシ(別名はルビーロウムシ、ルビーカイガラムシ)カタカイガラムシ科。ルビーロウカイガラムシ(ルビーロウムシ、ルビーカイガラムシ)はインド原産で明治30年に侵入してきた外来種になります。日本では長崎県で発見されたのが最初だと言われています。背面のロウ状物質が赤い色をしている事が名前の由来になっています。確かにこのカイガラムシの色の赤い部分は宝石のルビーを思わせる色になっています。ルビー色(ルビー色〜あずき色)の体には白い線が入っています。1見昆虫に見えない姿は雌のカイガラムシになります。雌は頭と脚が退化してなくなってしまい、塊状になって寄生する植物に張り付いています。主に葉に付いています。脚がないので、当然、成虫になると動くことができません。これほど昆虫に見えない昆虫もいません。雌の成虫は半円形をしていて大きさは直径4〜5ミリ。雄は体長が1ミリ。雄は秋に成虫になり、雌と交尾します。雄には雌と違い翅が生えています。交尾後雄は死んでしまいます。雌はそのまま越冬に入り、翌初夏に腹部の下で産卵します。雌は産卵後には死んでしまいます。分布は本州(年間平均気温14度以下の地域)、四国、九州、沖縄。ルビーロウカイガラムシ(ルビーロウムシ、ルビーカイガラムシ)は大気汚染にも強いので、都市部の街路樹、公園、庭などでも見ることができます。寄生する樹種は多くミカンなどの柑橘類やチャ、カキ、ナシ、ゲッケイジュ、サザンカ、ヒサカキ、サカキ、マサキ、モチノキ、ソヨゴ等。過去ミカンの害虫として猛威を振るいました。発生は年1回の発生で雌は越冬するうえ雌は産卵後、死んだ後も植物に付いているので、その姿は年間見ることができます。ルビーロウカイガラムシは9〜10月に成虫になります。雄は交尾後に死亡しますが、雌はそのまま越冬します。産卵数は400〜1800個と多く1〜2齢幼虫は半透明で、3齢意向がルビー色になります。排泄物質が植物に付着して、その部位がスス病を起こすことが知られています。ルビーロウカイガラムシ(ルビーロウムシ、ルビーカイガラムシ)には天敵としてルビーアカヤドリコバチがいます。この寄生バチにより激減しています。
ルビーロウカイガラムシ雌・成虫1.JPGルビーロウカイガラムシ雌・成虫2.JPG
ルビーロウカイガラムシです。とても昆虫とは思えない形をしています。線のように見える白い縁取りが体表に見えています。上は黄の葉の表面に付いていました。下では木の枝に群生して発生しています。写りこんでいるアリと比較すると大きさが何となくわかると思います。
★オオワラジカイガラムシ ワタフキカイガラムシ科。日本原産の雌雄異形のカイガラムシで、体長は雄5ミリ。雌10〜15ミリ。腹部に気門があることから原始的なカイガラムシと言われています。楕円形の形をしていて、体環節の形状が草鞋(わらじ)に似て見えることが名前の由来になったようです。大きさは日本のカイガラムシの中では最大級で、日本最大のカイガラムシになります。オオワラジカイガラムシは他のカイガラムシと違い、脚をもっていて幼虫、成虫ともに歩いて移動することができます。雌雄の形は違っていて、草鞋に似て見える個体は雌になります。雌は幼虫期から成虫と変わらない似たような草鞋(わらじ)や小判型に見える容姿をしていて、雌には翅はありません。体には白い粉が付着しています。雄の成虫は2枚の黒い翅をもっています。後翅は帯化していてありません。体の色は赤褐色で、カイガラムシとは思えない、ガやハバチの仲間のように見える姿をしています。触角は大きく、脚と触角は黒い色をしています。雄の出現期は短いので姿を見ることが難しくなります。オオワラジカイガラムシの雄の幼虫は雌の幼虫、成虫と同じような姿形をしています。またオオワラジカイガラムシとワタフキカイガラムシ(イセリアカイガラムシ)の雄は非常によく似ているそうです。雌といる所を確認しないと判別は難しいようです。出現は4〜6月頃。年1回の発生(年1化)になります。分布は北海道、本州、四国、九州。都市部の公園などで見ることができます。発生する樹木はブナ科のクリ、アラカシ、スダジイ、ツブラジイ、マテバシイ、コナラ、クヌギ、アベマキなどに発生します。餌として寄生している樹木の枝や幹から木の汁を吸います。
天敵には肉食のベニヘリテントウがいて、オオワラジカイガラムシを餌にしています。ベニヘリテントウの幼虫はオオワラジカイガラムシの幼虫や雌の成虫に色も形もよく似ています。オオワラジカイガラムシに化けて近づいて捕らえて食べてしまいます。自分の体より大きなオオワラジカイガラムシの幼虫も襲ってしまいます。両種の幼虫の違いは、ベニヘリテントウは名前のように体の外縁は突起状で紅色をしています。紅色、赤系の縁取りがある体に見えます。体の作りは横から見ると高さもあり、扁平な形のオオワラジカイガラムシと雰囲気が違って見えます。
オオワラジカイガラムシはお尻から甘露を出してありに与えることで、外敵から身を守ってもらうそうです。この共生関係を持っているアリの種類はトビイロケアリになるそうです。トビイロケアリの雄は4〜5ミリ。雌は8〜9ミリで日本全土に生息する最も普通種のアリになります。
産卵は5〜6月。地面に降りた雌が卵を落ち葉の間や樹皮の割れ目などに産み付けるようです。産卵した後は雌は死んでしまいます。その後、初冬まで卵の状態で休眠しています。孵化は12〜1月の寒い時期に行われます。地表で孵化した幼虫は樹に登っていくそうです。そのことから越冬の形は変わっていて、初冬を迎えた卵は冬に孵化して、その後、孵化した若齢幼虫は集団で樹皮の下や窪みなどを探して幼虫越冬するようです。姿だけではなく変わった生活をしている昆虫です。
オオワラジカイガラムシ雌1.JPGオオワラジカイガラムシ雌2.JPG
上、オオワラジカイガラムシの雌です。コナラの樹幹にいました。写真、日本1大きいカイガラムシでワラジや小判の形に見えるヘンテコな虫です。実物を見ると大きさと個性的な変わった形に驚かれると思います。初めて見たときは「気持ち悪い奴だな」と思っていたのですが、この奇妙な昆虫の形は個性的すぎるためか、見慣れてくると可愛く見えて来るようになりました。雄の姿も見たくなりました。下、横から見ると扁平な体をしていることが良く分かります。名前に似合っている面白い体の形をしています。オオワラジカイガラムシの下に見える薄い緑色は、地衣類のコナチャシブゴケです。撮影できれば雄の写真も追加する予定です。撮影地。神奈川県横浜市、こども自然公園。
★イセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)ワタフキカイガラムシ科。外来種の帰化昆虫。明治40年代に苗木に付いて侵入したらしいです。原産はオーストラリア。体長は雌は4〜6ミリで、卵嚢を含んだ全長は10ミリほどで雌は楕円形で盛り上がった形に見えます。白く盛り上がった筋に見える部分が卵嚢で薄い橙色や赤、明るい褐色に見える部分が虫体(体)になります。雄は3ミリ前後で翅がある雌雄異形。雄はオオワラジカイガラムシの雄に非常に良く似ています。イセリアカイガラムシは雄の発生は少なく単為生殖します。分布は本州(関東以南)、四国、九州、沖縄。年2〜3回発生します。柑橘類を好むカイガラムシ。柑橘類の他、多くの樹種に発生します。口吻(口針)を使って葉、枝、樹幹などから植物の汁を吸います。越冬は幼虫と成虫で越冬します。1齢〜雌成虫まで歩いて移動できる卵胎生のカイガラムシですが、雌の成虫になるとほとんど動くことはありません。縞状に並んで見える白い部分(卵嚢)は蝋物質になります。この中には薄い朱色の長細い楕円形の卵がいっぱい詰まっています。やがてこの中で孵化したアブラムシに似ている歩行可能な若齢幼虫が外界に出ていきます。イセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)は卵胎生で卵の数は200〜600個ほどと思われています。温暖な地域などでは発生が通年になりますが、おおよそ第1世代は5〜6月、第2世代は7〜8月、第3世代は10〜11月頃に発生します。越冬世代は4〜5月に卵嚢がある成体になります。群生していることが多く、木の枝いっぱいにイセリアカイガラムシが繁殖してしまう訳です。卵膿から小さい1齢幼虫が外に出ていくと雌の成虫は死んでしまいます。イセリアカイガラムシは餌として寄生した木の汁を吸って育っていきますが、余分な養分を体の外に出します。この液体は甘露と呼ばれ、アリが甘露を吸いにやってきます。
天敵にはイセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)を食べるペダリアテントウがいます。赤い地に黒い黒斑があるテントウムシです。ペダリアテントウはイセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)の駆除のためオーストラリアから持ち込まれた外来種のテントウムシになります。体長は4ミリ程で日本に帰化種として定着しています。ペダリアテントウの分布は本州、四国、九州、沖縄。幼虫、成虫ともにイセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)だけを捕食するそうで、1生のうちに餌とする数は200匹になるそうです。
イセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ).JPG
上はミモザの枝にいたイセリアカイガラムシ(ワタフキカイガラムシ)。昆虫とは思えない形をしています。繁殖力、適応力が強く、群れで発生していることが多いです。よく見ると体には白くて長い毛が生えています。群生している写真も撮れましたら追加する予定です。
カイガラムシの雑学です。食品の着色にもカイガラムシが利用されています。
カイガラムシというと悪いイメージが有るかも知れませんが、お菓子や食品の着色、口紅などの赤色の着色料として使われているコチニールとはコチニールカイガラムシ(エンジムシ)を原料にして作られています。中南米に生息するコチニールカイガラムシ(エンジムシ)から取れるコチニール色素は天然のものであるため、安全な着色料と言われています。人体に与える詳しい影響は研究されていませんが、かなり多くの種類の食品の着色につかわれていますので、とりあえず大丈夫なようです。最近では安全性も実証されてきているようです。コチニールによるアレルギーが以前問題になったことがありますが、コチニール色素ではアレルギーは起こしません。これはコチニールカイガラムシのタンパク質が混入したためと分かりました。コチニールの主成分はカルミン酸になります。コチニール色素の別名はコチニールエキス、カーマイン、カルミン酸色素、天然紅4号と呼ばれています。コチニールカイガラムシ(エンジムシ)はサボテンに寄生します。養殖にはウチワサボテン属を使います。寄生するサボテンの種類は決まっていて、オプンティア・コクシニフェラ、オプンティア・ツナという2種類になるそうです。色素として使うのは雌のコチニールカイガラムシ(エンジムシ)になります。雌は植物体に張り付いてしまい移動ができなくなるタイプのカイガラムシになります。色素として使っているのですが、食品に昆虫が使われていることになる訳です。知らないと驚いてしまう人もいるかと思います。産地としてはペルーが99%を産しています。他の産地にはエクアドル、メキシコ、チリがあります。カイガラムシは生活の中で役に立っている昆虫だったのです。
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2016年12月08日

ハナアブ(オオハナアブ、ベッコウハナアブ)とハナバチの仲間のキムネクマバチ(クマバチ)、トラマルハナバチは良く似た花に集まる昆虫です。アブとハチの違いも調べてみました。

オオハナアブ、ベッコウハナアブはクマバチ(キムネクマバチ)やトラマルハナバチなどのハチの仲間に良く似ていることから、ハチと間違われていることが多いようです。ハナアブの仲間は自分より強いハチの容姿を真似ることで身を守る擬態をしています。実際に良くハチと間違われているようで擬態(ベーツ型擬態)の成果は十分に発揮されていると言えます。どちらの種類も普通は近くで見ることが無いので、同じに見えても可笑しくありません。似たようなおとなしい種類のハチでも刺されたら大変です。大まかでもハナアブとハチの違い(両種の違い)は知っておいて損はありません。黄色と黒の配色をしていることから、ミツバチ科のハチやハナアブの仲間は同じように見えてしまいます。オオハナアブ、ベッコウハナアブ、クマバチ(キムネクマバチ、クマンバチ)、トラマルハナバチを調べてみました。(トラマルハナバチを追加しました)
オオハナアブ、ベッコウハナアブはハナアブ科の昆虫なので、姿がハチに似ていても人を刺すことはありません。ハナアブの擬態は、弱い昆虫が毒などを持っている強い昆虫に姿を似せて身を守るベーツ型擬態と呼ばれる方法になります。自分より強い昆虫に成りすまして外敵から身を守っているのです。ずんぐりとした体つきや色合いの感じはコシブトハナバチ科の大型のハナバチであるクマバチ類やミツバチ科のトラマルハナバチにも似ています。容姿はトラマルハナバチの方がベッコウハナアブ に似て見えます。トラマルハナバチは攻撃性が強く、マルハナバチ科の中では気が粗く人を刺すので注意が必要になります。巣を破壊したり、捕まえようとしなければそう簡単に攻撃されることはありません。存在感のある大型で、恐怖を感じる音量のあるブンブンという羽音を出すクマバチ(キムネクマバチ)は容姿と羽音に似合わず攻撃性の弱い大人しい性格をしています。太くて体の大きいキムネクマバチは近くで見れば体つきから1般的なハナアブとは違って見えます。キムネクマバチの雄は毒針を持っていないので人を刺しません。刺すのは雌のクマバチになります。クマバチは気性が大人しいので、めったに刺すことはないようですが、いくら大人しい種類と言ってもハチなので、手で捕まえたりしようとは思わない方が良いです。危害を感じると攻撃されてしまいます。キムネクマバチは別名クマンバチ、クマバチとも呼ばれています。またクマバチと呼ぶ場合は総称的な名前(呼び名)になっていることも多いです。キムネクマバチは普通種で見かけることも多く、黒色と黄色の2色の配色をした体に太くてずんぐりとした体形はとても可愛く見えます。重量のある体に対して翅が小さいことも外見上の特徴になります。
・アブとハチの違いをいくつか挙げてみました。
ハチに似ているハナアブの仲間とミツバチ科のハチの簡単な区別としていくつかの違いを挙げることができます。最も分かりやすい見分け方の1つは、胸背部などに目立つ毛が生えているかどうかを確認すると分かりやすいです。ハナアブは短毛は生えているものの、つるりとしていてツヤのある体に見えます。クマバチやマルハナバチなどの花に集まるミツバチの仲間は、体に毛が密生しています。クマバチやトラマルハナバチは「ブンブン」と、とても大きな羽音を立ててやってきます。オオハナアブ、ベッコウハナアブも大きな羽音を出しますが、クマバチ(キムネクマバチ)の出す大きな音とは若干聞こえ方が違います。クマバチ系は重低音というところですかね。この違いは経験するしかありません。小型種が多いハナアブの仲間は花に飛来するときはどちらかというと静かによってきます。顔はハナアブの触角は短く、大きな目(複眼)をしています。つまりハエ目だけにハエのような顔をしていることになります。クマバチなどは体も大きいのでよく見ると違いを見つけることができます。体の構造的な大きな違いは翅の数になります。翅の数の違いは、アブは翅が2枚。ハチの翅は4枚になります。飛び方としてハチがトンボのように翅をヒラヒラとさせて飛ばないのは、前翅と後翅を1つに連結して、1枚の翅のようにして動かして飛んでいることによります。ハチはとまると翅を重ねてしまうので、1見翅の数は2枚に見えてしまうことから、ハチの翅の数を2枚だと思っている人も多いと思います。ハチというと何といっても刺されてしまう危害を受ける可能性のある危険な昆虫であることです。ハチでも雄のハチは刺しません。刺さない種類のハチ、大人しい種類のハチもいるのですが、毒針を持たないアブは人を刺すことはありません。
★ オオハナアブ ハナアブ科。体長14〜16ミリ。普通種で数も多い種類で、体色は黒色で横幅のある大きなハナアブです。はっきりと色が分かれていて、地味な配色ながら綺麗に見えます。名前にオオと付いていますが、ハナアブとしては大型になるのですが、1番大きいい種類ということではありません。大型なハナアブだけに羽音が聞こえます。飛んでいる時ですと、音では他のミツバチなどハチ類と間違えてしまいます。オオハナアブの体の特徴は、黒を基調とした地色に腹部には幅の広い黄橙色の横帯があることです。触角は非常に短いです。雌雄の違いは目の間隔で判別できます。目の間隔が広い方が雌で、雄は眼の間隔が狭く接近しています。この特徴はハエやアブに共通したものになっています。分布は北海道、本州、四国、九州、沖縄。林縁、畑地、公園、水田、湿地などに生息しています。幼虫が水生のため、湿地や沼地のある場所に多く生息しています。出現は4〜11月。オオハナアブの成虫の餌は様々な花に訪れて、花の蜜や花粉を食べます。昼行性で虫媒花の昆虫として 色々な花に飛来します。幼虫はオナガウジとよばれていて、水生で餌は水中の腐食物を食べます。幼虫はよどんだ汚水を好みます。越冬は成虫で単独で落ち葉の下などに潜り越冬します。ハチではないので刺されることはありません。
オオハナアブ雌1.JPGオオハナアブ雌2.JPG
上2枚。同じオオハナアブの雌です。目の間隔が広くなっています。良い匂いに誘われてシシウドの花の蜜を吸いに来ました。カメラを気にしないで食事を楽しんでいました。
★ ベッコウハナアブ  ハナアブ科。体長17〜20ミリと大型のハナアブになります。ベッコウハナアブに似た昆虫にはミツバチ科のトラマルハナバチがいます。黄橙色の体に黄橙色の短毛(微毛)が生えています。胸背部の明るい黄橙色が良く目立ちます。雌雄の違いは目の間隔で判別します。目の間隔が広い(離れている)方が雌になります。雄の場合、眼の間隔がとても狭く接近し見えます。この特徴はハエやアブの仲間の特徴になっています。分布は北海道、本州、四国、九州。雑木林の林内、林縁に多く生息します。出現は4〜9月。幼虫は土中のスズメバチの巣に依存して育つという変わった習性を持っています。凶暴なスズメバチに攻撃されないで巣に産卵するとは、驚くべき生態をしているハナアブになります。まずベッコウハナアブはスズメバチの巣の外被に産卵します。スズメバチの巣の下部は餌の食べ残しや幼虫の死骸などの捨て場になっていて、ベッコウハナアブ の幼虫は初めは、このゴミ捨て場に捨てられた幼虫の死骸や蛹を餌にして育っていきます。ベッコウハナアブ の幼虫は肉食性で、餌としてスズメバチの幼虫の食べ残し、幼虫の死骸等を食べるのです。やがて餌(幼虫の死骸等)が不足する時期になると巣の中に侵入して幼虫を食べてしまうようです。毒針を持たないベッコウハナアブが凶暴なスズメバチの巣を餌場として育つとは驚きです。立派なスズメバチの天敵になっているのです。ベッコウハナアブの容姿はマルハナバチ(マルハナバチ科の総称)に似ています。鮮やかな橙黄色を基調とした体に、翅の中央に黒い色の帯があります。腹部は黒色部が多いです。大きくて1見怖そうですが、ハチではないので刺されることはありません。
ベッコウハナハナアブ.JPG
ベッコウハナアブです。綺麗な体の色をしています。ハルジオンの花に飛んできました。なかなか縁がなく、見ることが少ない種類になっています。
★キムネクマバチ 別名クマバチ、クマンバチ。コシブトハナバチ科で単独性の大形のハナバチです。キムネクマバチは日本固有種になります。体長は21〜24ミリとハナバチの仲間では大型になります。雌雄の区別は顔で判別できます。顔の正面から見ると複眼の下の部分に淡黄色の3角(3角紋)が見える方が雄で、雌の顔には3角紋はなく黒く見えます。雄は繁殖期に入ると雌を探す行動として、ホバリングして空中に浮いて見えます。この飛び方をするのは雄のキムネクマバチになります。キムネクマバチの身体的な特徴は、全身が黒く大型で太さがあり、胸部に黄色い粗い毛が密生していることです。クマバチと呼ぶ場合は総称的な呼び名になります。本州に多く見られるクマバチはキムネクマバチになります。キムネクマバチは大型のクマバチで大きな羽音をブンブン立てて花に良く集まってきます。重量のある大きな体に対して翅が小さく理論上は飛べないとされていて、どのような仕組みで飛ぶことができるのか謎でした(最近、解明されたようです)成虫の寿命は約1年になるようです。成虫は盛んに花の蜜や花粉を集めます。植物がクマバチに受粉を助けて貰う受粉の方法はクマバチ媒花と呼ばれていて、力の強いクマバチにより、受粉できる仕組みになっています。クマバチ媒花を行う植物にはフジが有名です。花の根元に穴を開けて蜜だけを吸う、花の受粉に関与しない盗蜜という行動もします。クマバチの名前に付いている「クマ」はクマのように「大きい」や「強い」という意味を含んでいるそうです。見た目も飛んでいる時の迫力のある羽音もすごいですから、名前負けはしていませんね。ずんぐりとした体も見ようによっては愛嬌があって可愛いです。花粉や蜜を餌にしているクマバチの仲間は大きくて怖がられるのですが、ミツバチの巣を襲うスズメバチと違い、気性は温厚な大型のハナバチになります。羽音の迫力にはかなりの凄みを感じてしまいます。凶暴なハチと間違われても仕方がない所です。
分布は北海道、本州、四国、九州。キムネクマバチは平地から山地、林縁や里山、公園、人家付近でも目にすることができる数の多い普通種になります。出現は4〜11月。年1化。フジ、キリ、ツツジ、ウツギ、ニセアカシア、サクラ、キンセンカ、サルビア、キバナコスモスなど様々な花に集まり蜜や花粉を集めます。キムネクマバチは単独生活をするハチなので、巣も大きなものは作りません。枯れ木や枯れた竹筒などに穴を開けて巣を作ります。竹筒に巣を作る場合は卵を1つ産卵するごとに仕切りを作って4〜6個ほどの幼虫の育つ部屋を作っていきます。この作り方は枯れ木などの材に作るときも同じになります。枯れ木に巣を作る場合、硬い枯れ木よりも柔らかめの枯れ木を好むようですが、特に樹種は選びません。巣を作る材の太さは巣ができる適度の太さがあれば問題ないようで枯れ枝にも作ります。巣は材に穴を掘って作られます。巣の出入り口は小さく、綺麗な丸い出入り口があるだけです。巣穴の径は1・5〜2センチほどになります。巣材として人家の柱、丸太、公園の樹の杭なども使われます。太い丸太のような材には幾つかの巣が作られているものもあるようです。部屋には花蜜と花粉を団子状にした餌が入っています。越冬は成虫で越冬します。繁殖期には雄が雌を求める習性から、大きな羽音を立てて近づいてくることがありますが、雄は針がないので刺されることはありません。雌も飛んできて刺すようなことはしません。慌てないで離れれば大丈夫です。クマバチはスズメバチのような強毒を持っていませんが、いくら毒性が弱いと言っても体が大きいので、刺されるとかなり痛いようです。腫れが数日続くようです。怖いのはハチに刺されて起こるアナフィラキシーショックです。ハチ毒にアレルギーのある人が2度目に刺されるとショック症状を引き起こしてしまいます。早いと刺されて10分後くらいから症状が出てくるようです。刺されてから30分以内に手当てが必要なほど危険な場合があります。救急車を呼んで対処することが必要になると思います。安全のため大人しい種類とは言え、捕まえようとしたりしてはいけません。キムネクマバチの羽音は危険を感じてしまうほど大きく、近寄ってくると驚かされることがあります。
クマバチ(キムネクマバチ)5・22B9.JPGクマバチ2.JPGキムネクマバチ雄2.JPG
キムネクマバチです。雄と雌の区別は顔を見ると分かります。雌の顔は黒く、雄の額には3角形をした黄白色の紋があります。雌雄共に体型はかなりガッチリとしています。太くてものすごい迫力があります。上、雌のキムネクマバチです。やたらと大きかったので女王蜂に間違いないでしょう。撮影は5月。中、下。キムネクマバチの雄。紫のサルビアの花に来たキムネクマバチ。羽音が迫力満点ですごかったです。顔に白い3角紋があるので雄のキムネクマバチです。胸が黄色で地色が黒という配色と、ずんぐりとした大きな体なので覚えやすい種類になります。攻撃性の少ない大人しい性格のハチなので近くで観察することができました。腹部をよく見ると白い短毛が横縞になっていることが分かりました。シャッターチャンスを窺うも、とにかくせわしなく花から花に移動してしまうので撮影には苦労しました。凶暴に見えるハチですが攻撃性の弱い大人しい性格をしています。
★トラマルハナバチ ミツバチ科。体長は雄16〜19ミリ。女王蜂20〜26ミリ。働き蜂10〜18ミリ。最も普通に見られる普通種で数も多いのですが、近年数を減らしてきている種類になるようです。トラマルハナバチの特徴は、マルハナバチの中で1番長い口吻を持っていて、全身にフワフワした黄褐色(黄色〜茶色を帯びたオレンジ色)の毛が生えていることです。腹部は黄褐色と黒い縞模様に見えます。尾部先端部は黒い毛になっています。蜜を吸うために花に潜り込んだ時に、全身の毛に花の花粉が付くことで、花は授粉しやすくなります。そのため優れた花粉の花粉媒介者となっています。攻撃性の弱いマルハナバチ類の中では、トラマルハナバチは1番攻撃性が強いようです。巣を守るために攻撃性は強くなるようなので、花に訪れている時は変に刺激しなければめったに刺されることはありません。出現は4〜11月と活動期が長く、越冬は巣の中で雌(女王蜂)が越冬します。分布は本州、四国、九州。平地から低山地の各種樹林と林縁に多く生息しています。人家付近よりは林縁などに多い種類になります。成虫は盛んに花から花に飛び回って蜜を集めます。訪れる花の種類は多く、様々な花の花粉や蜜を餌にします。後脚に幼虫の餌となる花ダンゴを付けて巣に運びます。幼虫の餌は花粉(花ダンゴ)と蜜を食べます。巣は地下にできた空所を利用して作られます。ネズミやモグラの廃巣を利用して巣を作ることが知られています。地下の空間を利用して巣を作るため、モグラやノネズミがいなくなると巣を作ることが難しくなることが予測できるので、今後は数を減らしていく種類になってくるのでしょう。越冬は女王蜂(雌)だけが地中に潜り越冬します。
トラマルハナバチ(追加)1.JPGトラマルハナバチ(追加)2.JPG
トラマルハナバチです。巣を作っている最中のトラマルハナバチを見つけて撮影しました。ノネズミの坑道を利用して巣を作ろうとしていました。地面をごそごそと探っていた個体です。腹部は黒と黄褐色(オレンジ色)の縞模様に見えます。黒く見える部分は黒い毛が生えています。下、こちらの個体もごそごそと地面で何かしていました。どちらもカメラを20センチほどに近づけての接写です。巣を作っている場合は攻撃されることもあるので、注意が必要です。胸背は毛足の長い黄褐色の柔らかそうな毛で覆われています。撮影地。神奈川県横浜市、こども自然公園。トラマルハナバチは全国的に減少しているようです。
posted by クラマ at 16:32| Comment(3) | 昆虫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする