2015年09月28日

ゼニゴケ。最も嫌われるコケの代表になっています。

ゼニゴケは繁殖力が強く庭の景観を損ねるため、嫌われ者のコケの代表になっています。どこでも地面がむきだしになっていて、湿り気があればはびこってきますので、コケの中では有名な種類になり、見たことのない人は少ないと思います。日本式の庭園などでは苔は立派な演出の材料となるのですが、このゼニゴケに至っては美観を損ねてしまいます。1般の民家でもゼニゴケ退治には手を焼いているという話を良く聞きます。1度繁殖してしまうと根絶は大変難しくなってしまいます。ゼニゴケは有性生殖と無性生殖の両方の生殖方法で繁殖することができて、寒さにも強く、除草剤などの薬品でも根絶することはできない位に丈夫です。苔には大きく分けて、葉と茎の区別のできるものと葉のような形をした葉状体で地面に張り付いているタイプがあります。最も普通に見ることができるゼニゴケは、葉のような形をした葉状体のコケ植物の代表格になります。苔は普通の植物のような根を持っていません。仮根という小さな根のようなもので石や岩、木や地面に張り付いて体を支えています。苔も光合成をしているので、地面に這える種類の苔では、落ち葉が堆積しているような場所では生きていけません。冬の寒さや乾燥には強いのですが、高温多湿には弱いので、夏が苦手な生き物になります。苔(コケ)というと苔植物の総称になっていて、地衣類、藻類、シダ植物の1部も苔植物に含まれています。ゼニゴケは庭の1面に大きな群生を作ることも、湿り気のある露出した地面があれば、道端や石垣などの隙間や、狭いわずかな空間でも繁殖することができる丈夫さと繁殖力を持っています。好かれることの少ないこのゼニゴケは、どこにでもある普通種のコケなのですが、よく見て見ると面白い観察対象になります。寒さにも強く年間を通して見ることができるゼニゴケを調べてみました。
★ゼニゴケ ゼニゴケ科ゼニゴケ属。大変よく似た種類も多いのでゼニゴケ科の全体の総称としても使われています。分布は北海道、本州、四国、九州。人家付近に多く発生しています。特に北側の日陰の湿った環境では多く発生しています。湿気のある地表なら建物の陰、庭、公園、道端などどこにでも生えてきます。湿った石垣、土手などでも見ることができます。ほぼ1年中見ることができる種類で探す手間がない位に普通に繁殖しています。形は茎と葉の区別がない平べったい構造をした葉状で長さは3〜10センチ。色は濃緑色〜淡緑色になります。裏面からは仮根を出してしっかりと張り付いています。雌雄異株。生殖方法は有性生殖と無性生殖の両方を行います。やや湿った場所が好きで群生していることが多いです。葉状体の表面には点々が見えます。これは気室孔と呼ばれ呼吸などの際のガス交換をする器官になります。雄株からは皿形(円盤形)の柄を出します。これは雄器床と呼ばれます。雌株からは切れ込みの深い傘のような形の雌器床が作られます。別名ヤブレガサとも呼ばれている柄を出します。ヤブレガサの方が名前が通っていますね。生殖方法は環境条件が良い場合には有性生殖、環境が悪い場合では無性生殖が行われます。無性生殖では円型の杯状体(無性芽器)を葉の表面に作り、この器官で無性芽という自分と同じ個体のクローンを作り放出して増えていきます。有性生殖の場合の生殖方には雨水が利用されます。当然受精するために雨の日に受精行動は行われます。雄の株からできる精子には2本の鞭毛があり、これを使って水中を泳いで水没している雌のヤブレガサにある造卵器に到達することで受精が行われます。精子の移動距離は数センチ(10センチ以下)で寿命は6時間ほどのようです。受精は1つの卵に1つの精子が受精します。受精の確立は低いようです。雌のヤブレガサ(柄)は伸び上がっている長いものを目にしますが、受精が行われるときには地面に近い所にあります。低い位置で受精は行われているのです。決して精子が柄をよじ登っていくようなことはありません。受精時には雄の器官も雌の器官も地面近くにあって、雨水によりどちらも水没している条件で行われます。雌のヤブレガサの柄は2〜3センチほどあり受精するしないに関係なく伸び上がっていきます。それで雄株の皿形(円盤型)の柄が無いように見えるのです。これは受精後に黄色い色の胞子嚢をヤブレガサに作りますが、今度は胞子を飛ばすために高い位置を確保するための仕組みです。黄色い色の胞子嚢がついていないものがあれば、受精できなかったヤブレガサということができます。ゼニゴケは初夏と初冬の年2回胞子を飛ばします。雌株のヤブレガサの柄は伸び上がってくるので群生しているゼニゴケの1面にギッシリと発生している所を見ることができます。ヤブレガサは雄株にできるものを雄器床、雌株にできるものを雌器床と呼んでいます。同じゼニゴケでも、伸び上がった雄器床や雌器床を作る株と、無性生殖を行っている扁平なままの株のゼニゴケでは、この特徴を知らない場合だと、本当に同じコケなのかな?と疑ってしまうかも知れませんね。
ゼニゴケ.jpgゼニゴケ・ヤブレガサ.jpgゼニゴケ雌器床.jpg
1枚目、ゼニゴケの体と杯状体。コンクリート製の塀の隙間に発生していました。環境が悪いので無性生殖が行われています。2枚目、伸び上がったヤブレガサ(雌株の器官)です。雄の器官は雄器床と呼ばれます。雄器床ができているのでこの株は雄株になります。こうしてみると可愛い形をしています。建物の前の日陰にあるコンクリートブロックの間から発生していました。3枚目、雌器床です。広がった傘の形をしています。雌器床ができているので、この株が雌株だと分かります。
ゼニゴケ無性芽器1.jpgゼニゴケ無性芽器2.jpg
ゼニゴケの杯状体。上、杯状体の中には無性器で作られた無性芽が中に入っています。小さくても自分と同じ体のクローンです。杯状体の色が違っているもので面白いです。下の写真ですと中に入っている無性芽が飛び出てきている様子が見てとれます。また緑の葉の上に見える白いツブツブが気室孔になります。この孔は開きっぱなしの構造になっています。よく見ると杯状体はサボテンの花のようにも見えますね。無性生殖は環境の悪い場所で行われます。ゆえにゼニゴケの有性生殖は雨を利用して水を介して行われるので、日当たりの良い乾燥しやすい場所に生えているゼニゴケに多くみられるといえるでしょう。観察してみると嫌われ者のゼニゴケも面白いです。
posted by クラマ at 14:16| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月26日

マヤラン。絶滅危惧種の野生のランです。

地面から綺麗なランの花が咲いている。この植物は何だろうと見つけた人は驚かれるかもしれません。野生のラン、マヤランです。マヤランは多くの県で絶滅が危惧されている珍しい野生のランです。ラン科シュンラン属に分類されています。発生は局地的で発生する個体も少ない珍しい植物になります。このマヤランは葉を持っていませんので光合成をすることができなません。葉緑素を持たない植物になるため、菌類と共生して育つことを選んだ菌従属栄養植物になります。発生する場所は常緑広葉樹林や古い2次林の林床になります。マヤランと共生する菌類はベニタケ科、イボタケ科、シロキクラゲ科になるようです。この3種の菌は特定の木と共生している菌(キノコ)なので、これらの菌と共生するマヤランは数が少なくなる訳です。発生している所を見るとほとんどが数本程度が集まって生育していることが多いようです。マヤランが生息するうえでマヤランと共生する菌類、その菌類が共生する木がそろって初めて生育可能となる訳です。今回見つけたマヤランはこの株を見つけた同じ公園では4年ぶりになります。以前の発生場所からは消えてしまいました。自然消滅か乱獲されたのかは分かりません。知らないで、単に綺麗な花だからと摘み取られてしまったのかも知れません。多くの山野に自生する植物はたとえ土を1緒に持ち帰ってみたところで、たいがいは育つことができなくなります。自然の中でその姿を楽しみたいものです。マヤランを調べてみました。
★マヤラン ラン科シュンラン属の多年草。神戸市の摩耶山で見つかったのでマヤランと名前が付いたようです。葉緑素を持たないで菌類と共生して育つ菌従属栄養植物(腐生植物)になります。共生する菌はベニタケ科、イボタケ科、シロキクラゲ科の菌になるようです。菌自体も特定の木と共生するため分布域は広いのですが発生は局地的に限られてしまうようです。分布は本州の栃木県以西、四国、九州、沖縄。栃木県周辺の茨城県、福島県でも見つかっているので北限はこの辺りになるようです。高さは10〜30センチ。葉は無く花を2〜3個つけています。花期は7〜9月頃で花は白く紅紫色を帯びています。ラン科なので花屋で見かけるランの花によく似ています。
マヤラン1.jpgマヤラン2.jpgマヤラン蕾.jpg
マヤランです。可憐な花を咲かせていました。わずかな範囲に数株が発生していました。1枚目、横から見たところです。2枚目、小さくても立派なランの花です。1番下、蕾になります。撮影場所は神奈川県横浜市こども自然公園。神奈川県でも絶滅危惧種に指定されています。持ち帰って植えたところで根はつきません。マヤランを見つけることができても目で楽しむだけにしましょう。以前に見つけた場所からは消えてしまったので、この場所では無事に生育してもらいたいです。消えたしまった原因は分かりません。この場所の共生菌はベニタケ科の菌を2種確認しているので、ベニタケ科の菌と共生関係を持っているものと思われます。マヤランの花はシュンラン属なのでシュンランの花とよく似ています。この公園ではシュンランは見たことがありません。シュンランもかなりの年月見ていない植物になってしまいました。
posted by クラマ at 13:42| Comment(0) | 自然観察・植物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年09月25日

ヒメジョウゴゴケ。小さなラッパ型の柄を伸ばす地衣類です。

ヒメジョウゴゴケは名前にコケとついているものの、コケの仲間ではなく地衣類(ライケン)になります。変わった形の物が多い地衣類の中では、形がコケや植物に1番似ている種類だと思います。ヒメジョウゴゴケは石の表面や石垣、コケの生えた地上に生えています。道路脇の石垣や人家の周りなどでも見られる、普通に見られる普通種になります。道路の脇の石垣などでも見ることができることから、大気汚染には強いようです。日の当たる石の表面からも発生しているので、乾燥にも強いようです。ジョウゴゴケとジョウゴとなついているように子柄がラッパ型(漏斗状)をしていることが特徴になります。発生時はコケというよりは、何か別の草花にも見えます。小さいのですが、よく見るとラッパのような形をした子柄がとても可愛いです。似た種類が多くあるようで、細かい判別となると難しいようでが、独特の子柄の形から、ジョウゴゴケの仲間であることは予想をすることができます。ヒメジョウゴゴケはハナゴケ科になります。小さいのでその存在に気が付いてもらえないため、普通に見ることができる種類なのですが、知られていない存在になっています。盆栽の愛好家の間では鉢植えにも使うことがあるらしく、意外にも知られた存在になっているようです。垂直になった石の表面や割目、苔の生えた地上にひっそりと生育しています。ヒメジョウゴゴケを調べてみました。
★ヒメジョウゴゴケ ハナゴケ科の子嚢地衣類。分布は本州、四国、九州。普通に見ることができる普通種になります。平地から低山地の地上、岩上に生育しています。人家付近の日当たりのよい石垣や交通量の多くない道路脇の石垣などでも見ることができる普通種になります。地衣体は鱗片状で長さ1〜5ミリで幅は1〜2ミリの円形に近い形をしています。縁は丸みのある鋸歯状になっています。ラッパのような形(漏斗型)の子柄は単体で直立します。高さは0・5〜20ミリ。直径2〜6ミリのラッパのように見える盃形をしています。その基部は幅がせまくつぼまっていて基部の直径は1ミリ程です。子器は盃縁に付きレキデア型になります。
ヒメジョウゴゴケ1.jpgヒメジョウゴゴケ2.jpg
ヒメジョウゴゴケです。この2枚はすぐ近くに生えていたものです。上、岩の上から発生しています。下はコケの上に生えていたものです。ラッパ状のものが石から生えたように見えます。全く地衣類には不思議なものが多いです。
ヒメジョウゴゴケ3.jpgヒメジョウゴゴケ4.jpg
別の場所で撮影したものです。上の写真の個体群とは色合いが少し違って見えます。この2枚の写真のヒメジョウゴゴケは岩上から発生していました。
ヒメジョウゴゴケ5.jpg
発生の初期の段階のものです。この状態からラッパのような形の子柄を伸ばしていきます。これから葉体も広がっていきます。この状態を見るとコケのようにも見えるし、形が他の植物のようにも見えます。これは道路沿いの民家の石垣の石の表面から発生していました。この写真はまた別の場所で撮影したものです。
不明のハナゴケ科.jpg
上は名前が分からない不明種です。細長い漏斗状の子柄がやたらと長く立ち上がっています。石の表面に生えていました。ハナゴケ科の仲間ではあると思います。
小さくて目立たないヒメジョウゴゴケもこのように拡大して見ると不思議で面白い形をしていることが分ります。地衣類は面白いです。
posted by クラマ at 22:42| Comment(0) | 地衣類 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする